小夜がグループ本社へ顔を出していないあいだは、雅臣が代わりに陣頭指揮を執っていた。 役員会議の場では、岸本隆栄が再び若葉のAI自動化開発計画書を持ち出した。そこに記載されている開発チームは、以前とはすっかり顔ぶれが変わっていた。実現性はかなり高く、もはやプロジェクトの立ち上げを認める条件は十分に揃っているように見えた。 だが、小夜は大株主でもある実質的なトップの一人だ。しかも雅臣は、小夜と若葉の確執がどれほど深いかもよく知っている。 だから雅臣は、その場で独断では決めなかった。 会議の合間に、直接小夜へ連絡を入れた。 最終的な判断を、彼女に委ねるためだった。 小夜は黙って話を聞き、送られてきた計画書の詳細にも目を通した。たしかに今回は、以前のものよりはるかに完成度が高い。とくに新しい開発チームの経歴は強力だ。過去の実績を見ても、自動化分野ですでにかなりの成功を収めている。 実現の見込みは十分に高い。 しかも小夜は知っている。表向きには見えないが、この有能な開発チームを裏で実際に引き入れたのは青山だ。海外で長く研究を続けてきた青山の、太い人脈と資金力が物を言っている。 この計画書そのものに、何ら問題はない。 経営陣として断る理由はどこにもなかった。 ここでまた突っぱねれば、小夜のほうが「私怨で会社の利益を損なう人間」になってしまう。ただの個人的な遺恨でプロジェクトを妨害していると見られても仕方がない。 もっとも、今回は最初から断るつもりなどなかった。 若葉がそこまで必死になっているのなら、どうして止める必要があるのか。むしろ気持ちよく通してやればいい。いい気になってAI自動化開発に乗り出させ、その先で、若葉がこれほど労力をかけ、危ない橋まで渡って青山と組み、どうしても立ち上げにこだわる真の理由を見定めればいい。 これまでの若葉のやり口を知っていれば、真っ当なビジネスであるはずがないことだけは間違いない。 いつまでも「泥棒」を見張り続けるような、神経をすり減らす真似はしていられなかった。 長谷川家と圭介とコルシオ、あの化け物たちの謀略に決着がつく前に、小夜は先に若葉と相沢家との因縁にけりをつけるつもりだった。そして、そのまま早いうちにすべてから身を引く。 今は若葉のほうが焦って、自ら罠の穴へ飛び込ん
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