All Chapters of 元夫の初恋の人が帰国した日、私は彼の兄嫁になった: Chapter 661 - Chapter 670

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第661話

「そんなの簡単よ。直接本人に聞いてみればいいじゃない」月子は頷いた。「うん、今夜、彼に話してみよう」「なんだかラブラブね」彩乃は月子の元気そうな様子を見て言った。「離婚してからあなたはすっかり元気になったし、鷹司社長というパートナもできて、もう最高じゃない」月子は笑った。「あなたも恋人が欲しくなった?」「まあね、最近は仕事のストレスがひどいから、家に帰ったとき、素直で若い大学生でもいたら癒されるかも。ちょっと探してみようかな」「さすがね」と月子は言った。「お互い様でしょ」と彩乃は言った。「それに、忍にも現実を分からせて、いい加減しつこくしないでほしいしね」「うん、いい方法かもね」月子は忍と仲がいいので、彼が彩乃と結ばれるなら、もちろん大賛成だ。でも、それは彩乃自身が望んでいるなら応援できることであって、でなければ、いくら忍が袖の下を贈ったとしても、月子が彼の肩を持つことはないのだ。帰るころ、月子と彩乃は、それほど飲んではいなかったけど、さすがに車は運転できなかった。月子は運転代行を呼んで、まず彩乃を家まで送ることにした。「どうして鷹司社長に迎えに来てもらわないの?」月子は顔色を変えた。「彼、私が飲んでるってバレちゃう。どうしよう、ヤバい」「彼って結構、束縛するタイプ?」彩乃は面白そうにからかってから、笑って続けた。「でも、いいじゃない。付き合ってみて初めて分かったけど、鷹司社長ってあんなに面倒見がいいのね。ギャップがすごい」月子も、まったくその通りだと思った。プライベートでの彼は、本当に予想外のことなほど優しくて暖かいのだ。彩乃は彼女に顔を近づけて匂いを嗅いだ。「まだお酒の匂いがするわよ。うちに寄って、シャワーでも浴びていく?」月子は襟元を引いて匂いを嗅いでみた。確かにお酒の匂いがぷんぷんする。これでは隼人には絶対にバレてしまう。彼女は彩乃の家でシャワーを浴びて、服も着替えることにした。親友の家には、月子専用の部屋があった。生活用品はもちろん、着替えの服まで、何でも揃っている。彼女はシャワーを浴びてさっぱりしてから、代行運転で家まで送ってもらった。これなら、家に着いてからもう一度お風呂に入る必要もない。でも、家に着くと、隼人の姿はなかった。もう帰ってるって、言ってたはずなのに。月
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第662話

月子はシャチが写った写真を手にとって、裏に書かれた日付と場所を読み上げた。「どうしてこんなにたくさん撮ったの?」隼人は月子の服を一瞥し、彼女のそばに歩み寄った。そして自分も一枚写真を手に取り、裏に書かれた日付と場所を見る。すると、あの日のことを思い出せるのだ。「海を眺めるのが好きなんだ。海辺に行くと、写真を撮ってしまう。日付と場所はそのついでに書き留めていただけなんだ。なんでそうするのかなんて、考えたこともなかったよ。でも最初に書き留めてから、それが習慣になってしまったんだ」「海に何か特別な思い入れでもあるの?」「ある出来事がきっかけで、海が好きになったんだ」隼人は月子を振り返ってそう言った。海を見ると、かつて海辺をさまよっていた月子のことを思い出す。だから彼が撮る一枚一枚の写真は、彼女を思い出した証でもあった。当時、隼人は自分の気持ちに気づいていなかった。何か印象深い出来事に関連するものを見ると思い出してしまう、ただそれだけのことだと思っていた。そうやって月子を思い出す回数が増えるたびに、写真に収めてきたのだ。今になって振り返ってみれば、そのどれもが特別な思い出として記憶に残った。月子はうなずいて写真を置くと、振り返って彼の手を取り、その手のひらをなでた。「こんな遅くまで、何をしてたの?」隼人が顔を近づけると、月子はとっさに身を引き、瞳にかすかな動揺が走った。しかし、もう風呂にも入り髪も整えたのだから大丈夫だと自分に言い聞かせ、平静を装って彼に抱きしめられるのを待った。見た目はクールな鷹司社長なのに、彼女を抱きしめるのが大好きだ。もしかして、すごく寂しがり屋なのかもしれない。しかし、彼は月子を抱きしめず、髪の匂いを嗅いで頬にキスをした。そしてすっと体を起こすと、彼女の前に立ちはだかった。そして、月子のあごをくいっと持ち上げ、危険な眼差しで言った。「シャンプーも、ボディソープも、服も……うちの匂いじゃない。どこに行ってたんだ?」月子はめったに「悪いこと」をしないのに、会ってすぐに見破られてしまった。隼人の強引な性格はよく知っている。今言わなくても、どうせ問い詰められて白状させられるだけだ。彼女は半分本当で半分嘘の話を始めた。「彩乃の家で遊んでたの。そしたら味の濃いものを食べて汗をかいちゃって……気持ち悪かったから、
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第663話

