All Chapters of 姉を奪われた俺は、快楽と復讐を同時に味わった~復讐か、共依存か…堕ちた先で見つけたもの: Chapter 101 - Chapter 110

112 Chapters

喫茶店の影

佐伯は、雨脚が強くなった街角で立ち止まった。アスファルトに跳ねる水が、ズボンの裾まで冷たく濡らしている。このまま歩き続けても仕方がないと、自嘲混じりに思いながら、視線を上げた。目の前には古びた喫茶店があった。「珈琲室 かさね」と書かれた木の看板は、雨に滲んで輪郭がぼやけている。ガラス戸越しに見える店内は、薄暗い照明と、しんとした空気に包まれていた。店主がいるのかも分からない。けれど、もうどうでもよかった。佐伯は、ドアを押した。鈴の音が、小さく耳に残った。中に入ると、湿った木の匂いが鼻腔に広がる。古い椅子とテーブルが並び、薄いレースのカーテンが窓際に揺れていた。他に客はいなかった。店主らしき中年の女性が、カウンターの奥で黙って一礼した。その目は、まるで無表情だった。「……珈琲、ください」佐伯はかすれた声でそう言い、窓際の席に座った。椅子は少しきしみ、座面のクッションは薄くなっていた。けれど、その沈み込みが逆に心地よかった。窓の外は、相変わらず雨が降っている。街灯の光がガラス越しに滲み、ぼやけた影を作っていた。人の姿はほとんどなく、傘を差した誰かが時折横切るだけだ。カップに珈琲が運ばれてきた。店主は何も言わず、音も立てずに去っていく。佐伯は、カップを手に取った。熱いはずの液体が、唇に触れても何も感じなかった。味も分からない。苦味も、香りも、ただの「黒い液体」として喉を通る。「生きてるんだろうな、俺」呟きそうになって、唇を噛んだ。こんなことを考えるのは、何度目だろう。毎日が、同じように過ぎていく。同じように朝が来て、同じように夜が来る。何かが変わることもなく、ただ「時間を潰しているだけ」の日々。「罰だよな」心の中で、もう一度そう言った。あの夜から、すべてが変わった。いや、変わった
last updateLast Updated : 2025-11-05
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再会

扉の鈴が、静かに鳴った。湿った夜の空気が、店内にわずかに入り込む。佐伯はカップを握ったまま、その音に凍りついた。視線を上げると、そこに佐山が立っていた。黒いコートの裾から、雨粒がぽたぽたと床に落ちている。濡れた髪が額に貼りつき、肩のあたりからしずくが伝っていた。それでも佐山は、静かに笑っていた。「……久しぶりですね、佐伯さん」その声は、以前と変わらなかった。やわらかく、低い。けれど、どこか芯の冷たい声だった。佐伯は返事ができなかった。喉が鳴るだけで、声にならなかった。唇がわずかに動いたが、言葉は出なかった。「……なんで、ここに」やっと絞り出した言葉は、かすれた。佐伯自身が、自分の声に驚いた。佐山はコートの襟を軽く払うと、また微笑んだ。その目の奥は、どこか翳っていた。けれど、表情は変わらない。「別に。たまたまです」そう言って、カウンターに視線を流す。手の甲で濡れた髪を撫でる仕草が、昔と変わっていなかった。(そんなわけない)佐伯は心の中で呟いた。けれど、口には出さなかった。足元がぐらつくような感覚があった。指先が震える。冷めた珈琲のカップを握りしめているのに、手が冷たかった。佐山は、窓際の席の向かいに静かに腰を下ろした。動作はゆっくりで、無駄がなかった。まるで、あらかじめ決まっていた位置に座るかのように。「……こんなところで会うとは思いませんでした」佐山がそう言った。その声には、まるで感情がなかった。ただ、事実だけを並べているようだった。佐伯は、視線を合わせられなかった。目の前にいるのに、目が合うのが怖かった。けれど、逃げることもできなかった。「…&
last updateLast Updated : 2025-11-06
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ガラス越しの影

