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番外編:原作ゼノン2

last update 最終更新日: 2025-07-16 11:45:04

 ゼノンは暗闇の底で眠っている。

 自分の中に芽吹いた闇が、彼をすっかり覆ってしまうのを感じながら。

(アレク。僕のために泣いてくれるのか)

 はるか遠い地上から、かつての親友の嘆きが聞こえる。

(僕にはもう、何も残っていない。心も体も魂さえも冥府の神に奪われてしまった)

 けれどたった一つ、残ったものがある。

 それは心臓に突き刺さった黄金の短剣。神殺しであるために、冥府の神も手を出しかねている。

 冥府の神は本来であれば、ゼノンを依り代に復活するつもりだった。

 闇と氷と地の属性を持つゼノンは、冥府ととても相性が良い。幼い頃に目をつけて、種子を植えておいた。

 少し目を離した隙に女神の神託が下り、聖騎士になっていたのは誤算だったが。

 そして誤算はさらに重なる。

 黄金の短剣が突き刺さったままでは、依り代としての役目を果たせない。

 そこで冥府の神は、ゼノンを闇騎士に仕立て上げた。

 女神の秘宝である短剣で、女神自身を殺すよう仕向けよう。そんな筋書きを考えていた。

(この短剣が、短剣を突き刺したアレクとの絆が。僕に残された最後のもの)

 ほとんど全てを冥府の神に支配されながら、ゼノンは僅かに残った意識で思う。

(であれば、僕は……)

 女神と冥府の神の対決の日がやって来た。

 冥府の神の地上の拠点で、二柱の神は対峙する。

 女神の傍らにはアレクがいる。彼はかつての闊達さを失い、憂いある大人びた表情をしている。

 そして冥府の神の隣には、闇騎士と化したゼノンがいた。

 体中に黒い紋様を浮かび上がらせ、虚ろな瞳でアレクを見ている。

「……ゼノン」

「アレク、これが最後だ。決着をつけよう」

 再び始まる戦いに、ゼノンの心が浮上する。懐かしい友の剣筋、泣きそうな顔。

 打ち込めば防がれる。踏み込みは受け流してかわす。

 遠い
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