「大昔、アタシ達がまだ子供だった頃、アタシ達はとある孤児院で育ったの」 フィオは静かに、そう語り出した。 その横顔をレイは眺め続ける。「その頃は今のアタシ達3人以外にも沢山の家族が居てね。見ての通りアタシ達は血の繋がりも無くて、種族すらバラバラだったけど、それでも皆仲良く暮らしてたんだ」 それでようやく合点がいったレイ。 何故ニイルや獣人族のランシュを、森人族のフィオが兄妹と呼ぶのか。 それは過去に、家族として本当に過ごしていたからなのだと。「その時は知らなかったんだけどね。実はそこは色んな所から様々な事情を持った子供達が集められた場所だったの。私もとある理由からそこに預けられて育った」 その言葉にレイは思い当たる点があった。 全く喋らないランシュや、本来森人族では産まれない筈の赤髪を持つフィオ。 そういった何かしらの事情を持つ子供達で、その孤児院は構成されていたのだろう。「アタシより歳下の子が居なかったから、必然的にアタシが1番下の妹でね。当時は塞ぎ込んでいたアタシも、皆のお陰で元気になる事が出来たんだ」 遥か遠い過去に思いを馳せる様な、そんな目をしながら夜景を見続けるフィオ。 しかしその表情には笑みが浮かんでいた。「その時には当然ニイルも居てね。もちろん他のお兄ちゃんも居たんだけどそれでも1番優しくしてくれたんだ!だから家族の中で1番お兄ちゃんが好きなの!」 それにほんの少し頬を染めながらそう語るフィオ。 その表情を見れば誰でも、その感情が家族愛以上の物であると気付くだろう。「でもお兄ちゃん、その孤児院に来た当初は誰にも心を開いてなくて、今以上の冷たい考えを持ってたって皆が言ってたんだよ。当時は信じられなかったけどね。詳しくは知らないけど、それだけお兄ちゃんも辛い過去があったんだと思う」 それに驚きに目を見開くレイ。 現在ニイルが持つ思想の原点が、まさか幼い時からのものだったとは、流石に予想がつかなかった。 だからこそ、あれだけの確固たる意思を持って言えたのだと、今なら分かる。「でもアタシが来た時には全然そんな事無くて。家族の中で誰よりも家族を大事にしてた。そんな優しいお兄ちゃんだったから……」 そうして悲しげに目を伏せ、一呼
Last Updated : 2025-08-13 Read more