話があっちの方向にずれたクロエちゃんは、「何だっけ?」「コミヤミユウには生きていたことを忘れない、つまり普通じゃない家族がいるって」冬凪が話のアシストをする。「そうそう。それあたしたちのこと」は? サラッと言ったけど。「フジミユと双子の姉妹」「随分前に亡くなったお姉さんって?」庭でマリーゴールドが風に撫でられて気分良さそうに揺れていた。「あ、それはマリって子だけどあたしはよく知らない。ミヤミユは小さい時にフジミユと生き別れてユウと一緒に育った。苗字もコミヤ」そんな人がいたならなんであたしに教えてくれなかったんだろう。そう思ったのが顔に出てたんだと思う。クロエちゃんが、「ごめんね。夏波にこのこと話すには、鬼子って教えなきゃだったから」と申し訳なさそうに言ってくれた。「で、ここからが本題なんだけど」 とクロエちゃんは改まった様子で言ってから「鬼子が忘れられるのって前に生きた人生の影響を受けないためって言われてるんだよね」 前に生きた人生? それじゃあ、次の人生があるみたい。人生は一回切り。だから面白いって配信ドラマか何かで言ってなかったっけ?「前世ってこと?」「まあ、簡単に言うと、そう。鬼子って何度も生き直すっぽい。知らんけど」(死語構文) 真剣な話の時は使っちゃいけないんだよ。死語構文まじむずい。クロエちゃんはそんなことお構いなしに話を続ける。「で、夏波の前世はコミヤミユウなんだよね」 って言われてもピンとこない。だって知らない人だもの。単刀直入すぎて感情も置いてきぼりだし。「あんまり感動ないみたい」 しばらくあたしの表情を見ていたけれど急にソファーに座ってジタバタし出した。「ほら言ったじゃん。そんなこと夏波の人生に何の関係もないって」 きっとミユキ母さんに言いたいんだと思うけども。 しばらく落ち込んだ風だったクロエちゃんは、時計を見ると、「時間だ。出かけるよ」 と言って立ち上がった。夕方の5時を回ったところだった。「ど
Last Updated : 2025-09-13 Read more