Semua Bab バケモノが愛したこの世界: Bab 41 - Bab 50

84 Bab

夢の街の現実

「そ、そんな!そんなに待ってられないわよ!」  レイが焦った様に門番を問い詰める。  しかし門番達も毅然とした態度で頭を振るのみだった。「そう言われても仕方ないだろう。皆同じ条件でスコルフィオ様にお会いするのを待っているんだ。同業者ならまだしも、見ず知らずのお前達ではすぐお会い出来る訳無いだろ?」 「うぐ……」 そう言われてしまい二の句を継げないレイ。  認識操作が出来ない以上、特別扱いを受けることも出来ない。  しかし1年以上待ち続けるのは現実的では無い。「失礼、同業者なら、と仰いましたか?では仮に私達もここで働けばすぐお会い出来るのでしょうか?」 「それは……」 ニイルからの質問に、今度は門番達が言葉に詰まる。  彼女達の役職では判断に困るのだろう。  門番の2人が顔を見合せ、城の中から応援を呼ぼうとした時、まさにそのタイミングで城の中から人が現れた。 今まで街で見た女性は露出の激しい服装をしている事が多かった。  しかし目の前の女性は露出が少な目の、そして今まで見た女性達より豪奢な服を纏い、しかしそれでいてどこか色気を漂わせる美女であった。  聞いていた情報からもしやスコルフィオ本人なのでは、と期待を抱いたレイだったが。「ヴァイス様!」  門番達が別の名を呼んだことで少し落胆する。「……っ」  しかしここでレイの眼に異変が起こる。  ヴァイスと呼ばれた女性を見ると、眼がほんの少し痛むのだ。  この感覚は以前にも覚えがある。  少し顔を伏せ、バレない様に少しだけ『神性付与』を発動させる。  その結果、彼女は『神性付与保持者』だと判明した。(やっぱり!だとすれば彼女はスコルフィオにかなり近しい人物の筈!彼女から何か聞き出せれば……) そう考えた所でヴァイスと呼ばれた女性と目が合う。  慌てて目を伏せ能力を解除するレイ。 (バレた!?フードに認識阻害迄してるのに!?)「ふ〜ん……」  ヴァイスは何か納得したかの様な、不敵な笑みを浮かべながらレイ達へと近付き、そして戸惑っている門番達へ声を掛けた。 「どうしたの貴女達?何か困り事?」 それに門番の1人が困惑した顔で答える。 「いえ、その、この者達がスコルフィオ様に会わせろと言ってきまして。直ぐには会えないと伝えているのですが……」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-24
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今後の方針

 城を後にしたレイ達一行は、アドバイス通り早速冒険者ギルドへと足を運んだ。  まずはどんな仕事内容が存在するか確認する為である。  少しこの街を散策し、冒険者のマークが掲げられた建物を発見する4人。  扉を開け中に入ると、一瞬だけ注目を集めた後、何事も無かったかのように全員の視線が元に戻る。(やはり認識阻害は効いてはいる。あそこだけ魔法を阻害するナニカが有る?それにしては何も視えなかったが……)  その反応にニイルが思案する。  この建物内だけで無く、街に入ってからも確実に認識阻害が効力を発揮していたのは間違い無い。  しかし門番達が居た城前では約半分以下の効力しか効いて無かった様に思える。(十中八九スコルフィオの能力だろう。だが、全く視えないとなるとかなりマズイ状況だな) 「いらっしゃいませ?本日はどの様なご用件でしょうか?」 「ごめんなさい、私達初めてここを訪れた冒険者なの。何か私達でも出来る仕事って有るかしら?」  受付嬢が座るカウンター前に辿り着き、レイが話を進めてくれている事に気付き、思考を中断するニイル。  意識を現実に戻している間にも話は進んでいく。「かしこまりました。では確認の為ギルドカードの提示をお願いします」  受付嬢にそう言われ、各々が自分のギルドカードを差し出す。「これは……」  すると段々と受付嬢の顔が渋くなっていくのが目に見えて分かった。  最後、レイがカードを提示してようやく表情が晴れ、こちらに話し掛けてきた。 「あ、この方はCランクですね。そうしましたらいくつか仕事がございますよ?」 その態度に疑問を持ち、テーブル上に並べられたカードを確認するレイ。  その結果、受付嬢の困惑顔の理由が判明する。「何これ?貴方達Fランクだったの?今までそれでよく不審がられずに済んだわね?」  そう、レイの言う通りレイ以外の3人のランクが最低ランクのFだったのである。  これではかなり簡単なクエストしか受けられず、対人関係のクエストばかりのこの街では、ランクが低過ぎて仕事がほとんど受けられない。  受付嬢に不審がられない様に小声で問い詰めるレイ。「今まで人目を避けて行動してましたからね。かなり昔に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-25
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地獄の日々

