火葬の日にも来なかった夫、転生した私を追いかける のすべてのチャプター: チャプター 391 - チャプター 400

527 チャプター

第391話

「弁護士なら紹介できるわ。何でも相談に乗るからね」「離婚できないわけじゃないの。ただ景司と離婚するのは少し面倒なことがあってね」慧美は頭痛がし、こめかみを少し揉んだ。慧美は深呼吸をしてから言った。「結婚してからもうこんなに長い年月が経ったから、財産分与がとても複雑でね。もう裁判所に提訴しているけどね」慧美は、真衣が最近食事の時間すら取れないほど忙しくてしていることを知っている。彼女は真衣にずっと迷惑をかけたくなかった。真衣は礼央との婚姻問題を片付けたばかりなのに、今度は慧美の婚姻問題に巻き込まれてしまった。慧美は口を開いた。「離婚の件は私自身で対処できるわ。どうしても決めかねることがあったら、またあなたに相談するから」「お母さん、帰ったら弁護士の連絡先を送るね。こんなことはさっさと片付けましょ」「一日延びれば、それだけ災いも増えるから」真衣はその後も慧美としばらく話していた。ちょうど千咲のお迎えの時間になり、真衣は幼稚園へと向かった。すると、幼稚園で萌寧に出くわした。萌寧は全身黒づくめでサングラスをかけていて、バイクに乗って門の前にいた。多くの園児たちの注目を集めていた。子供たちはこういうカッコいいものが大好きなのだ。翔太が出てきて、かっこいい姿をした萌寧を見るなり、目を輝かせて、嬉しそうに飛びついていった。「高瀬夫人、息子さんのお迎えですか?」ある保護者が萌寧に声をかけた。萌寧はよく翔太に会いに来ていたので、次第にみんなから彼女が翔太の母親だと思われるようになっていた。萌寧はサングラスを外し、軽く微笑んだだけで何も言わなかった。「高瀬夫人、ちょっとお聞きしたいのですが……噂であなたの娘さんは高瀬家の血筋を引いていないとありましたが?」ある保護者が切り込んだ。萌寧は一瞬固まり、横にいる真衣を一瞥すると、口元を歪めて言った。「全部根も葉もない噂ですよ」千咲が幼稚園から出てきた時、ちょうどこれらの話を耳にした。彼女は眉をひそめ、真衣の方を見た。真衣は千咲の手を取って、車の方へと向かった。萌寧は翔太をバイクに座らせた。彼女はバイクを走らせて真衣の車の横まで来た。「噂は広まっているのに、あなたは説明したくないの?」萌寧は口元を歪めて彼女を見た。心配しているように見
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第392話

萌寧は、礼央が真衣にとっての足枷であることをよく理解していた。本当に真衣にやる気があるなら、とっくに強気なことを言ってるはずだわ。今さらになって強がっちゃって。本当に我慢の限界に達したからこそ、ようやく自分に警告を与え始めたに過ぎないわ。とはいえ、ただの口先だけの脅しだけどね。萌寧は真衣の言葉など全く気に留めなかった。真衣には元から萌寧をどうこうする能力などないからだ。そう言い終えると、萌寧は真衣を舐め回すように見下ろし、鼻で笑うと、バイクに乗って翔太とその場から離れていった。千咲は萌寧の去っていく姿を見つめ、軽く眉をひそめた。真衣は目を伏せ、千咲の頭を撫でながら言った。「これからあの人たちが何を言おうと、聞き流して、信じないでね」千咲は真衣の言葉を聞き、パチパチとまばたきをした。理解できなくても、素直にうなずいた。千咲がこれらの噂を知ったら傷つかないか、真衣は心配でたまらなかった。真衣は深く息を吐き、それ以上何も言わなかった。-安浩はチームメンバーを引き連れて、テスト飛行のため、砂漠に向かっていた。最近は真衣ひとりで会社を切り盛りしていて、雑務から全体の管理までしっかりこなしていた。安浩と過ごす日々の中で、彼女は少しずつ経営のノウハウを身につけていった。社員たちは彼女の指示に素直に従っていた。ハイテク分野の人材は、常に自分より優れた相手にしか従わないものだ。昼過ぎ、真衣は富子からの電話を受けた。「真衣、最近忙しいの?」富子は定期的に電話をかけてきて、彼女を気遣ってくれる。真衣もそれを意外に思わず、祖母の電話には慣れていた。真衣にとって、この世代の年長者はもう富子ただ一人だけになってしまった。真衣は富子との絆を特に大切にしており、二人で食事をする度に、幼い頃に戻ったように感じた。まるで富子がまだそばにいて、自分を見守ってくれているようだった。真衣はデータを見つめながら、富子に返事した。「大丈夫ですよ、それほど大変ではないです」「そうか――」富子は言った。「忙しすぎて休む時間もないかと心配していたのよ」真衣は少し目を上げた。「何かありましたか?」「大したことじゃないのよ」富子は笑った。「もうすぐ会社の創立記念日なの。これまではいつも真衣が色々とお祝いの企画してくれていた
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第393話

