Semua Bab バケモノが愛したこの世界: Bab 31 - Bab 40

84 Bab

綱渡りの反撃

 一瞬の隙を突き、ルエルに深手を負わせる事に成功したレイ。  その後呪いを付与させる事も出来、恐ろしい程に順調に計画は進んでいる。  ニイルの言う通りルエルの慢心を突いた作戦だったが、ここまで見事にハマるとはレイも内心では驚きを隠せないでいた。 しかし予想以上に深刻な事態も同時に起こっている。  それはレイへのダメージが大きい事だ。 『神性付与』を発動する迄の間に受けたダメージが、治癒魔法で少しは回復出来たもののかなり尾を引いている。  何より現状マズイのが、『神性付与』の弊害が現在進行形で続いている事だ。 ニイルより授かったこの『神性付与』だが、能力はニイル曰く、色々な物が良く視える、との事だった。  実際に使ってみると、視力が良くなるという事では無く、見えなかった物や見ても分からなかった物が分かる様になった。  詳しく言うなら魔法陣の内容を、一目見ただけで理解し、模倣すら出来る様になった。  ただ、複雑な魔法や大規模な魔法等はまだ一瞬で理解する事が出来なかったり、そもそも解析不能だったりと、レイの印象では正直微妙な能力と思わざるを得ない。「それが今の貴女の限界なんでしょう。鍛錬を積めば今より様々な物が視れる様になりますよ」  こちらを見透かしたかの様に諭すニイルに、レイは率直な感想をぶつける。 「確かに相手がどんな魔法を使うのか、それを一目見ただけで理解出来るのは戦いでは有利になると思うわ。でも『神性付与』を使わなくても知識を深めれば対応出来るんじゃないかしら?」  実際簡単な魔法陣ならもう見れば分かるし、と続けるレイ。 それに苦笑しつつも、ニイルは丁寧にこの力の利便性を説く。 「学んですぐ実践に活かせるかとなれば、意外と難しいものなのはこの日々の修行で分かっているでしょう?これはその咄嗟の状況の時に役に立ちます。それに世の中知らない魔法、消えてしまった魔法は星の数程有ります。強敵に会えば自分の知らない魔法で封殺されてしまうかもしれませんよ?」  それに、とニイルは続ける。 「その魔法陣の仕組みを理解出来れば
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-14
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ギフト

 自分の体からミシミシと音を立て、骨が軋んでいくのを感じるレイ。  何とか現状から逃れようとするが、上からの重力が動く事を許さない。「ぐう……ううううううう!」 降り注ぐ重力に抗い、空いている左手をルエルへと伸ばす。  しかし重力に逆らえず、すぐ地面を掴むことになってしまった。 そんな様子を見下ろすルエル。  先程までの慇懃無礼な所作とは打って変わって、粗野な態度で口を開く。 「これ程の傷を負うのは久しぶりだ。てめぇみてぇな小娘がよくもやってくれたな?」 その瞳は怒りの炎を湛え、ギラギラとした雰囲気を醸し出している。  口調すらも先程とは全くの別物であり、まるで別人の様だとレイは感じた。「……それが……本性って訳?……随分猫を被って……いるのね?」 レイが挑発する様に口を開くも、それには答えず代わりに重力が増し、更に地面へと押し潰されていく。 「あう!」 「口の利き方には気ぃつけろガキ。今がどんな状況かよく考えてから喋るんだな。てめぇの命は俺が握ってんだからよ?」 もはや怒りの感情を隠しもしないルエルに内心焦りと、そして未だに計画通りに事が進んでいる事に、笑みを浮かべそうになるレイ。  何故ならまだ自分は生きているから。  かつてニイルは言っていた。  ルエルが本気を出せば一瞬で殺されるだろう、と。  なのにあんな怒りを顕にしている状態でも、自分はまだ生きている。  つまりルエルは未だにレイの事を侮り、油断しているのだ。(どこまでも傲慢な奴。でも今はそれが有難い)  レイもかなり限界が近いが、ルエルにもかなりのダメージを与えている。  このままこの隙を突いて殺し切れる可能性も多分に有ると、レイは思案する。 故に現状を打開する為の次なる一手を打った。「ハッ!……自分が勝ったと……勘違いしてる奴程、足元を救われるのよ……こんな風に……ね!」  喋りながら脳内で準備していた略式を展開するレイ。  左手を伝い、地中を走らせルエルの足元を崩す為の土魔法が発動される。  更にルエルの周りの土が盛り上がり、多数の巨大な棘と化して襲い掛かる。 突然足場が崩れ、更に現れた棘を回避するべく後方へ跳ぶルエル。  その際に解除された重力魔法の隙を突き、雷速にて退避。  そのまま態勢を整え切れていない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-15
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理外の力

