隼人は凍りつくような冷たい表情で、言った。「やってみるがいい。俺の手から子供を奪い取れるかどうか、な」その言葉の重みと威圧感は明らかで、正人は隼人が本当にイカれていると思った。しかも、手の施しようがないほどに。なにせ、どんなひどい言葉を浴びせても、彼はびくともしないのだ。だから、手応えがまったくなくて、深い無力感と絶望を感じてしまうのだろう。これこそ本当に手の施しようがないってことだ。弱点のない人間っていうのは恐ろしいものだ。正人は、この瞬間、もう勝ち目はないんじゃないかと本気で確信した。そう思いながら、正人は静真に視線を移した。彼はまだ諦めないつもりなのだろうか?いや、これ以上粘ってどうするつもりなのだろうか?静真の険しい表情から、正人は彼自身ももうこれ以上打つ手がないことに気づいているだろうと思った。しかし突然、静真がスマホを取り出して、誰かにメッセージを送った。それをし終えると、静真は指の関節が白くなるほどスマホを強く握りしめた。彼の顔は狂気じみた執念に満ちていた。「隼人、お前がやっているのは全部、月子を奪うためだろ。もし俺が月子を閉じ込めたら、それでもお前は奪えると思ってるのか?」隼人の感情の読めない瞳に、ついに剥き出しの危険な光が宿った。彼は、月子が監視をひどく嫌っていると知ってから見張りを引き上げていたのだ。彼女の出張が終わったら、子供のことをすべて話すつもりだったのに……静真が月子に好かれたいのなら、彼女が到底受け入れられないようなことはしないはずだ。だから隼人は、静真が軟禁という手段に出るとは考えてもみなかったのだ。しかし、今静真に不意を突かれて、隼人の怒りがじわじわと込み上げてきた。「月子に何をした?」その声からは隼人の怒りがひしひしと伝わり、聞く者の背筋を凍らせた。正人は、ふと静真に感心した。隼人は何を言っても効かない鉄壁の男だと思っていたが、静真は彼の弱点を的確に突いたのだ。この兄弟のやり合いには本当に手上げだ。そう思っていると、静真はぞっとするほど冷たい笑みを浮かべて言った。「覚えておけ。月子は俺の妻だ。永遠にな!お前のような素性の知れないやつが、俺から彼女を奪えると思うなよ!」それを聞いて、隼人は無言で銃を抜くと、静真の足に向かって引き金を引いた。彼はあまりに長く感情を
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