真衣はこの件に関しては、本当に関わりたくないようだ。富子の一方的な意思の前に、真衣はただ黙って従うしかなかった。真衣は手で軽く眉間を揉み、何も言わず、反応もしなかった。この沈黙に対し、富子は眉をひそめた。「真衣、あなたと礼央のことについて、私はいろいろと調べたわ」富子は優しく言った。「多くのことを私に話したくないのは、心配をかけたくないからでしょうけど、あなたが辛い思いをしているのを見ると、私も心が痛むのよ」「礼央が萌寧のために会社を立ち上げたことを、あなたも知っているのに教えてくれなかったよね。私はあなたが大きな屈辱を受けたことを知っているわ。もしその会社を取り戻したいなら、あなたにはその権利があるし、私も全力で応援するわ」そう告げられて、真衣は小さく息を吸い込んだ。礼央が萌寧のために会社を立ち上げたのは、もう真衣とは何の関係もない。二人はもう綺麗さっぱり離婚しているからだ。真衣もそれ以上追及したくなかった。今はやるべきことが山ほどあるからだ。真衣は本当にこんなくだらないことで足を引っ張られたくなかった。第五一一研究所の開発が初期段階で成功したら、真衣は政府に報告に行かなければならない。今後もかなり忙しくなる。少しでも問題があってはならないと思い、真衣は気を揉んでいる。彼女は深く息を吐いた。「大丈夫です、富子おばあさん。自分でしっかりと気持ちの整理はできていますので、もし辛いことがあったら必ず教えます」「では、会社の創立記念日のことはあなたに任せるわね。あなたは高瀬家の嫁だから、他の人に任せるのが心配なのよ」今年は高瀬グループの100周年記念だ。盛大に行う必要がある。電話を切ると、真衣はしばらく考え込んだ。前世では、真衣は多くの時間を費やし、たくさんの企画を練った。そして無事にお祝いパーティーも成功に終わった。ただ、終わった後に真衣は大病を患い、礼央は一度も見舞いに来ず、いつも仕事が忙しいと言い訳をしていた。彼女は報われない苦労をたくさんしてきた。今回も、前回と同じように準備すれば、苦労はしない。ただ――真衣は唇をきゅっと引き結んだ。真衣はすぐに礼央に電話をかけた。驚いたことに、彼はすぐに電話に出た。「何の用だ?」電話の向こうから、礼央の声は相変わらず冷たく
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第394話