 翌日、4人は予定通り二手に別れ行動を開始した。  レイとランシュは依頼のあった娼館へ、ニイルとフィオはこの街の有志が集まって作ったという自警団へとそれぞれ向かう。「私がこの自警団の団長、ミリーだ。それで、お前達か?ギルドからやって来たという冒険者は」 ギルドからの情報を頼りに、自警団が根城とする場所へ向かうと、早速自警団団長のミリーと名乗る女性が現れた。  お互いに名乗り、自己紹介が済んだ所で依頼内容についての話し合い、と思ったのだが、そこでミリーが待ったをかける。 「待て、私は確かに冒険者を寄越して欲しいと言ったが、腕っ節のある奴、とも言った。だがお前達はFランクだと言う。それではこの仕事を任せる事は出来ない」 事前にギルドから聞いていた話だと、彼女達は場所柄お世辞にも治安が良いとは言えないこの場所を守る為に、日々活動している組織だそうだ。  その為、実力のある冒険者が欲しいとの要望があったそうなのだが、やって来たニイルとフィオはお互いがFランク。  これでは使い物にならないと判断された様だ。「まぁまぁ、私達はこれでもCランク冒険者がリーダーを務めるパーティの一員でしてね。実力は有ると思っています。なのでまずはそれを見てから判断していただきたいのですが、如何でしょう?」 しかしそう判断されるのは想定内。  なので前日の予定通り、実力を見せて認めてもらう作戦へと出る。  ニイルの提案に明らかに訝しんでいたミリーだが、2人の態度から試験を行う事を決定した。「その発言がハッタリでは無い事を祈るわ。じゃあ今ここで模擬戦を行いましょう。貴方達、この2人の相手をしてあげなさい」  そう言うとミリーの後ろに控えていた男女2人が前に出る。  男の方は筋骨隆々な大男、女の方はランシュと同じ様に獣の耳と尻尾が生えている、所謂獣人だった。「それだけデカイ口叩くんだ、その自信の程を見せてくれや」 「よろしくー!」  そう言い2人は戦闘態勢に入る。「ではフィオはあの女性の相手を。私はもう一方をやります」 「分かった!」 ニイル達も準備が整ったところで、ミリーが開戦の狼煙を上げる。 「では、始め!」 その瞬間獣人を覆うように炎のドームが現れ、瞬く間に包み込んでしまった。「え?」  それは誰の声だったか。  ニイル
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-26
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花街の歴史

