「で、辻川ひまわりは何て言ってた?」 鞠野フスキは公園で辻川ひまわりに会ったことを話していないのに、いきなり核心に触れてきたので驚いた。やはりミユキ母さんが指導教官に選ぶくらいだから、いい加減そうに見えて押さえるべきことは押さえる人なのかもしれない。それであたしは辻川ひまわりが言ったことを鞠野フスキに伝えた。・辻沢には何者かによって人柱が埋め込まれていて、それをブッコ抜かねば大変なことになる。・人柱は複数あるようだけれども、今のところは一つだけ場所が分かっている。・ブッコ抜く方法どころか、ブッコ抜けるかすら分からないから行って確かめるしかない。「辻川ひまわりはどうやって人柱の存在を知ったか言ってたかい?」 あたしもそのことを公園で聞いてみた。すると辻川ひまわりは虚空をにらみつけ、「自分でもどうしてか分からないけど、ウチはこうやって目をこらすと空間に隙間があるのが分かってね。その中を覗くとぼんやりと何かがあるのが見える。で、それは多分人柱なんだ」 と話してくれたのだった。どうしてそれが人柱だと思うのか気になったので聞くと、「理由なんかないよ。そうとしか言えないだけ」 ならばそれはそういうこととして、「なんでそれをブッコ抜かねばいけなんです?」「そんな気がする。でも、この直感は当たってるっぽい」 と笑顔で応えたのだった。「そうか。じゃあ、分かっている場所というのも?」「それははっきりと言ってました。雄蛇ヶ池だそうです」 雄蛇ヶ池というのは青墓の杜の北に広がる貯水池で、江戸時代より前に作られ、以後干ばつでも干上がることがなかったことから、辻沢を取り巻く名曳川や虎御前川とはまったく異なった水源を持っていると言われている(『辻沢ノート』より)。「それで雄蛇ヶ池へ行くことになったのですが、辻川ひまわりは明日の夕方過ぎじゃないと同行できないって言ってました」 と伝えると、鞠野フスキは、「そうか、なら我々だけで昼のうちに前調査しておこうか」 情報なんにもなしでどうやって調べるのだろう。すると冬凪が、「何に見当付ければいいんでしょ
Last Updated : 2025-08-07 Read more