慧美の声は焦りに満ちていた。普段ならどんな状況でも、慧美は冷静さを保てたはずだ。今こんなに焦っているということは、きっと重大なことが起こったに違いない。真衣は慧美の電話を切ると、足早に外へ向かった。角を曲がった瞬間、誰かとぶつかりそうになった。「すみません」真衣は慌てて謝り、急いでその場を離れた。「寺原さん?何かあったんですか?私にできることがあれば……」真衣はハッとして振り返ると、そこには総士が立っていた。「深沢先生?」藁にもすがる思いで、医者を見かけたら今の問題を解決してくれると真衣は思ったのかもしれない。彼女は簡潔に修司の病状を説明した。「ちょうど私の専門分野ですね。海外で新しい医療技術について研究してきたばかりなので、よろしければ同行させてください」真衣は拒まなかった。医は仁術なり。総士は真衣と共に病院に到着した。がんの痛みは耐えがたいものだ。痛みで血圧が急上昇すると、命の危険にさらされる。真衣が病院に着いた時、修司はちょうど救急室から出てきたところだった。慧美はびっしょりと冷や汗をかいており、全身がぐったりしていた。彼女はすっかり取り乱していた。「お母さん」真衣は慧美を抱きしめ、背中を優しくさすりながら慰めた。「もう大丈夫よ、大丈夫だから。修司おじさんは丈夫だから、きっと良くなるわ」真衣は慧美を慰めているのか、それとも自分自身を慰めているのか、彼女にはわからなかった。総士は彼女たちを見て、優しく声をかけた。「ご心配なく。海外ならこの病気はきちんとコントロールできるケースが多いです。ただ、特効薬や分子標的薬の一部は手に入りにくいのが現状なんです」慧美はその言葉を聞き、目に希望の光を宿らせた。「先生、本当に方法があるんですか?いくらお金がかかってもいいので、どうか彼を助けてください」総士は唇を軽く噛み、真衣を見て言った。「お母様と相談してみてください。決まったら、主治医を変えることもできますので」「ただし、このような決定は慎重に行うべきです。臨床的に主治医の変更は推奨されません。医師はすでにおじさまの病状を把握していますから、医師を変えると最初から病状を理解し直す必要があります」カルテはあるが、隅々まで確認する必要がある。「海外の治療法はどんなもので
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第395話

総士はコーヒーを一口飲んだ。「些細なことです、気にしないでください」「こちらが全ての資料です。送ることもできますので、お母様とよくご相談された後に、また連絡をください」「この治療プランでしばらく時間を稼ぎ、臓器提供を待つことができます」真衣は頷いた。「では、連絡先を教えますので、ぜひ資料を送ってください」二人の会話はとても円滑に進んだ。真衣は総士に良い印象を持った。落ち着いていて、どんな状況でも動じない様子は医者としての素質なのかもしれない。総士は頷いて立ち上がった。「病棟で回診が待っていますので、先に失礼します。お母様とよくご相談されてからまたご連絡ください」総士が去った後。真衣は総士から送られてきた資料を受け取った。彼女は資料を何度も隅々まで読み返した。さらにネットで調べもした。海外ではこの技術は確かにすでに確立されていた。ただしこの治療法は適用例が少なく、治療費も高額なため、誰もが利用できるわけではない。確立されてはいるが、臨床例はそれほど多くない。彼女は椅子にもたれかかり、慧美が来るのを待った。しかし、慧美は来なかった。代わりに萌寧と礼央が入ってくるのが見えた。真衣が入口の方に視線を向けると、礼央もこちらの方を見てきた。その目は冷たく、淡々としていた。萌寧も真衣に気づいた。萌寧は礼央の手を引いて真衣の方へ歩いてきた。「あら、偶然ね」萌寧は馴れ馴れしく席に座った。真衣は目をあげて、礼央を見た。「あなたも座って」真衣はただ可笑しく感じた。真衣は会社の創立記念パーティーの件について話したいと礼央に電話したのに、彼は忙しいと言って電話を切った。そのくせすぐに萌寧とコーヒーを飲みに来ている。こんな偶然にもカフェで出会したから、多少話をしても構わないだろう。礼央は特に何も言わず、萌寧の隣に座った。「今日あなたが礼央に電話した時、富子お祖母様が高瀬グループの創立記念パーティーの企画をあなたに任せたって聞いたわ」萌寧は唇を噛み、真衣を見た。「二人はもう……ねっ……だからこのことは……」萌寧は言いかけてはやめ、ずっと礼央の表情をうかがっていた。「礼央、この件を私に任せるのはどう?あの時あなたも随分困っていたようだし」萌寧は思った。二人はもう離婚したから。礼央はき
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第396話