 明らかに先程迄と様子が違う。  ルエルが初めに抱いた感想はそれだった。(アイツの放つ圧力が今までのそれと比では無い。もはや俺達レベルかもしれねぇ) しかし理解が及ばない。  直前にレイが放った言葉、それはルエルが先程も聞いた物と全く同じだったから。(『ギフト』、アイツは確かにそう言っていた。だが何だ?明らかにあれは『神性付与』の範疇に収まらない力だ。『神性付与』にそんな力が秘められているなんて事は聞いた事が無ぇ) かつて部下に『神性付与』を授け、自分も似た力を使う。  更にそんなバケモノ共がゴロゴロ居る所で日々渡り合っているのだ。  裏社会の秘密と言われているこの力すら、他の人間より詳しいと自負している。  しかしそんなルエルですら今の状況は聞いた事がない。(まさかあの力を神性付与と勘違いしてんのか?それならそれで問題だが……) 思考を巡らせているその時、目の前のレイが突然姿を消した。「!?クソっ!」  そう錯覚させる程のスピードでレイが迫っていた。  咄嗟に自身の周りに防壁を展開し事なきを得たが、格段に先程より迅くなっている。(このスピード!今の俺ですらギリギリ追い付けねぇレベルじゃねぇか!まだ上がるのかよ!) 現在ルエルは自身のとある力をほんの少し解放している。  お陰でルエルの身体能力は人間のソレを遥かに超え、雷の速度にすら反応出来る程になっているのである。  しかしそんな彼でさえ今のレイの攻撃はほとんど見えず、勘で奇跡的に防いだ状態であった。(これもアイツの『ギフト』の効果か!?身体能力が上がるってレベルじゃ無ぇぞ!) 「まだ反応出来るのね。なら、これでどう?」 内心の焦りを出さない様に冷静に対処し、守りを固めるべく魔法障壁を更に生み出すルエル。  徐々に厚みを増していく障壁を、しかしレイは剣を防がれながら一瞬にして、今度は全て消してしまった。「なんなんだ一体!?」 (この魔法が消える力も、さっきよりも強力になってやがる!アイツの能力が全く分からねぇ!) 追撃に入ろうとするレイを阻む様に、重力魔法にて押し潰そうとしてくるルエル。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-16
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決着