 正式に合格判定を貰った事で、ニイルとフィオはその日から自警団の仕事を手伝う事となった。  改めて軽く自己紹介をした後、団長のミリーから仕事内容についての説明がされる。「この国は知っての通り花街として栄えた国だ。ここに住んでる奴らは良い奴らだが、お国柄どうしても悪い奴らが普通の国よりも多く居る。そういった市民同士の問題や荒事等の対応をするのが私達自警団の仕事だ。今回君達には武力での解決の手伝いをして貰いたい。なので君達の主な仕事は何か問題が無いか街を見廻り、有ればその対応、住民から請われればその応援へと向かう、という事になる」 ギルドで聞いた内容とほぼ大差無い説明をされる。  頭を使う仕事だったのなら、荒くれ者が多い冒険者では難しいかもしれないが、腕っ節を求められているのなら冒険者でも問題無いのだろう。  ただ、勝手に暴れられても困るので入団試験を行ってはいるのだが。  その辺りはどこの国でも一緒なので特に不思議では無い。  2人が頷き、ミリーが続きを話す。「本来なら君達の先輩が指導役として教えるのだが、今日は特別に私が就く事にする。明日からは専属の者を宛てるので今後はソイツに聞くと良い」 本来なら団長も忙しい身なのだが、2人へ関心を持つ者達が大量に居た為、2人を守る意味を込めて団長直々に指導役を行う事となった。  当の本人達はその事実を全く知る由も無いのだが。「君達はこの国に来てまだ日が浅いのだろう?丁度良い、今からこの国を見廻りつつ色々と教えてやろう」 そうして3人は夜の花街へと繰り出す事となったのであった。 「この国、というかこの街はかつては奴隷達や金が無い者達、或いは身寄りの無い者達が集まっていたスラム街だったんだ」  ミリーが大通りを案内しながら説明する。  夜という事もあって通りは人で溢れ返っていた。  3人はそれを少し離れた所から眺め、ミリーが説明を続ける。「かくいう私も捨てられた身でね。生きる為に色んな悪事を働いたが、そんな時とある冒険者に出会ったんだ」 この国にはかなりの数の冒険者が集まる。  それはギルドからの依頼だったり、日々の疲れを癒す為であったり。  或いは労働力の為の奴隷を買いに来たり、悪事を働きに来たり……  どうやら今も昔もそれは対して変わってはいない様であった。「彼はかなりの強者でね。私は
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-27
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それぞれの日常

 レイ達一行がフィミニアに到着してから、約2週間程が経過した。  その間仕事の依頼をこなしつつ、レイの能力向上を目指し、空いた時間は修行に明け暮れる日々が続く。「では、私達は行ってきます」 「また後でね〜」 この日も、ニイルとフィオは自警団の仕事を行う為に午後から出掛けて行く。  最早見慣れた光景だった。 この国はとても小さい。  故に噂等はすぐに広まり話題になりやすいのだが、ニイルとフィオも例に漏れず、入団テストでの話が広がり、数日でかなりの有名人となっていた。  更にフィオはその可愛らしい見た目と、愛嬌のある性格から特に人気になり、この2週間近くでかなり顔が広くなった。  今では遊女に誘われる事も有るらしい。  本人達曰く…… 「目立ち過ぎてしまいました」  と、反省の弁を述べていたのだが。「は〜い……行ってらっしゃい……」  午前の修行を終え、息も絶え絶えで返事をするレイ。  かく言うレイ達も顔馴染みが増え、この街に馴染んできていた。  きっかけはギルドの依頼で向かった初日、娼館での警備を行った時の出来事だった。  その日はそこそこ忙しく、客の人数も多かったそうだ。  人の数が増えれば、それだけ問題が起きる確率も上がるというもの。  この日は運悪く、酔っ払った冒険者パーティがやって来たのだ。  店にイチャモンを付けたり、他の客や従業員に迷惑を掛ける始末。  終いには怒鳴り散らし、暴れ出す寸前だったのだが……  レイ達が一瞬にして組み伏せ、外へと追い払ったのである。  それを見ていた従業員や客達から噂が広まり、今では色々な店から警備を依頼される等、ちょっとした有名人になっていた。「お互い様ね……」  そう皆で苦笑し合ったのは記憶に新しい。 そんな訳で当初の目的でもあった、スコルフィオとの面会は、4人が有名になる事に、着実に現実味が増していっていたのだった。「じゃあ私達もそろそろ出掛けましょうか」  特訓から一休みし、時間は昼を少し過ぎた頃。  頷くランシュを伴いやって来たのは、依頼初日に訪れた娼館であった。「おや2人共いらっしゃい。今日もよろしく頼むよ」 「店長さん、おはようございます。今日もよろしくお願いします」 出迎えたのは初日に色々と説明してくれた中年の女性。  後々知ったのだが、どうやらこ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-28
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追手