隼人は月子の目をじっと見つめて言った。「今住んでいるマンションに、別のタイプの部屋があってな。210坪以上あるんだが、そこの内装を新しくしようと思ってるんだ。お前さえ良ければ、将来そっちに引っ越さないか」実は、彼が二人の新居として用意したものだった。そして彼は、疲れたときにゆっくり休めるよう、そことは別に景色のいい緑豊かな別荘も用意した。とはいえ通勤には、フリーリ・レジデンスの方が便利だろう。新しい部屋はもっと広いから、隼人が撮りためた海の写真を飾る専用の部屋も作れる。「お前の好みに合わせて内装を決めたい」隼人は彼女を見つめて言った。「ちょうど今夜、お前にその話をしようと思ってたんだ」月子はきょとんとした。「私たちの部屋って、二つ合わせたらもう210坪近くあるじゃない。どうしてまた新しいのがいるの?」「将来の俺たちのための部屋さ。お前の書斎も、俺の書斎も、たっぷり広く取れる」現に今でも、隼人は時々隣の自分の部屋に戻って仕事をしなければならないこともあった。それを聞いて、月子はぱちくりと瞬きをした。今の生活でも何の不便もないのに、これからのためだなんて……まるで結婚後の新居を用意しているみたいだ。隼人は以前にも、それとなく探りを入れてきたことがあった。でも、彼女がその話に乗らなかったから、今回もはっきりとは口にしていない。だけどこれは、これからもずっと一緒にいたいという、彼の遠回しなメッセージなのだろう。本当に、彼は抜かりのない人だ。こっちが隙を見せるとすぐに押しが強く、容赦なく迫ってくるのだ。そう思いつつも、月子はわざと気づかないふりをした。「あなたの家なんだから、あなたの好きにすればいいじゃない」隼人は言った。「一緒に住むんだから、お前の好みも大事にしたい。デザイン案がいくつかあるから、後で送るよ。好きなのを選んで教えてほしい。お前の要望も聞いて、もっといいプランにしたいんだ……面倒だと思わないでくれよな。きっと住み心地のいい家になるから」彼は彼女に反論させまいと、その頬に手を添えて優しく撫でた。「今日はお酒も飲んだだろ。先に休んでて。シャワーを浴びたら、すぐに行くから」月子は何か言おうとしたが、そのタイミングを逃してしまった。彼女はネグリジェに着替えたが、すぐには寝なかった。ベッドの足元にあるソファに腰
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第664話