萌寧はそれを聞いて、真衣はちゃんと自覚していると感じた。以前のように、身の程知らずというわけではなかった。真衣は今、礼央の心の中での自分の位置をはっきりと認識しているようだ。しかし、礼央は何も言わなかった。萌寧は礼央を見て、自分から進んで言った。「礼央、私は海外でもこういうイベントの企画をした経験があるわ。だからこの件は私に任せて。きっと立派なパーティーになるわ」萌寧は高瀬家と多少の縁があるので、パーティーを主催するというのも理にかなっている。礼央は何も言わずにいると、真衣が先に立ち上がった。「じゃあこれで決まったね」その言葉を吐き捨てるようにして、真衣は背を向けてその場から離れていった。「富子おばあちゃんが既にお前に任せるって決めたなら、お前がちゃんとやれ。俺は富子おばあちゃんが決めたことを勝手には変えられない」礼央が突然口を開いた。真衣の足が、ギクっとその場で止まった。彼女は眉をひそめて礼央を見た。礼央は淡々とした表情で言った。「何か言いたいことがあるなら、富子おばあちゃんに話してくれ」真衣はすぐに礼央の言葉の真意を理解した。富子と真衣との絆は、あくまで二人のもので、礼央には無関係なのだ。こんなことに礼央は時間も使いたくなかった。萌寧の表情が崩れかけた。礼央のこれらの言葉は、明らかに萌寧の提案を拒否するもので、まるで真衣の前で萌寧を軽んじているかのようだった。萌寧はいつもこの創立記念パーティーを利用して、自分にとって有益な人脈を広げようとしていた。真衣は眉をひそめ、何も言わずにその場から去って行った。真衣が去った後。「礼央」萌寧は礼央を見た。「富子お祖母様は年を取られているので、こんなに多くのことに気を遣うべきではないと思うわ」「のんびりと余生を楽しんでもらった方がいいわ」萌寧は続けた。「高瀬家のことは、すべてあなた一人でなんとかできるはずだわ」礼央はゆっくりと顔を萌寧の方に向け、彼女を一瞥した。「富子おばあちゃんが健在である限り、この家の主は彼女だ」萌寧はその場で固まった。彼女は突然何かを悟った。もし自分が高瀬家に嫁いだら。まずは富子お祖母様を説得しなければならない。富子お祖母様は真衣のことがそんなに好きなのに、急に考えを変えて自分を受け入れる可能性は低
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第397話

さらに真衣は自分の耳を疑った。真衣の声には嘲笑が溢れていた。「礼央、あなたは自分のことを何様だと思っているの?」嫉妬はまだ好きだという感情が前提にあるもの。今の自分は彼に無関心なので、嫉妬のしようがない。自意識過剰もいいところね。「うん」礼央は鼻声で応えた。そして、そのまま穏やかに続けた。「俺の考えすぎだな」「じゃあお前の望み通りにしてやる」礼央はそう言い残すと、真衣が何か言うのを待たずに電話を切った。この電話で、一見礼央は真衣の意向を聞いているようで、実際はただ彼女を不快にさせるためだけのもので、結局は真衣に一人で企画させると言う結論だった。礼央の最後の言葉は、あたかも自分がどれだけ寛大であるかのように聞こえた。真衣は鼻で笑った。携帯の画面を見つめながら、真衣は思った。もう礼央たちと連絡を取り合う必要などないのだ、と。真衣はすぐさま礼央の電話番号をブロックした。これから高瀬家とは、富子おばあさんとだけ連絡を取ればいい。一方で。礼央が電話を切る前に。高史と萌寧が一緒に資料を持って事務所に入ってきた。高史は冷たい笑いを浮かべた。「真衣だったか?最近ますます態度が大きくなっているようだな。常陸社長に甘やかされたせいだろう。今度は山口社長とも知り合いになったとなると、もう手が付けられないな。真衣は仕事をしているのか、それとも愛人を作っているのか、どっちなんだろうな」萌寧は眉をひそめた。「女性に対してそんな言い方はひどすぎないの?」「確かに真衣には行き過ぎた行動もあるけど、やっぱり彼女も女性なんだから、自分の評判が一番よ」そう言いながら、萌寧は椅子に座っている礼央の方を見た。「でも礼央、最近フライングテクノロジーがスマートクリエイションの協業先を奪ったことは、あなたも知ってるよね。それに、寺原さんと江藤社長がどういうわけか繋がりを持ったらしくて……私は寺原さんが潔白で、裏の手を使わずに今回の協力を取りつけたと信じたいけどね」「でも、私でさえ築けなかった関係を、寺原さんが簡単に手に入れたとなると、彼女が疑われても仕方ないと思うわ。礼央、彼女は自分が与える影響にもっと気を配るよう、一言言ってあげて。何せ、彼女はあなたの元妻なんだから、この関係がもし後でバレたら、あなたにとってもよくないわ」
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第398話