「2人共!今日はもう終わりだから上がっていいよ!」 客も捌けた頃、店長が店の手伝いをしていたレイとランシュに声を掛ける。  現在は夜も更け、夜の街と言われるこの国でも、流石に店仕舞いする光景が広がり始めていた。「分かりました。じゃあ皆さんお疲れ様です」  従業員達にもそう挨拶し、レイとランシュは店を後にする。「また報酬金額より多く入ってる……有難いのだけれど何だか申し訳無いわね」  帰り道、ランシュと二人で今日の報酬を確認中、レイは苦笑しながら言った。  帰り際に店長から渡されたそれは、通常の相場金額より2倍近く多い金額が入っていた。  最初の頃は受け取れないと遠慮していたのだが、曰く。 「最早警備以外の仕事の方がメインだからねぇ。これで払わなきゃ女が廃るってもんさ」  と、言われれば受け取らざるを得ない。  実際、日に日に警備の仕事は減り、裏方の仕事が増えてきていたので、今では申し訳なく感じつつ、有難く受け取るようにしているのであった。 実は2人の名が広まるにつれ彼女達の功績も広まり、実際は客から恐れられている存在になりつつ有るという事は、2人はまだ知らない。  2人が居る店では格段に治安が良くなり、警備中に暇を持て余す事が多いのは、そういった事情が有るからなのであった。「少しお腹減ったわね。ニイル達もそろそろ終わるだろうから、空いてるお店でも探しに行く?」  そんな事は露知らず、食事の提案を持ち掛けるレイ。  ランシュもそれに同意を示し、2人で空いている店を探す事にする。  時間が時間だけに、飲食店も同様に閉店し始めているのが目立つが、街が特殊なので普通の街より遅い時間までやっている所も多い。  お陰で閉店時間まで余裕のある店を発見し、そこに入る事を決める2人。「じゃあ私はここで待ってるから2人を連れて来てくれる?」  レイのそのお願いに首肯し、ランシュは再び雑踏へと消え、レイは店内へと進んだ。  幸いにも店内は空いていて、見渡す限り3人組のパーティが2組と、8人のパーティの1組しか店内には居なかった。(多いわね……合同かしら?)  その8人を一瞥だけして店内を進むレイ。  基本、普通のパーティは3〜4人程で1パーティ。  それ以上になると、高難易度のダンジョンや強力な大型モンスターの討伐が主となる為、この国では
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-29
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英雄と呼ばれる二人

「どうだマーガ?奴はまだ生きてるか?」 倒壊した建物に消えたレイを油断無く見つめながら、剣士の男が問う。  未だ土煙のせいでレイがどうなっているのかそれは定かでは無いが、特殊な眼を持つ彼には相手の状態が視えているだろうと分かっての問いだった。「まだ生きているよ。随分強固な魔法障壁を張れる様だね。やっぱり魔法師としての腕も一流みたいだ」  案の定、マーガと呼ばれた長身の男がその瞳をもって答える。  彼とは幼馴染みの腐れ縁で、その才能を1番理解していた。  そんな彼が一流と認めた相手ならば一筋縄ではいかないだろうという事を、改めて再認識する。 (まぁ、あのルエル殿を退けた相手だ。ただの強者程度の相手だとは思っていなかったが……) 2人は知っていた。  世界的にも英雄と呼ばれる2人だが、真に最強の名を冠する存在はルエルだと言う事を。  あまり表舞台に立たない存在だっただけに彼の実力を知らない者が多いが、彼と一緒に働いていた者達はその強さを良く知っている。 だからこそ最初彼が負けたと報告を受けた時は、何の冗談かと思ったものだ。  しかし実際に相対してみて、目の前の相手がかなりの強者だと言う事は瞬時に理解出来た。  その証拠に。「ブレイズ!」 「……っ!」  マーガの警告と共に、土煙の中から一瞬にして肉薄して来たレイの剣を、両手の剣で受け止める。  ブレイズと呼ばれた彼も剣の腕には自信が有った。  その彼を持ってしても一流と認めざるを得ない程の身体能力と剣の鋭さが、彼女には有った。「身体強化をあれ程の速さで展開するとは!それも略式かい!?あの難しい強化魔法の略式を、これ程まで使いこなせる人間が存在するとは!」  レイが魔法を発動しようとしたところをマーガは視た。  故にブレイズに警告を発したのだが、その時には既に魔法が完成しており、一瞬にしてブレイズとの距離を詰めていた。 幼い頃から数多くの実践を経験し、幾人もの魔法師を見てきたマーガだったが、これ程まで完成度の高い魔法を、これまた完成度の高い略式で使う人間はルエルしか見た事が無かった。 マーガが驚きの声を上げている間も、レイとブレイズの剣戟は続く。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-30
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魔王と剣聖

