鈴風とあたしはバスの揺れを感じ窓外を流れる街並みを眺めながら六道園プロジェクトのことを話していた。すると、 「最近、女子の間で血ぃ出すやつ流行ってんじゃん」 後ろのほうから声が聞こえて来た。振り向いて見ると、さっきまで空いていた席に三人の女子高生が座っていた。三人ともガルル育成高校で名高い成実(なるみ)工業女子の制服をレトロな感じで着ている。何故だかあたしは彼女たちから目が離せなくなった。 「瀉血な。リスカっぽいやつ」 リスカってもはや死語構文。 「そう、それ。あれって実はヤオマンの女怪がやらせてるらしいよ」 「は? なわけねーしょ。ヤオマンの会長は辻沢のヒーローだし」 「だしょ。それがさ、本当はヴァンパイアで若い子の血を欲しがってるって」 「はあ? それはツリだわ」 ツリ? 嘘ってことかな。 「いや、マジでマジで」 「ツリツリ。そんなでっけー釣り針、ウチ引っかかんねーから」 「ツリじゃねーて」 「てか、ミノリ。ほっぺのホクロからぶっとい毛ぇ生えてっから」 「マジで? ヤバ。そんなギャルありえんって。カエラ、鏡貸して」 そうギャルだよ。この子たちのファッションもギャルファッションだ。世代ならガルルって言う……。 「はいよー、鏡。それ、死んだ親友のためらしいよ」 「ありがと、あ? カエラなんて言った? アイリどこよ、どこに生えてんの?」 「うっそー。だまされてんのー」 「こんの。テメ、コロス」 「テメーが、クソねたブッ込むからだろ!」 あーあ、猫パンチ合戦始めちゃった。 「今の見た?」 鈴風に振り返ると、見ていなかったようでさっき話していた時のままの笑顔で外を見ていた。あたしもその視線を追って窓の外を見るとやけに無表情な景色が流れていた。バスの中の音も遠くのほうから聞こえてくるようで、まるであたしだけが別の空間にずれてしまったような感じがした。 〈♪ゴリゴリーン 間もなく辻沢駅、終点です。お降りの際は、来し方を振り返りませんようお願いします。辻バスをご利用いただき、ありがとうございました〉 バスが駅のロータリーを旋回しはじめた。その時になってようやく他のお客さんのざわざわ声が近くに聞こえて来た。 「夏波センパイ、降りますよ」 鈴風が出口に向か
Last Updated : 2025-07-15 Read more