高史は礼央を見て、「確かに、美人なんていくらでもいるね」と言った。「ここまでの地位に辿り着ける人間は、誰一人として馬鹿じゃない。ただの美貌だけで、誰かが真衣にすべてを与えるなんてことはあり得ないし、美しさだけを理由に、損をするような取引をする者なんていない」「常陸社長のようなバカは、この世に一人いればもう十分だ」礼央は高史を見て、眉をつり上げた。高史は続けた。「真衣が常陸社長に取り入ったから。常陸社長は真衣に一流の肩書きを与えて、業界でも通用するようにした。真衣は九空テクノロジーという会社を後ろ盾にしていて、実際に九空テクノロジーは彼らに利益をもたらしている」真衣は良い後ろ盾を見つけたと言える。礼央が真衣を相手にしなかったので、真衣もそれを承知の上で離婚に同意し、安浩というカモを見つけたのだ。萌寧は高史の言葉を聞いて。彼女は眉をひそめた。高史の言うことは確かに一理ある。そうでなければ、真衣のような人間がこの業界でまた活躍しているのは、どう考えてもおかしい。礼央はこれらの話を聞きながら、パソコン上のデータを見ていた。高史が話し終わってから、ようやく淡々と目を上げた。「話は終わったか?」礼央の口調は極めて冷静だった。高史はそれ以上話を続けなかった。高史はほとんど忘れていた。礼央はもう真衣のことが好きではなく、真衣に関するすべてのことに興味がないことを。「違う話をしよう」高史は持ってきた資料をテーブルに置いた。「これはクラウドウェイとエレトンテックが最近共同で進めているプロジェクトの計画書だ」「代替エネルギーの争奪はすでに生活の隅々にまで広がっている。俺たちのハイテク製品もこの方向に沿って開発することができる」「開発中の製品について、萌寧は以前に文献を参考にして、すでにいくつかのアイデアを持っていた。俺も見てみたけど、とても先見の明があると思ったんだ。これなら業界を大きくリードしていけると俺は確信している」「このプロジェクトが実現すれば、ワールドフラックスはさらに上を目指せる」萌寧は口端をわずかに上げた。これは彼女がデザインした製品だ。萌寧はこの時に口を開いた。「実は帰国した時から開発に取り組んでいて、システムはすでに半分完成しているわ。今はテスト稼働していて、2ヶ月後にはサンプルを発表できる
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第399話