心に空いた穴は、外の何かで埋めたくなるものだ。隼人は今でこそ落ち着いて見えるが、彼もまた自由を好む。それは生きとし生けるものが共通して求めるものだ。質問を投げかけた月子をじっと見つめながら、隼人は口を開いた。「昔、現実から逃げ出したくなったとき、速さだけが俺の味方のように思えた時期があったんだ。どこへでも、好きな場所へ連れ出してもらえそうな気がしたから」彼は少し考えるふりをして、別の言い方をしてみせた。「あるいは、スピードとスリルってやつは、生まれつき人を惹きつける魅力があるんだろ。波長が合えば、一目見ただけで好きになる。理屈じゃないんだよ」確かに、誰もが退屈な日常から逃げ出したくなる瞬間はある。彼のこの言い方を聞くと、どこかロマンチックにも感じられた。月子は眉を上げて微笑んだ。「血の繋がりって不思議ね。天音がレースを好きな理由も、あなたと似てる。彼女もエンジンの音を聞いただけで夢中になったの。やっぱり理屈じゃないみたい」天音のプライドの高いところは、静真にそっくりだ。でも、スリルとスピードを求めるところは、隼人と同じ。思いがけない共通点に、月子は少し驚いた。今まで、天音と隼人を結びつけて考えたことなんて、ほとんどなかったからだ。結局、天音が「兄」と呼ぶのは静真だけで、彼女自身、隼人のことは全く兄として意識をしていないのだろう。月子は、ついでに天音がどうして彼をあんなに怖がるのか聞いてみようかと思った。でもその時、隼人が深い眼差しで彼女を見つめ、不意に言った。「だけど、天音がお前を好きなのには、きっとなにか理由があったんだろう」月子はきょとんとした。隼人を見つめるうちに、彼女はゆっくりと目を見開き、信じられないという表情を浮かべた。「もしかして、あなたは私が……ってことを知ってたの?」「ああ、知ってたよ」月子は心底驚いて言った。「どうして?」レースは彼女の日常とはかけ離れたものだし、普段そんな素振りは見せていなかったはずだ。「どうして気づいたの?今夜、私のこと尾行してた?いや、違うわね。あなたが私を尾行する理由がないもの」月子は目を細め、今度こそ本気で知りたくなった。「早く教えて!」「お前が泣いてた日、覚えてるか?」隼人は尋ねた。隼人の前で泣いたことは何度かある。でも、レースに関係があるとし
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第665話

月子は驚いた。「ちょっと、なに自慢げに言ってるの?」「じゃあ、できるだけ我慢するよ」隼人は彼女の耳元で囁いた。「一秒でも長くもつように、頑張るから」月子は驚きの表情を浮かべた。この人、何を言ってるの?今の隼人が、月子にはまるで別人のように思えた。付き合い始めた頃もキスやハグはしたけど、彼はもっと自分を抑えていた。こういう話はあまりしなかった。でも、年上ぶるのをやめてからは、だんだん恥ずかしげもなくストレートな言葉を口にするようになった。最初は淡泊で、そういうことに興味がない人だと思っていたけど、とんでもない勘違いだった。ちょっと触れただけでこんなに反応するのに、体の関係を持ったら、隼人がセーブできるとはとても思えない。普段は何でも自分の言うことを聞いてくれる。でも、キスやハグになると途端に積極的で強引になる。キスなんて、いつも息ができなくなるくらい激しい。こういう時、もし嫌がろうとするものなら彼は切なそうな顔をするのだ。すると、月子はつい折れてしまって、もう、いいかっとキスでもなんでも受け入れてしまうのだ。どうせ生理中だし大したこともできないんだから、結局彼があとになって自分で後始末をしなきゃいけないだろうから。​しかしもし自分が本当に折れて、例えば、誕生日に関係を持ってしまったら、それでこそ完全に相手のペースに飲み込まれてしまわないのだろうか?そう思うと月子はそれ以上考えるのが怖くなった。隼人は何事にも徹底的にこだわるタイプだ。まさか、欲望に歯止めが利かない人……なんてことは、ないよね?そう自分に問いかけてみたけど、そういう確信は確かにないようにも思えた。そう思いつつ、月子は思わず笑えてきた。目の前には大きな罠が仕掛けられていて、自分は知らず知らずのうちに落ちていたんだ。だって、最初はこんなに早く関係を持つなんて考えてもいなかったのに。どうして、いつのまにか誕生日にって決まってるんだろう。絶対に彼の仕業に違いない。むしゃくしゃしてきた月子は、隼人を押しつぶすのも構わずに体の上に覆いかぶさった。そして、彼の耳をつまんで、顔をぐっと近づけた。「あなたが辛くなっても、自業自得だからね!」隼人は、彼女の服の裾から背中に手を滑り込ませ、体をきつく抱きしめた。そして、とても素直なふりをして言った。「はいはい、全部
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第666話