「『剣聖』……」 その異名を聞き1人の人物を思い起こすレイ。  その人物とはもちろん、自分の育ての親とも言える存在であった師匠である。  普段はどこか捉えどころの無い人物だったが、ひとたび剣の事となるとどこまでも熱中する様な人物だった。  その腕前は確かに本物で、剣の腕だけならばレイが今迄見てきた中で誰よりも強いだろうと今でも考えている。  その名を受け継ぐ者ならば確かに相当な実力者だと思われるが、彼が死んでまだ数年ですぐに次の『剣聖』が生まれるとは意外であった。  しかし、レイの心を読んだかのように続くニイルの言葉で、その考えは否定される。 「ザジはかなり以前に隠居されていましたからね。彼が姿を消して数十年は『剣聖』を継ぐ存在は居なかったので、ブレイズの登場は民衆を熱狂させたらしいですよ」 その言葉に目を見開くレイ。  それが真実なのだとすれば目の前のブレイズという男の実力はザジ並か、下手をしたらそれ以上の可能性が有るという事。  もしそうなのだとしたら、剣の戦闘でのレイの勝算は限りなく低い。  魔法を主軸とした戦法を脳内で構築するが、その時ニイルの話を聞いていたブレイズが口を開いた。 「先代を知っているのか。彼は俺が産まれた時にはもう隠居していたからな。『剣聖』を継ぐ者として彼の剣と俺の剣、どちらが上なのか知りたいと常々思っていたのだ。お前達がそれを教えてくれる事を期待している」 そういうブレイズの目はギラギラと輝き、口は僅かに笑みを形作っている。  剣の事に関して熱中するのはザジもブレイズも同じだな、と感じるレイ。「君は良いよね、『剣聖』なんてカッコイイ二つ名が有って。僕なんて『魔王』だよ?完全に悪役じゃないか。そもそも僕は魔人族じゃなくて人間だし」  そんな事を考えていると、横のマーガという男が呆れ顔で呟く。  彼らの口振りを見るに、同じ国の人間という以上の仲を感じられた。  しかしそれ以上に気になるのは彼の異名である。「それで?『魔王』というのは?」  彼らのやり取りを見ながら、レイはニイルに続きを促す。「『魔王』とはかつて畏れられた魔人族の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-31
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英雄たる所以

