父である武彦の件は未解決のまま、会社は危機に瀕しており、礼央の冷たい態度に、留美は打ちのめされていた。留美がぼんやりと顔を上げると、涙でぼやけた視界の中に、淡い笑みを浮かべた男が見えた。男は端正なスーツに身を包んで、背筋を伸ばし、穏やかな雰囲気を漂わせながらも、底知れぬ鋭さを秘めていた。留美は彼を知っていた――山口宗一郎。バンガードテクノロジーの社長で、礼央と並ぶ若き実業家の一人であり、山口家の後継者だ。孤立無援だと感じたまさにその時、力強い手が留美の前に差し出された。「林さん、地面に座ると冷えるよ」宗一郎は優しい声で言った。「乗り越えられない試練などないからね」宗一郎は留美に手を差し伸べ、支えてやった。留美は立ち上がったものの、全身の力が抜けたように、かろうじて立てている状態だった。宗一郎はハンカチを差し出し、留美の腫れた目元に視線を走らると、静かに言った。「お父様のこと、耳にしたよ。お父様は今まで、国のために大きな功績を残してきた。きっと潔白が証明されるから、心配する必要はないよ」宗一郎の温かい声や言葉が、留美の心を鎮めた。留美はハンカチを受け取り、涙を拭って深く息を吸い、宗一郎を見上げて言った。「山口社長……ありがとうございます」宗一郎は軽く頷き、穏やかな笑顔で言った。「どういたしまして」「林さん、差し支えなければお父様と会えるかな?私に何かできることがあるかもしれないし」留美の心が動いた。山口家の力は絶大で、宗一郎自身も優秀な人物だ。彼が助力してくれれば、父の件に転機が訪れるかもしれない。留美は迷わず頷いた。「ええ、ご案内します」-武彦に関する取り調べは一旦停止されていたが、彼は完全に自由ではなく、あくまで観察段階にあった。彼の顔色はやや青白かったが、眉間に宿る威厳や長年培われた風格は衰えていなかった。武彦は、留美が宗一郎を連れて来るのを見て驚いたが、すぐに平静を取り戻した。「山口社長、これはこれは、珍しい来客です」武彦はベッドにもたれかかり、無感情な、平然とした口調で話した。宗一郎は軽く会釈し、礼儀正しく言った。「武彦さん、突然訪問してしまいすみません。体調が優れないと伺い、お見舞いに参りました」宗一郎は一呼吸置き、鋭い視線で武彦を見た。「また、バンガードテクノ
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