隼人は月子に嘘をつきたくなかった。でも、なぜか今は言葉にできなかった。性格のせいかもしれない。彼が完全に安心できるとき、例えば月子が本当に自分と結婚したいと思って、二人の関係がしっかり固まったとき、そのときに初めて話すつもりだった。月子は本気で気になった。「本当に、教えてくれないの?」隼人は聞き返した。「お前は、いつから俺のことが好きなんだ?」月子はすぐに答えた。「あなたと知り合ったら、誰だって好きになるわ。ごく自然なことよ」隼人は心の中でため息をついた。これはつまり、三年前にもし自分が月子を助けていたら、彼女は運命的に自分を好きになっていたということだろうか?月子、ずっと好きでいてくれよ。隼人はそう願いながら、彼女の耳元にキスを落とした。「おやすみ」月子はその答えが気になって仕方なかった。でも、彼が話してくれる日までこの気持ちを持ち続けるのも、なんだかロマンチックだと思った。……計画通り、月子と彩乃は、Lugi-Xのアップグレード版であるLugi-Mの開発で、目の回るような忙しさだった。月子は以前、千里エンターテインメントにいることが多かった。でも今ではSYテクノロジーの社員はみんな知っている。この会社には社長が二人いることを。一人は表に立つ彩乃で、もう一人が中核技術を担う月子だということを。技術開発部全体が、月子のチームだった。そんな月子は毎日仕事や勉強に追われた。そしてようやく遅れていた専門知識も取り戻し、業界の最先端までたどり着いたのだ。そのうえ恋愛までして、副業に芸能プロダクションまで経営しているなんて……まさにタイムマネジメントの達人といった多忙な生活を送っていたのだ。月子は、技術部で研究に没頭していると、いつも母親の翠を思い出した。翠は仕事に情熱を燃やす女性だったから、自分はますます彼女に似てきたなと感じていた。あんなに自分自身に厳しくて、理性的で強い母親が、本当に夫の浮気くらいで鬱になって、精神的に参ってしまったりするんだろうか。月子にも、自分の母親を理解できないときはあった。でも、二十年以上も騙され続けてきたんだ。きっと受け入れられなかったんだろうな。とはいえ、そんな考えがよぎるのは時々だ。月子は、翠が大好きだった。厳しくも優しい母親。今、彼女のようになれていること
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第667話

隼人は海が大好きだから、月子は彼の誕生日はやはり海の近くで過ごすのがいいと思った。そこで、彩花から、おすすめのプライベートビーチ付きリゾートホテルを教えてもらった。そして、彼女が送ってくれた海の写真を見た月子は、その美しさにうっとりして、隼人もきっと気に入るだろうな、と思った。今はもう十一月。寒くなってきたから、暖かい海辺で二、三日過ごすのがちょうどいいのだ。誕生日だし、みんなでワイワイする方が楽しいだろう。それに隼人はもともと親しい友人が少ないから、全員呼んでも一つのヴィラで十分だった。月子は自分も知っている人を中心に、何人にも電話をかけて旅行の手はずを整えた。それから、友達何人かでグループラインも作った。忍は、海辺のリゾートで隼人の誕生日を祝うと聞いて、とても張り切っていた。彼はすぐに段取りを決めてくれた。月子と隼人は現地集合で、他の友人たちはまず自分のところに集まる。そこからプライベートジェットでみんなを連れていき、午後六時ごろにリゾートホテルに到着する、という計画だった。別の場所にいる亮太も、同じくらいの時間に到着する予定だ。月子と隼人は、夜の食事の準備をするため、半日早く向かうことにした。ついでに、二人きりの時間も過ごせるしね。この「二人きりの時間」は忍の提案だった。彼は、気を利かせたつもりで得意げだった。でも実は、忍が言わなくても、二人は仕事の都合で一日早く到着する必要があったのだ。しかし、リゾートホテルに着いたのはもう夜中の三時だった。荷物を片付けてお風呂に入ったら、四時になっていた。二人とも疲れていたから、ベッドに入るとすぐに眠ってしまった。何かしたくても、できる状態じゃなかった。初めて隼人の誕生日を祝うからだろうか。それともスーツケースに隠した黒い背中の開いたネグリジェや、これから起こることへの興奮と緊張のせいだろうか。とにかく、月子は珍しく昔の夢を見た。それは数ヶ月前の、彼女の24歳の誕生日の夢だった。月子は誕生日に、静真に妊娠したことを伝えようと思っていた。静真は一緒に過ごすと言ってくれたのに、友達と飲みに行って約束をすっかり忘れていた。彼がそのことに気づいたのは、次の日だった。なんて、嫌な夢だろう。でも不思議と、夢の中の月子は、ただ静かにその出来事を見
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第668話