「ハーッハッハッハッハ!見ろ!てめぇのよく分からん魔法も俺の魔法の前には無力!このまま無限の闇に引きずり込んでやるよぉ!」 レイの魔法、『電磁加速魔弾』がブラックホールに飲み込まれたのを見た時、ルエルは自身の傷の痛みも忘れて笑いが込み上げ、勝利を確信するに至った。 それはそうだろう、今も重力に引き摺られ、レイが暗黒に飲まれそうになるのを、剣を地面に突き立て必死に堪えている。  しかしブラックホールに飲み込まれるのも時間の問題だろう。  この魔法は維持させるのに常に魔力を消費する。  魔力を注ぐのを止めればこの魔法は解除されるが、逆に言えば注ぐ魔力を増やせばその分引き寄せる重力が増すのだ。(このまま限界まで魔力を注いで、アイツがどれだけ耐えられるのか見届けてやるぜ) 実際のところ、ルエルの方も魔力はほとんど残っておらず、この魔法を維持するだけで精一杯だった。  しかし最早レイに打つ手は無し、そう判断し残りの魔力のほとんどをこの魔法に充てる事を決める。 しかしルエルは知らなかったのだ。  最後まで油断や慢心を捨て切る事が出来なかったその傲慢さ、ソレこそがこの戦いの命運を分けるのだと。(来た!)  周囲を視ながら好機だと悟るレイ。  ルエルは完全に油断し、障壁以外の魔法を用意していない。  残りの魔力量を視るに、どうやら完全にこのブラックホールに注力している様だ。  そしてレイは『電磁加速魔弾』を囮に使って迄この状況を待っていた。(事前に視ていたお陰で、この魔法には『電磁加速魔弾』が効かない事は分かってた。効かないと分かればルエルが勝ちを確信し、油断するだろうという事も!)  その予想は正しく的中し、ルエルは隙だらけの姿を晒している。(これで全て終わらせる!) レイは地面から剣を抜き、敢えてブラックホールに向かって飛び出した。  徐々に迫る黒球を冷静に解析しながら、次の魔法の準備を始める。「諦めたか!死ねぇ!」  ルエルが歓喜の声を上げる。  レイの目前に黒球が迫り、後ほんの少しでルエルの思い描く未来が来るだろう。  しかしブラックホールがレイを飲み込む寸前、その黒球はあっさりと姿を消し、更にルエルの周りに展開されていた障壁全ても消え去った。「んだと!?」  完全
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-17
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尚も続く旅路

「お姉様〜!」 自分を呼ぶ声に振り返る。  見れば自分より2歳年下の妹が駆け寄って来ていた。 今日は待ちに待ったピクニックの日。  忙しい父と母が、この日の為に予定を空けて連れて来てくれた、家族水入らずの時間。  前日に神様にお願いしたお陰か、今日はとても天気が良く、気温も調度良い。  正に絶好のお出掛け日和だった。「お姉様捕まえた〜!」 「わっ!もう、びっくりした!全く、甘えん坊なんだから……」 抱き着いてきた妹を抱き返し、優しく頭を撫でてやる。  政務で忙しい父や母の代わりに、幼いながらも面倒を見ていたからであろうか、妹は自分にかなり懐いていた。  もちろん、忙しさにかまけて自分達を蔑ろにする様な両親では無い。  記念日はもちろんの事、こういった何気ない日にも、自分達の為に予定を空けてくれていた。  そんな両親は、少し離れた所でこちらを見ている。 自分は恵まれている、幼いながらもそう感じていた。  両親から愛情を受けて育てられ、こんなに可愛い妹も居る。  そんな妹と共に優れた才能にも恵まれ、それを伸ばせる環境も有る。  臣下は自分達に忠義を持って仕えてくれているし、臣民達も家族の様に接してくれている。  隣国との関係も良好で、正に平和そのもの。  その時は、こんな日がずっと続くのだと信じていた。「ねぇお姉様?また来年も、皆でここに来ましょうね!」 妹も同じ様な事を考えていたのであろう。  それに同意を返そうとして…… 「夢……」 カーテンの隙間から射し込む、朝日の眩しさに目が覚めたレイ。  未だ寝惚けた頭で辺りを見回すと、ここはザジの家で。  そしてレイは自分の部屋のベッドで寝ていた様だ。  更に言えば、何故か両脇にはランシュとフィオもレイを挟む様に寝ていた。  そこそこ大きめのベッドではあるが、流石に3人が寝るには狭過ぎる為、2人共レイに密着する形で眠っている。  なので身動きが取れない。  2人を起こそうか悩んでいると、右側から視線を感じる。  見てみるといつの間にか起きたのだろうか、ランシュが無言でこちらを見つめていた。「っ!お、おはよう……?」  少し驚きつつ挨拶すると、ランシュの手が伸びレイの顔に触れてきた。  そのまま指で、目尻に溜まった涙を拭い去っていく。「あ……」  どうやら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-18
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断章〜かつて少女が抱いた理想〜

