「それじゃ皿洗いでもしてもらうか。出来るか?」ユウは心配そうな表情で言った。王女に皿洗いをさせて良いのか、そもそも皿洗いが出来るのか、という不安が入り混じっていた。「頑張ってみます!」とエリーは自信に満ちた表情で答えた。 私が皿洗い……かぁ。王城でお皿を洗ったら、周りが驚いて慌てる姿が思い浮かび、きっと見た人は卒倒するだろうなぁ……と思い、おかしくて笑ってしまう。 しばらくすると、エリーのいる場所から声と音が聞こえてきた。 …………「きゃっ!」パリンッ!! …………「ひゃっ!!」パリンッ!!「あぁ……もう……。ううぅ……ぐぅすんっ……」と、泣き声も聞こえてきた。 結果、昼食で使った皿がすべて割れてなくなってしまった。木のお椀は無事だったので食事には困らないが、焼いた肉は森で採れる木の葉に乗せることになるだろう。 開始数分で数枚の皿を手を滑らせて割ってしまい、「ごめんなさい……」と、完全に自信を喪失した表情に変わっていた。 まあ、想定内のことだ。「ケガが無くてよかったな。そんなに落ち込まなくても良いんだぞ」これは本心だ。ケガをされたら俺が動揺してしまう。 ユウも打ち解けてきたのか、口調が変わってきたが本人に自覚はない。しかし、エリーはその変化に気づいた。 エリーは、腹の探り合いが行われる環境で生まれ育ち、常に最前線で戦ってきたため、無意識に相手の表情や仕草、口調などを探る癖、つまり防衛本能が働いてしまうのだ。 そのことに気づいたエリーは、心が温かくなり、嬉しさが込み上げてニヤけてしまった。 家事を積極的に手伝うようになっていたエリーを見ていると、髪が短くなったといってもセミロングなので、まだ邪魔そうに見えた。 さらに家事を手伝ってくれるので、俺にも時間の余裕ができた。 手作業をしていると、気になってチラチラと見ていたエリーが近づいてきて、「何を作ってるんですか?」と覗いてきた。 サプライズで渡したかったので隠して、「まだ秘密だ」とエリーを見てニコッと笑った。 エリーは俺の返答に、不満そうな表情をした。「秘密ですか……」俺の答えを復唱し、ムスッと頬を膨らませた。いつもなら、ここで終わるのだが。「そうだ、秘密だ」俺も同じことを言った。「私に秘密ですか。そうですか……」いつもとは違い、食い下がってきた。 あれ? 珍しく食い下
Dernière mise à jour : 2025-06-27 Read More