昨夜は遅かったせいで、隼人は上半身裸のまま寝てしまったようだ。身長が190センチ近くあるから、骨格だってがっしりしている。広い肩に、引き締まった腰。そして力強さを感じさせる筋肉が全身を覆っている。彼女の様子をうかがうために、隼人は上半身をひねった。月子から見ると、彼の腰はさらにくびれて見えた。目の前の光景はまさに極上のごちそうで、セクシーすぎて目がくらみそうだった。温かい手が彼女の額にそっと触れた。「すごい熱だ。もしかして熱があるのか?」隼人は月子の顔を覗き込もうとした。彼女は、とっさに彼の手を払いのけた。「ちょっと火照ってるだけ。部屋が暑いのよ」月子も体を起こし、落ち着いた声で言った。「あなたは、先にシャワー浴びてきたら?私は少し休めば大丈夫だから」「本当に大丈夫なのか?」隼人の瞳には、純粋な心配の色が浮かんでいた。それもそうか。まさか自分が朝っぱらからあんなことを企んでいるなんて、隼人はきっと夢にも思っていないだろう。なにせ、彼女の頭の中では今、艶めかしい映像だらけなのだから。そう思っていても彼に見抜かれないようにと、月子は言った。「本当に平気よ。K市はもう冬物の季節なのに、こっちはすごく暖かいんだもの」そして彼の背中を押しながら、「ほら、早く行ってきなよ。さっぱりしてきて。今日はあなたの誕生日なんだから」睡眠時間はわずか三時間だったが、月子の様子はそれほど悪くない。隼人はそれを見て安心すると、シャワーを浴びにバスルームへ向かった。シャワーの音が聞こえ始めると、月子はすぐにベッドを抜け出した。そしてスーツケースの隅から、入念に準備していたネグリジェと……事前に買っておいた例のアレを取り出した。あの時、手で確かめた感触を頼りに、一番大きいサイズを買っておいたのだ。彼女はそれを、ベッドサイドの棚にそっとしまった。それから、背中が大きく開いたデザインのネグリジェをバスタオルの下に隠した。そんなに露出が多いわけじゃないけど、今まで着たことのないデザインだった。これを隼人が見れば、自分が何をしようとしているか、きっと気づいてくれるはず。そうすれば、自分から仕掛けなくても、自然な流れで事が進むはずだ。でも、朝からなんて……どう考えても恥ずかしすぎる。月子は息を深く吸い込んだ。心の準備ができる
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第669話