「何だ?半泣きになりながら何をしている?」  苦悶に満ちた表情で剣を向けてきているレイに対し、ブレイズは困惑の声を上げる。「ハッタリのつもりか?一体何を仕切り直すつもり……」 「待った」 構わずにレイへと突撃しようとしていたブレイズを止めたのは、傍らでレイを観察していたマーガであった。  その一言で、熱くなりかけていた思考が一気に冷やされ冷静さを取り戻す。  ブレイズは、マーガの冷静に観察し状況を把握する能力を、彼の使う魔法と同じ位信用していた。「彼女の色が濃くなった。何処で手に入れたのかは分からないけど、恐らくさっき彼女が飲んだのは回復薬だね。この一瞬で魔力まで回復する薬なんて聞いた事が無いけど……」  と、困惑と興奮が綯い交ぜになったかの様な口調で話すマーガ。  それに驚きブレイズもレイを見遣ると、確かにレイに与えた傷が回復しているのが見て取れる。  高級な回復薬ならまだこの回復速度は理解出来るが、魔力も回復する回復薬などブレイズは聞いた事が無かった。  隣で驚いている辺り、博識のマーガすら知らなかったのだろう。 その回復薬の存在は自国の発展、いや戦争にさえも役に立つ有益な物だと2人は一瞬で判断した。「知りたい事がまた増えたね」 「だがやる事は変わらん、奴を捕らえて聞き出せば良いだけの話」  2人でそう結論付け、改めて戦闘態勢に入るブレイズとマーガ。  かなりの実力者であり、完全回復を果たしたレイに対してでさえも、この2人なら捕縛出来る、そう考えての発言だった。(やっぱり今度落ち着いた時に、ニイルに頼んでこの薬を改良してもらわなくちゃ!)  対するレイだが、飲み干した回復薬のあまりの不味さに集中力を削がれていた。  これでは傷や魔力が回復しても弱体化と大差無い。  不味さに堪えていたレイも、段々とニイルに対して怒りが込み上げてきた。「その為にも、さっさと方を付ける!」  ニイルに対する怒りも込め、一気に踏み込みブレイズへと斬り掛かるレイ。 『+5』のお陰で常人には見切れない程のスピードで迫ったのだが、レイは怒りですっかり失念していた。  この程度では見切られた可能性が有るという事を。「甘い!」 「なっ!?……ぐっ!?」 
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-01
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とあるバケモノの真意

「やはりな……」 レイ達の戦闘を遠く離れた場所から眺めている人物が呟く。  誰あろうニイルである。 レイの頼みで結界を張る為離れたニイルだったが、結界を張りつつレイの戦闘も観察し、厳しい様なら介入も辞さないと考えていた。  案の定ニイルの想定通りに進み、現在レイの状況は苦しいものとなっている。「レイの考えも分かるんだがな。流石に時期尚早だ」 神性付与保持者にも劣らぬ実力者2人が相手である。  2人揃った時、下手をすれば『柒翼』と呼ばれる彼等でさえ手こずるだろうと考えていたニイル。  故に撤退、もしくは全員での制圧を考えていた。  しかしレイからの返答は1人での制圧。  実践に勝る経験は無いと言っても勇気と蛮勇は違う、そう言わざるを得なかった。  それは若さ故の無謀か、それとも仇に近付きながらも遠く及ばない故の焦燥か。 「どちらもだろうな」 かつて自分も同じ道を辿り、遥か遠くに置いてきた感情に遠い目をするニイル。  だからだろうか、身内に甘い事も相まって彼女の願いを切り捨てる事はニイルには出来なかった。 人を捨て、人に忘れ去られたバケモノにとっての、数少ない人間性だった。 そして更に2つの弱点、それの所為でニイルは逃げる事も出来ず遠くから眺めるという現状に陥っている。「視えた。やはり奴が持っていたか」  レイと戦闘中であるマーガを、その眼でもって視通し呟くニイル。  ニイルが探していたのは『繁栄の証』、今では『過去の遺物』と呼ばれる代物である。 先程マーガが言っていた、転移魔法を妨害した、という言葉。  それを確認する為にニイルは彼等を観察していた。  遥か過去に失われた転移魔法、それを知っている者すら今では稀な存在であるにも関わらず、それを妨害出来る者は今では殆ど存在しない。  であるならば考えられる方法は1つ。  共に失われた技術で作られた『繁栄の証』の存在だった。  そのニイルの考えは正しく、マーガの懐に今のニイルには視えない存
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-02
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