 母も売春婦だったらしい。  幼い頃にこの街に売られ、そして病で呆気なく死んだと、物心がついた時に姐さん達から教わった。  容姿が優れている訳では無く、特に人気の無かった彼女は生きる為に沢山の客を安く取り、誰の子か分からない私を授かり、産んで数年後、性病にてこの世を去った。 そんな話を聞いた時、最初に抱いたのは怒りだった。  だってそうでしょう?  見た事も無い母親を、子供を同じ売春婦にした張本人を。  どうして庇う事が出来る?  幼かった事も相まって、その頃の私は全てを憎み、そして拒絶していた様に思う。 でも一つだけ感謝出来る事が有る。  それは自分を、母親とは似ても似つかぬ程の美人として産んでくれた事だ。  あの母親からこんな絶世の美少女が産まれるなんて。  大きくなるにつれて、母親を知る人達は皆そう言ってたっけ。  だからそこだけは感謝してる。  私に他の誰にも持ち得ない『美貌』を持たせてくれて。 そう、美しさは武器だ。  私はまだ幼いながらもそれを学んだ。  この街では特にそれが顕著だった。  何もしなくても男は寄ってくるし、意地悪な姐さん達も陰口をたたく事しか出来ない。  何故なら私がこの街で1番美しく、そして稼げるから。  私が稼いだ金を、皆に循環してやれば皆私の味方になってくれる。  そんな私に、表立って反抗するなんて馬鹿な真似をする人は居なかった。 でも当時の幼い私は、そんな打算的な考えは持って居なかった。  ただ単純に、皆を喜ばせたかっただけだった。  姐さん達はいつも私のお世話をしてくれて優しかったし。  本当の家族は知らないけど、これが家族なんだと知る事が出来た。  お陰で、そんな家族の様な人達には心を開く事も出来る様になった。  そんな優しい人達の推薦だったから、最初の頃の男の人達も皆優しかった。  優しくしてくれたお陰で、最初はもちろん痛かったけど、それ以降はとても気持ち良くしてもらったのを覚えている。  こんな酷い世の中でも優しい人達が居るのなら、今度はその人達を助けよう。  そう思う事で、当時の純粋な私は生きてこれたんだと思う。 でもやっぱり、世界には悪意が蔓延っていて。 ある日、私の噂を聞き付けた男達が街にやって来た。  その男達は
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-19
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幕間〜屈辱の敗走〜

「ゲホッ!……ハア……ハア……クソ!クソ!クソ!」 残る魔力を全て治癒魔法に回し、全力で傷を治療しながら悪態をつくルエル。  彼は現在、助けに来た女性に運ばれながら移動中だった。  傍から見れば完全なる敗走である。  それは彼の高いプライドでは、耐え難い苦痛であった。「絶対に……ただでは済まさねぇ……」 ここまで順調に進んできていた人生計画が、たかが少女に壊された現実に。  いや、この魔力だけ無駄に消費し、一向に治らないこの呪いに。  あの程度の相手に深手を負わされ逃げている現実に。  何より傍らの女に助けられている現状に。  今起きている全てに、彼は怒りを覚えていた。「本当、珍しいわね。貴方がここまで感情を顕にするのも」  彼女の言葉にうるせぇよ、と内心思うルエル。  昔から彼女は、ルエルに対する好意を口にしていた。  しかしルエルは感じていた。  それが普通の人間が抱く恋愛感情とは、まるで別物の感情という事に。  そもそも2人は味方でも無ければ、仲間という訳でも無い。  むしろ敵としていがみ合っていた時間の方が長いのである。  そんな相手に対して、どうして好意を持てようか。  彼女が本当に欲しているのは自分が持つ力。  彼女が持ち得ない、様々なステータスだという事は明白である。  何せ、大なり小なり他の6人にも同じ様な事を言っているのだから。  それが彼女の『強欲』たる所以であろう。「てめぇは……この呪い……見た事あるか……?」  そんな相手だからこそ、借りを作るのはごめん蒙りたかったが背に腹はかえられず、彼女に助言を請う事にした。  強欲な彼女なら、様々な知識を仕入れているとしても不思議では無いからである。「ごめんなさい、私もこの呪いは見た事無いわね。こんな複雑な呪いを使える人間が居る事に驚いているもの」  しかし希望も虚しく、喜ばしい返答は帰っては来なかった。  自分も相当魔法には詳しいと自負している。  そんな自分でさえ分からなかっただけにある程度予想はしていたのだが、それでも彼女が知らないという事実に改めて畏怖の念を覚える。(この呪いもそうだが、やはり問題はあの『ギフト』だ。何度思い返してもあれはギフトなんて代物じゃ無かった。この呪いも含め、問題視するべ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-20
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旅立ちの朝