高史は一瞬言葉を詰まらせた。礼央の地位を考えると、萌寧の現在の身分では彼と対等に話す資格もない。萌寧は今や礼央に手を貸してもらい、自分のために働いてもらおうと考えていた。高史はすぐに冗談めかしてたしなめた。「何を言ってるんだ?礼央に働いてもらうだって?」「ダメかしら?」萌寧は笑いながら、目を細めて礼央を見た。「幼なじみが手伝ってくれって言うんだから、問題ないでしょ?」礼央は椅子の背もたれに寄りかかり、冷たい瞳で薄く笑った。「時間が取れればな」萌寧は笑った。「やっぱり幼なじみはいいね」「でも、礼央がそう言ってくれただけで十分だわ。あなたの恩師が亡くなってから、こういうことにあなたが関わらなくなったのは知ってるから。無理にお願いするつもりはないから、安心してね」恩師の話が出ると。礼央の表情がわずかに変化した。「この話はもうやめよう」萌寧は手を振り、「食事に行きましょ。ついでにプロジェクトの進め方についても話し合おう。今はもうデータを取っているところだからね」このプロジェクトが実現すれば、必ず九空テクノロジーを追い抜く。あとはサンプルの完成と協業先の募集を待つだけだ。その時には、萌寧が被ったすべての損失が、少しずつ回収されていく。スマートクリエイションと共同で、AI巡回ロボットを開発する。サーモグラフィー機能を搭載し、すべてのデータをワンタッチで送信することが可能だ。さらに、この機械は周囲の環境に溶け込むように設計されていて、ほとんど音を立てずに作動できる。誰にも気付かれることなく自走することが可能だ。これは現場の作業員の作業量を大幅に軽減できる。-仕事が終わると。真衣は病院に寄って修司のお見舞いをしにいった。真衣は決心を固め、総士に託すことにした。病院で、真衣と総士は修司の病状について話し合った。総士はすでに修司の病状を完全に把握していた。「では、修司おじさんをよろしくお願いします」総士は穏やかに頷き、微笑んだ。「信頼してくださりありがとうございます」「臓器移植の部分については、私がしっかり状況を随時確認しておきますので」総士は真衣を見て言った。「最近はあまり不安や緊張を感じすぎないようにしてくださいね」「彼の病状は少し落ち着いてきていますので」真衣は修司の体
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第400話

ヒリヒリした痛みが顔に広がっていくのを友紀ははっきりと感じた。友紀の顔は冷たく沈んでいて、彼女は自分の頬を押さえ、信じられないというような表情を浮かべていた。礼央は声色を変えずに眉をひそめ、真衣を見た。「私を殴ったわね?」友紀は手を上げ、殴り返す構えを見せた。総士は一歩前に出て、真衣を自分の後ろに引き寄せた。総士が口を開いた。「申し訳ないんですが、ここは病院ですから、騒いだり殴り合ったりしないでください」「騒いでる?」友紀は冷たい目をした。「真衣、こっちにきなさい。あなたはもう次の男を見つけたようね、あなたを守ってくれる男を見つけたね」「先生、この女はろくでもないクソ女ですよ。先に忠告しておきますね」真衣は外では立派に振る舞っているが、高瀬家にいればどんな人間かがわかる。学歴もないし教養もない。なんの取り柄もない。以前は自分の息子を誘惑して高瀬家に嫁いできたが、今では外で他の男を引っ掛けようとしている。真衣は総士の前に出てきた。彼女は友紀を見ようともしなかった。そして、そばにいる礼央をまっすぐ見つめた。「礼央、高瀬家のいざこざは自分でなんとかしなさい。私はずっと秘密を守り続けるつもりはないから」彼女はそう言うと、礼央の返答を待たずに、背を向けてその場を後にした。「どこ行くのよ!私を殴ったことはどうするつもりなのよ?きちんと説明してもらわないとね」真衣は冷たく振り返った。「説明?私が何か不正を働いたとでもいうの?」真衣は目を上げ、再び礼央を見た。「あなたのお母さんに説明する必要はあるかしら?」二人はすでに離婚しているから、真衣が誰と一緒にいようと関係ないのだ。彼女のひと言で、礼央は矢面に立たされてしまった。真衣は自分が少しでも傷つくことを許さない。もともと彼女は、これらのいざこざにはもう関わりたくなかったが、今はただ煩わしいと感じている。どうやら、このいざこざを無視し続けている限り、ずっと真衣の耳元で囁かれ続けて消えることはないようだ。真衣は思った。今こそケジメをつけるべきだと。礼央の目は深く沈んでいた。彼は友紀を見て、「行こう、医者に診てもらおう」と言った。「真衣――」友紀は悔しかった。真衣に無駄に平手打ちを食らわされたままでは終わらせることはできないからだ。「俺が解決す
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