All Chapters of ボクらは庭師になりたかった~鬼子の女子高生が未来の神話になるとか草生える(死語構文): Chapter 221 - Chapter 222

222 Chapters

2-70.鬼子とヒダル(2/3)

 冬凪が草陰の怪しげな姿を指して、「あの人知ってる」言った。向こうもそれに気づいて大きな木の後ろに隠れたけれど、あたしにもその顔がハッキリと分かるくらい緩慢な動作だった。まるで見られても平気と言っているよう。「誰なの?」そっちをじっと見つめる冬凪に聞いた。「知り合い。以前は鬼子だった人。あの人はずいぶん前にヒダルに取り憑かれてしまった」クロエちゃんがさらに付けてして、「きっと宿主の体がそろそろ死ぬから次の体を探しているんだよ」クロエちゃんは山道を歩きながら鬼子とヒダルの関係を話してくれた。行旅死亡人の残留思念と言われるヒダルは、他人の魂を吸い取って体を乗っ取り、その人に成り代わる人外だ。それに対し鬼子の魂は、舟にのる人のように体から体を乗り変えて前世、現世、来世と生まれ変わってゆく。それは鬼子の体が魂の入れ物を意味するけど、ヒダルにしてみれば乗っ取りやすい存在となって鬼子に群がるらしい。これまで多くの鬼子がヒダルに体を乗っ取られてきたため、鬼子の最後はヒダルと諦めてしまっている人までいるそう。「そんなことないのに」クロエちゃんは寂しそうに言った。四ツ辻に着いたのは8時を回ったところだった。「ここも結界になっててね」あたしもそれはなんとなく感じた。集落に入った途端に木の芽の香りを感じたからだった。それは山椒農家の集落だからというだけではない気がした。冬凪があたしの手を引いて、「こっちだよ」と案内をしてくれる。いつになく楽しそうだ。ここは冬凪が夏休み前に山椒摘みのボランティアで来た場所で、前から仲良くしてもらっている紫子さんがいる。その紫子さんの家に向っているからだろう。 坂の上の大きな茅葺き屋根の家の玄関先で冬凪が、「紫子さーん。夏波連れて来たよー!」 めっちゃ大きな声で叫んだ。すると奥から出てきたのは藤色の和服姿の女性で、びっくりするくらい綺麗な、というかこの人……。あたしが声が出なくて黙っていると、冬凪が、「分かった? そうだよ。この人が」 まで言ったのを、その和装の女性
last updateLast Updated : 2025-09-16
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2-71.薬指の約束(1/3)

 紫子さんは親戚に接するようにあたしを迎えてくれた。玄関の中は広めの土間になっていて、御座に緑の粒が山のように積んである。それが10いくつ。強い山椒の香りを放っていた。「クロエちゃんは何年振りになる?」「うーんと」覚えてなさそう。「上がって」「「「お邪魔します」」」座敷にあがらせてもらった。山椒農家ってどこもそうなのか、蘇芳ナナミさんの家と作りが同じだった。だだっ広い座敷に囲炉裏、天井にはぶっとい梁が渡してある。その上はやっぱり暗闇。 紫子さんが、「クロエちゃんが来ること皆に知らせたら今朝釣ったアマゴを持って来てくれた人がいてね。それ塩焼きにしたから食べて」 そういえばメッチャいい匂いしてる。思い出したように食欲が反応して冬凪とあたしのお腹が合唱を始めた。「そんなに?」言ってるクロエちゃんのお腹も鳴ってるから。「アマゴって清流の女王と言われててすごく貴重でとっても美味しいんだよ」冬凪が教えてくれた。配膳のお手伝いをしながらも我慢出来なくなってよだれたれそうになった。「「「いただきます」」」生まれて初めて食べるアマゴは、「ぜっふぃん(絶品)」どころではなかった。ホクホクの身にちょうどよい塩加減。これまで食べたお魚の中で一番、いや、生涯かけてこれ以上のお魚は食べられないんじゃないかってくらい美味しかった。大袈裟でなく。それと山椒粒の佃煮掛けた白飯。合いすぎて、死ぬ。たらふく食った。眠くなったけど初めて来たお宅で昼寝はまずいと思って我慢した。「あれ見せてあげたら?」 紫子さんがクロエちゃんに言った。「そうだね。もう知ってることだし。ね、夏波」ね、とはよ。あたしは冬凪に何のことかと目で確認したけれど、冬凪にも分からないようだった。「じゃあ、見に行こう。夏波の変態っぷりを」廊下を歩きながらクロエちゃんが前世のあたしは変態だったと言った。「おかげであたし達は地獄に行くことができたんだけどね」言ってる意味が全く分からなかった。「ここがその変態が
last updateLast Updated : 2025-09-17
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