 レイが目覚めた日、朝食を済ませ一行は新たなる目的地を目指す為、セストへと戻って来ていた。  勿論現在もレイとニイルは指名手配となっているので、全員がフードを被り、認識阻害の魔法を掛けての来訪となる。「ここ暫くは認識阻害魔法を使ってなかったから余計に、この魔法を維持し続けるのが億劫に感じるわね」 「流石に今の状況では仕方ないでしょう。フードの4人組が現れれば嫌でも目立ってしまいますから。今は警備の巡回もかなり増えていますからね。余計な争いは避けなければ」 ニイルの言う事はもっともなのだが、思わず愚痴が口をついてしまうレイ。  今まで常に認識阻害魔法を使用して生活していたのに、たかが2年、その癖が抜けただけで面倒に感じるとは。  慣れとは恐ろしい物だと苦笑してしまう。 しかし警戒するに越したことは無いだろう。  何せ今は至る所に、甲冑姿の騎士達が街を警備しているのだから。  レイとニイルがこの国の宰相暗殺未遂を行い、その2人が捕まっていない。  ただそれだけが理由とは考えられない程、巡回の人数が多い。  1ヶ月も経つというのに、ここ迄ほとぼりが冷めていないのには別の理由があった。「あれから1ヶ月経ったっていうのに、まだこれだけ私達の事を探しているなんて、諦めの悪い人達ね」  少しの呆れを滲ませレイが言うが、それは少し違うとニイルが訂正する。 「捜索も任務の1つでしょうが、今警戒しているのは他国からの侵入者の方でしょう。ルエルは悪人でしたが、ある一面では優れた為政者でもありました。特にこの国の王は奴にかなり依存していたと聞きます。お陰で内政はガタガタ、あらゆる悪影響が今この国を襲っている様です。しかもあの状況を各地に放映していたのですから、他国も今が責め時だとどこも思うでしょう」 その言葉が本当ならルエルがほぼ1人で国を回していた事になるのでは?  と、考えたレイだったが、街の様子を見る限りその予想はどうやら当たりのようである。  1ヶ月前よりも市民の活気が無く、品物の値上がりや品切れ等も多数目に付く。  貿易や経済にまで影響が及んでいるとなれば、ルエルの影響は計り知れなかったのかもしれない。  敵ながらそこだけは賞賛に値すると、思わなくもなかったが、それにしても。「たった1人が居なくなるだけで機能しなくなるなんて、ズィーア大陸随
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-21
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旅の行き先

