礼央は漆黒の瞳で静かに真衣を見つめた。彼はベッドに横たわる千咲を一瞥した。すぐに視線をそらした。彼の声は重く、淡々としていた。「ついて来い」礼央からは何の感情も読み取れなかった。真衣は眉をひそめた。礼央が大股で去っていく後ろ姿を見て、彼女もついて行った。それは真衣と話したいという、礼央の意思表示でもあった。礼央は彼女を休憩室に連れて行った。真衣は休憩室をくまなく見回した。休憩室の内装はシンプルで、上質な雰囲気だ。彼がよく利用する場所のように見えた。礼央はソファに座り、真衣にも座るよう促した。テーブルには多くの料理が並んでいた。真衣は眉をひそめ、礼央の真意がわからなかった。礼央は彼女を見て、淡々と言った。「まずご飯を食べよう」彼女は俯き、テーブルの料理を見た。ほとんどが彼女の好物ばかりだ。千咲のことを心配していた真衣は、確かに食事をとっていなかった。今この時、真衣は自分が好きな料理が並んでいるのを見ていたが。彼女には食欲がなかった。「あなたが準備させたの?」真衣は礼央を見上げ、彼の無表情な顔から感情を読み取ろうとした。「お腹は空いてないのか?」真衣の質問には答えなかった。真衣は表情を変えずに手に力を込めた。「食欲がないの」真衣は礼央を凝視し、淡々とした口調で言った。一緒に食事をする気分ではなかった。彼女の心は重く沈んでいた。恐らくほとんどのことが、彼女には理解できていない。最初から知らされていないことばかりだ。千咲が危険な目に遭い、真衣はすっかり慌てふためいた。今では警察も調査を始めているが、真衣の心には理由もなく不安が募り、どうしても気が抜けない。「あなたが言ってた『高瀬クリニックの方が安全だから』はどういう意味?」礼央は足を組み、冷たい瞳を向けた。「文字通りの意味だ」真衣はさらに眉をひそめ、「言葉遊びはやめて、はっきり説明して」と迫った。彼は真衣をじっと見つめ、ゆっくりと口を開いた。「俺の言葉、きちんと聞いてたか?」真衣は聞き返した。「どの言葉?」礼央の質問は毎回曖昧で、意味不明だわ。どう理解すればいいって言うのよ?約6年の結婚生活の中で、二人の会話は決して多くなかった。礼央は静かに真衣を見つめた。その視線に真衣は
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