月子は一度決めたからには、計画通りにやり遂げようとしていた。緊張と興奮でかいた汗をシャワーですべて洗い流す。バスタオルで水滴を拭うと、全身がさっぱりして気持ちがよかった。バスルームには鏡が一枚あった。月子は、この日のために選んだ黒いネグリジェを身にまとい、鏡の前に立った。初めて着たけど、体にぴったりとフィットしていた。体を横に向け、髪を片方に寄せると、大きく開いたVラインが首筋から背中の下の方まで伸びているのが見えた。肩甲骨のところで細いストラップが交差していて、すごくきれいだった。月子はとても満足した。「月子、もう出られるか?」外から隼人の声が聞こえてきた。月子は思わずドアノブに手をかけ、自分の足元を見ながら答えた。「う、うん!」「どうしたんだ?」彼女の声がひどく緊張していたので、隼人は何かあったのかと心配になった。「……あ、蚊がいたのよ。大丈夫だから、待ってて。すぐに出るからね」と月子は言った。「わかった」月子はゆっくりと息を吐いた。もう一度鏡で自分を確認して、うん、問題ないと頷いた。髪にそっと香水をひと吹きする。甘すぎない、ほのかな香りだ。彼女はドアノブを見つめ、息を深く吸い込んでから手をかけた。そして、ついにドアを開けた。隼人がちょうどカーテンを閉めようとしているところだった。少し開いた隙間から、太陽の光が先を競うように差し込み、まっすぐに月子の上に降り注いだ。部屋のほかの場所は薄暗く、月子だけが光の中に立っていた。黒いロングドレスをまとった彼女は、黒と金色の光を浴びて、どこか神聖なオーラさえ放っているようだった。物音に気づいて隼人が振り返ると、その光景が目に飛び込んできた。彼は一瞬息をのみ、その瞳は深く、吸い込まれそうなほど暗くなった。隼人の視線を感じて、月子の心臓は速く打ち始めた。彼は、彼女が何をしようとしているのか全く予想していなかったらしい。もうすでに服も着替えてしまっていた。落ち着いた雰囲気のリゾートスタイルだ。シャツもパンツも白で統一されていて、涼しげだけど手入れが難しい高級な素材でできている。髪にはスタイリング剤をつけておらず、ふんわりと柔らかそうだ。逆光に照らされた美しい横顔は、少し幼くも見えて、とても素敵だった。月子も、思わず見とれてしまった
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第670話

「以外に……紳士的なのね」二人は少し話しているうちに、気まずさがなくなってきた。「てっきり、すぐにでも私のネグリジェを破り捨てちゃうのかと思ってたけど」「なんだそれ?」「……ちょっと、予習をしてきたの」隼人は抱きしめていた腕を解き、月子を見下ろした。すると、月子はまた恥ずかしくなってきたので、気まずくて、隼人の目を見つめられないほどだった。彼に見つめられると、心臓がドキドキして、何を話していいかわからなくなる。隼人は時間を確認した。「何してるの?」月子には彼の行動が理解できなかった。これからって時に、どうして気を逸らすの?「時間が足りるか、見てるんだ」それを聞いた月子は、顔を赤らめた。「ケダモノなの?30分もあれば十分でしょ!」隼人は愛おしそうに、そして呆れたように月子を見ると、思わず彼女にキスをした。「今にわかるさ」「じゃ、わからせてよ。せっかくちゃんと計画してきたんだから」と月子は言った。隼人は彼女を離した。「ベッドに行って横になれ」「え?」すごくストレートだ。月子は隼人を疑うように見つめた。でも、彼のその瞳はいつもの、彼女を飲み込みそうな眼差しだった。それを見た月子は隼人もきっと乗り気なのだろうと思った。月子はごくりと唾を飲み込んだ。緊張で、無意識に手を握りしめていた。そして、くるりと向きを変え、ベッドへと向かって歩いていた。数歩進んだところで、彼女は歩みを緩めた。なんだかおかしい。普段なら隼人はいつも自分をベッドまで抱きかかえて行くんじゃないの?なのに、今日に限ってどうして自分で行かせようとしたのだろう?月子が振り返って、こんな肝心な時にロマンチックじゃないと文句を言おうとした時。突然、全身が硬直し、鳥肌が立った。隼人が彼女の背中にキスをしたのだ。続いて、彼に後ろから押され、月子はなすすべもなくベッドへ倒れ込んだ。するとそのまま彼に、背後から押さえつけられたのだ。月子の心臓はドキドキして、口から飛び出しそうだった。こういうことだったのね……そう思いながら、月子は柔らかいベッドに顔をうずめた。そして背中にのしかかる山のような重みを感じた。この体勢では何も見えないし、何も感じられない。もし相手が何かをしようとしても、心の準備ができない。主導権は完全に隼
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