美穂は一拍置いて、きっぱりと言った。「でも、芽衣が私を害するなんて絶対にあり得ない。彼女の人柄はよく知ってる。人を裏切るようなタイプじゃない」峯は皮をむき終えたリンゴを小さく切り、果物皿に入れて彼女の前にそっと置いた。「お前が彼女を信じてるのは分かってる。でも今は特殊な状況だ。可能性は全部潰していかないと」美穂はリンゴを一切れ手に取り、小さくかじりながら、考え込むように言った。「芽衣はいつも家でお菓子を作って、保温ボックスに入れて会社に持ってくるの。昼休みに私に届けてくれて、自分の分も取っておいて午後のおやつにしてる。もし問題があったら、彼女が無事なはずがない」「じゃあ途中で誰かが細工したってことか?」峯が眉を上げる。「例えば会社に置いてる間とか?」「私もそう思う」美穂はうなずく。「問題は別のところにある。もしかしたら……芽衣の手を借りただけで――」そこまで話した時、病室のドアが押し開けられた。芽衣が、深樹を連れて入ってくる。美穂が目を覚ましているのを見るや、芽衣の目が赤くなった。慌ててベッドのそばへ駆け寄る。「美穂、大丈夫?本当にごめんね、私のせいで――」美穂は手を上げて芽衣を遮った。「芽衣のせいじゃない。座って」芽衣の後ろに立つ深樹にちらりと視線をやる。軽くうなずいて、挨拶代わりにする。深樹もその淡々とした態度に気づき、子犬のような目をしょんぼりと目を伏せた。小さな声で呼ぶ。「……水村さん」美穂の声はまだ少しかすれている。「どうして来たの?」芽衣は涙をぬぐいながら説明する。「ちゃんと説明しようと思って来たの。それで会社で深樹くんに会って……入院したって聞いて、どうしても来るって」そう言いながらティッシュを差し出す。早口で、必死に続ける。「心配しないで。あのお菓子、本当に問題ないの。私もいっぱい食べたけど、何ともないから」「分かってる」美穂はやさしく言った。「芽衣を疑ってないわ」二人が話していると――ふいに峯が口を開いた。軽薄そうな笑みを浮かべながら、深樹を値踏みするように眺める。「お前が陸川深樹か」名前だけは以前美穂から聞いていたが、実物を見るのは初めてだ。青年の無垢で人畜無害そうな雰囲気は、噂とは少し違って見えた。深樹は視線を受けてもひるまない。軽く頭を下げる。「はじめまして。よろしく
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