隆のようなレベルの人物にも真衣は知りあえるようになった。連絡先さえ交換した。礼央は目を伏せ、軽くお酒を口にした。彼の声は淡々としていた。「みんなやり方はバラバラなんだから、常識だけで全部同じように考えちゃダメだ」高史はこの言葉を聞いてもちんぷんかんぷんで、眉をひそめて考え込んだ。真衣は、隆からとてもためになる話を聞くことができた。公徳は彼女を見て、「若いうちにしっかり働きなさい、高瀬家は君を応援しているから」と言った。「君が外で職に就いたと聞いて、私も心から嬉しく思っている」公徳は彼女を見た。「当初君が高瀬家のために色々と犠牲を払ってくれたことに、本当に感謝している」真衣が自分らしく生きようと、誰も邪魔はしない。真衣は俯いた。この世の無情さ、運命のいたずらを感じずにはいられない。確かにそうだわ。自分はかつて礼央を愛していた。高瀬家のためにしたこと全ては、自分が喜んでしたことであって、自発的なものだった。公徳はそのことをわかっている上で、自分たちの結婚に干渉しなかった。「ありがとうございます」公徳の笑顔のままで、「家族同士なんだから、そんなに堅苦しくする必要はない」と言った。「嫁いで五年、お互い会う機会は多くなかったが、礼央の嫁として、君の言動は高瀬家の評判に直接関わってくる。これからも慎重に行動してほしい」真衣は理解していた。政府の高官である公徳は、何事も慎重さを求める。特に彼が引退を控えている今。公徳は椅子に座り、足を組んで、落ち着いた表情で、「礼央は生まれつきの冷たい性格だから、君も随分苦労しただろう」と言った。これは疑問形ではなく、断定の言葉だった。周りは騒がしいのに、公徳と話をしている間だけ、真衣には周囲が静寂に包まれたように感じた。真衣は笑みを浮かべ、何も言わずにただ淡々と首を振った。公徳は彼女の顔を見て、しばらく沈黙した。政府の高官としての経験が豊富な彼が、人の心を読めないわけがない。しかし、彼の関心は、自分の家庭にはほとんど向けられていなかった。真衣は、どんな侮辱を受けても、ただ耐え続けた。まるで、砕けた歯を飲み込むように。しばらくして。公徳の手元のタバコが燃え尽きた。彼は灰皿の中でタバコを消した。「もし君たちの結婚がうまくい
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