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02:思い出した推しの死

last update تاريخ النشر: 2025-06-10 15:17:51

『女神の聖騎士』は名作で、連載が終わってからも人気の高い作品だった。

 バトル漫画なんだけど、主人公アレクやゼノンといった主な登場人物が美形揃いなので、女子人気も高かった。

 ストーリーは、数百年ぶりに降臨した女神に付き従う聖騎士たちが、生命の滅亡を望む冥府の神と戦うというもの。

 アレクは主人公だ。

 だから彼は迷い傷つきながらも正しい心を持ち続けて、最後は冥府の神に打ち勝つ。

 問題はゼノンだった。

 優秀な能力を持ちながらも常にアレクに一歩及ばないゼノンは、いつしかコンプレックスを募らせて、闇落ちしてしまうのだ。

 決定打は女神として覚醒した少女が、パートナーとしてアレクを選んだこと。

 嫉妬と羨望に狂ったゼノンは、神皇国の秘宝である神殺しの黄金の短剣を持ち出して、女神の殺害を企てる。

 けれどもアレクに阻止されて、一騎打ちになる。

 ほとんど互角の力を持つ彼らだったが、ほんの僅かな差でアレクが勝つ。

 女神を殺そうとした短剣を逆に心臓に受けて、ゼノンは絶命する。

「アレク、僕が欲しかったものは、みな……きみが持っていくんだね」

 と、言い残して。

 親友ゼノンを自らの手で殺したアレクは深く傷ついて、それまでの快活な性格に陰が差すようになってしまう。

 ここまでが前半の山場だ。

 そして後半、冥府の神との直接対決の場で、ゼノンは再登場する。

 ――死に取り憑かれた闇騎士、冥府の神の手駒として。

 再び行われる、アレクとの一騎打ち。

 かつての親友、神皇国の双璧と呼ばれた二人は本気で力をぶつけ合う。

 けれどもう一度ゼノンを殺したくないアレクは、どうしても攻撃の手が鈍ってしまう。

 そしてアレクは気付いた。ゼノンの心が血の涙を流していることに。

 ゼノンは完全に自分をなくしてしまったのではなく、ぎりぎりのところで抗っていた。

 そして最後には自らアレクの剣に飛び込んで、ずっと隠し持っていた黄金の短剣を手渡す。

 アレクは短剣を持って女神に加勢し、とうとう冥府の神に止めを刺した……。

 以上が『女神の聖騎士』のあらすじになる。

 そしてここからがとても大事なのだが――私はゼノンを推していた。推して推して推しまくっていた。

 漫画もラノベも大好きだった私はたくさんの作品を読んだが、ゼノンだけは別格。

 一生かけて推す覚悟で、グッズを買い集めたし二次創作もした。同人誌も出した。

 彼の儚い美しさを再現したいがためにイラスト通信講座も受けた!

 原作の漫画は素晴らしいが、アニメのゼノンは声が良かった。

 推しが動いてしゃべる姿は本当に感動もので、とりわけ彼のクールで艶のある声は私の心を撃ち抜いた。

 ゼノンは闇落ちしてしまうだけあって、陰のある人物。

 静かに囁くような声は心の底から耳が幸せで、動画を見るだけでなくしょっちゅう声だけ聞いていたものだ。

 推し至上主義の私は、ゼノンの闇落ちで心の底からダメージを受けた。

 最初の女神暗殺未遂事件が週刊誌に掲載された時、その週は食欲をなくしてろくにものを食べられなかった。

 最後の闇騎士ゼノンが登場した時などは、しばらく夢にうなされたものである。

 闇落ち回避IFの二次創作は鉄板で、色んなシチュエーションで考えた。

 闇騎士ゼノンの心の慟哭をオイシイと言うファンもいたが、完全なる解釈違いだった。

 彼の苦しみと悲しみが見ていられなくて、できることならば助けてあげたかった。

「ど、どうしよう……」

 気絶から目覚めた自室のベッドの上、誰もいなかったので私は頭を抱えた。

「というか、こんな大事なことを今まで思い出さなかったなんて。私のバカ! 無能!」

 サンクトゥア神皇国とか女神降臨とか聖騎士とか、キーワードは揃っていたのに。

「いいえ、今さら過去を悔いたってどうしようもない。問題はこれからよ」

 ここが本当に『女神と聖騎士』の世界なのか、それともよく似た別の世界なのかは知らないが、このまま放置はできない。

 推しの痛々しい姿は見たくない。

 ゼノンの闇落ちは絶対に回避しなければ!

 私は必死に記憶を引っ張り出した。

 今日の聖騎士叙任式は、アレクとゼノンが十五歳の時の出来事。

 女神暗殺未遂事件は十八歳。

 つまりまだ三年ある。きっと何とかなる。

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    last updateآخر تحديث : 2026-03-27
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