 馬車の移動は徒歩よりも速いとはいえ、時間が掛かる物である。  それが離れた距離への移動となれば尚更だ。  ただでさえ広大なズィーア大陸の、更に最大の国であるセストリアである。  隣の大きな街に着くまでも中々の時間を要し、到着した時には日も傾きかけた頃であった。 本日の目的地という事でここで1泊する為、宿屋を探す4人。  宿を見つけた先で部屋割りについて大激論が繰り広げられたのだが、それはまた別の話。  今は入浴と食事を済ませ、今後の話をする為ニイルの部屋へと集まっていた。「んもう、何時まで拗ねてるのフィオ。ニイルも断ってたんだから、どの道無理だったのよ」  ベッドの中で布団に包まるフィオを、宥める様にレイが言う。  フィオが宿屋到着時、全員一緒の相部屋、特にニイルと一緒に寝ると言い出し、論争の火種を生んだ張本人であった。  レイの猛反発、そしてニイルもレイに賛同した事から、女性3人とニイルの合計2部屋を取る事になり終結したのだが。「ぐすん……お兄ちゃんと寝たかった……4人全員で同じベッドで寝たかった……」 「流石にそれは狭くて無理でしょう……」  という風に、フィオがいじけてしまったのである。  4人で食事をする際も元気が無く、ニイルの部屋に集まっても、ニイルが寝る予定のベッドから出て来ない有様。  流石のレイも少しだけ可哀想に思い、何とか宥めようしているのだが、全て失敗に終わり今に至る。「しょうがないでしょう?男女が一緒の部屋で寝泊まりなんて、恥ずかしくて出来る訳無いじゃない。1つ屋根の下はまだしも、同じ部屋は流石に許容出来ません」 「アタシは恥ずかしくないもん……いつも一緒に寝てるし、それにレイやお姉ちゃん、皆と仲良く寝れると思ってたのに……」 「私達は一緒なんだからそれで我慢しなさい?今日は流石に急過ぎるわ……」 かれこれ2年以上一緒に居て、厳しくも優しく導いてくれるニイル。  自分でもチョロいと思いつつも、ニイルに対し特別な感情を抱いてしまうのは、年頃の女の子では仕方の無い事だった。  ようやく最近になり自分の気持ちを自覚しただけに、まだ感情を制御し切れていないレイ。  恥ずかしさの余りしりすぼみになり、最後は殆ど聞こえない位の声で言ったのだが。  しかしフィオはそれを聞き逃さなかった。「今日は急って何!?急
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-22
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欲に爛れた夢の街

 翌朝、案の定余り収穫の無かった買い物を済ませ出立する4人。  そこから更に10日掛けて移動し、遂にデレンティア連邦国へと辿り着いた。 今日は一先ずデレンティア連邦の玄関口であるこの街に滞在し、情報収集しつつ明日に備える形となった。  時刻は昼を少し過ぎた頃、丁度良いので軽く昼食を取りつつ散策しようという事で4人は移動する。「セストリアに比べて市場が賑わっているわね。あの国より国土は少ない筈なのに、やっぱり内政の差かしら?」 「本来のセストリアならば比べるべくもないでしょうが、現状あの国はかなり衰退していましたからね。それに引き換えこちらはデレンティアの玄関口、確かにここは栄えているでしょうが、国全体で見ると他の街が栄えているかは分かりませんよ」 このデレンティア連邦は、かつて様々な国が集まって出来たという成り立ちがある。  それ故各街を治める者がそれぞれ存在し、その一つ一つに違ったルールや法律が存在する。  隣町が全く違った様相を呈している、なんて事もざらなのだそうだ。「ふ〜ん、それじゃあ貧富の差とか生まれそうなものだけれど。それで戦争とかにならないのかしら?」  レイが疑問を口にする。  レイは幼い頃、少しだけではあるが帝王学を学んでいた事も有り、国の運営についても一般市民より詳しい。  しかしそれもかなり幼少の頃の数年しか学んでおらず、またエレナートは王国だった為連邦国とは毛色が違う。  だからこそ目新しさから来る質問でもあった。「そこはひとつの国として援助したりされたりが有るんでしょう。私も詳しい事は分かりませんが、どんなものにもメリット、デメリットが存在するのですから、この国の在り方も悪くないんじゃないでしょうかね?」 ニイルはそう答え、そもそも帝王学や内政の事は貴女の方が詳しいんですからね、と苦笑するのだった。 軽く昼食を済まし、市場で買い物を済ませた後、彼らが向かったのはギルドであった。  全国共通の存在である冒険者が集まるギルドは、夜の酒場と並び様々な、かつ一般的な噂や情報が流れ着く場所である。  詳しい話になると情報屋で金を払う必要が有るが、そこまで必要としないのであれば、無料で情報が手に入る中々良い場所なのである。  ギルドに到着後4人はそれぞれ受付嬢や、中に居た冒険者等から話を聞き、夜には酒場へ移動し、また
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-07-23
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