目の前にいる秀綾《シュウリン》は、背が高く細身で、目と同じ淡い朱色の髪を乱していた。 「お願い!中に入れて!話があるの!」 秀綾は更に目を赤くして、蘭瑛《ランイン》に尋ねる。 蘭瑛は永憐《ヨンリェン》に言われた事を思い出すが、「ど、どうぞ…」と言って、秀綾を部屋の中に入れた。 「突然尋ねてごめんなさい。あなたにどうしても伝えたいことがあって…」 蘭瑛は秀綾を使っていた椅子に座らせ、六華鳳宗から持ってきた白茶を淹れた。秀綾は息を整え、話し始める。 「あなたの命が危ないの。梓林《ズーリン》があなたを殺そうとしてる」 眉間に皺を寄せた蘭瑛は「ズーリン?」と尋ねながら、白茶の入った茶杯を秀綾の前に置いた。 「そう、あなたがこないだ手首を捻ってたあの人。あ、ありがとう」 秀綾はそう言って、茶杯を手に取った。 一口口に含んだ後、秀綾はひと息ついて、また続ける。 「梓林は、光華妃《コウファヒ》と繋がっていて…」 「ちょ、ちょっと待って。光華妃って誰?」 蘭瑛は、手を前に出しながら秀綾の話を遮り、知らない宋長安の妃について尋ねた。 秀綾は、何も聞いてないの?と言わんばかりに、相関図のようなものを紙に書き始める。 「いい?この二人は服従関係にある。これまでも、たくさんの人を追放したり、消したりしている。今回の皇太子殿下の件も光華妃の謀反。皇太后の他にも妃は二人いて、朱源陽《しゅうげんよう》から来た美朱妃《ミンシュウヒ》と、青鸞州《せいらんしゅう》から来た雹華妃《ヒョウカヒ》がいる。賢耀殿下の母君、元皇后の紫秞妃《シユヒ》は三年前に亡くなっていて、今は光華妃とその息子の光明《コウミン》殿下が偉そうに立ち回ってる」 「はぁ…」 (色々と複雑そうだな…) 秀綾の説明を聞いた後、蘭瑛の頭の中にふと永憐と賢耀の二人の姿が浮かんだ。立場を超えて、互いの名を『耀《ヤオ》』と『永憐《ヨンリェン》兄様』と呼び合うほど親しい仲なのは、ただ単に仲が良いからではなく、この宮殿に潜む蜘蛛の巣のように張り巡らされた無数の手から賢耀を守り、関係性を世間に知らしめる為なのだろう。時々、賢耀が幼さを見せるのも、母親の死が影響しているに違いないと蘭瑛は思った。 そのあとも、秀綾から光華妃の狡猾で尊大な醜悪を聞かされ、蘭瑛は複雑な宋長安の人間関係を少しだけ知った気がした。 蘭瑛
Terakhir Diperbarui : 2025-07-02 Baca selengkapnya