ガラス越しに、佐伯の姿が見えた。佐山は店の外で足を止めた。冷たい雨が肩口を濡らし、コートの襟からじわりと湿りが広がっていく。けれど、傘を差す気にはなれなかった。両手をコートのポケットに突っ込んだまま、ただそこに立っていた。喫茶店のガラスは曇っている。その表面に雨粒が細く流れ、時折はじける。ガラスに映る自分の顔は、歪んでいた。輪郭も目の奥も、滲んで見える。(たまたま、じゃないな)心の中で、佐山は小さく呟いた。こんな地方都市の片隅まで、偶然で来たわけじゃない。ここまで足を運んだのは、他でもない自分だ。けれど——。「たまたまです」その言葉を選ぶだろうと、最初から決めていた。もし「探した」と言ってしまえば、その瞬間に何かが壊れる。だから、嘘を選ぶ。それはきっと、自分を守るためだ。ガラスの向こう、佐伯はひとりで珈琲を飲んでいる。手にはカップを持っているが、口元には運ばれない。その目は、どこも見ていなかった。ただ、虚ろにガラス越しの雨を眺めている。(生きてたんだな)佐山は胸の奥で、呟いた。三年という時間が過ぎた。自分も、佐伯も、生きてしまった。それが、どれほど苦しいことか。生き延びることが、こんなにも重たいとは、復讐を始めたころには知らなかった。姉はもういない。美咲も、佐伯も、あの夜で全部壊れた。復讐は、確かに果たしたはずだった。だけど——。「何も、終わらなかった」雨粒が目尻から頬を伝った。それが涙かどうか、佐山には分からなかった。喉の奥が乾いていた。けれど、唾を飲み込むことすら億劫だった。胸の奥には、ぽっかりと穴が空いている。その空白は、いくら時間が経っても埋まらなかった。(それでも)
last updateLast Updated : 2025-11-07
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たまたまですよ

鈴の音が、また一度、空気を震わせた。喫茶店の扉を閉めたあと、佐山はしばらくその場から動かなかった。雨に濡れたコートの裾がしずかに床に垂れて、店内の薄明かりのなか、滴る雫の音だけが響いていた。佐伯は、まだこちらを見ていない。目の前の冷めた珈琲を両手で包み込むように持ったまま、視線はガラス越しの外に向いている。だが、その指先が微かに震えているのを、佐山は見逃さなかった。「……久しぶりですね、佐伯さん」声をかけたとき、自分の喉が少しだけ乾いているのを自覚した。けれど、その感覚を表情には出さないように、口角だけをわずかに持ち上げる。笑顔を貼り付けることには、もう慣れていた。佐伯がゆっくりと顔を上げた。目の奥が揺れている。それを見た瞬間、佐山の心のどこかに張られていた糸が、音もなく切れたような気がした。「……なんで、ここに」絞り出すようなその声に、佐山は即座に返す。「別に。たまたまです」自分でも驚くほど自然に言えた。だが、その言葉が口を離れた瞬間、胸の内側に微かな違和感が走る。この言葉は、どこか嘘っぽい。いや、最初から嘘なのだ。けれど、それでも「たまたま」と言わなければならなかった。そうしなければ、自分が何をしに来たのかを、真正面から突きつけることになる。佐伯は、それ以上何も言わず、ただ視線を落とした。カップを持つ指に、ぐっと力が入っている。その白くなった指先を、佐山は目の端で捉えたまま、向かいの椅子に腰を下ろした。店主は、ちらりとこちらを一瞥しただけで、何も聞かずにレジの奥に引っ込んだ。この店の空気は、佐山の記憶にあるどの喫茶店よりも静かだった。冷えた木の匂いと、雨の湿気、そしてコーヒーの苦味が、空気のなかで緩やかに混ざり合っていた。「ここ、落ち着きますね」そう言って、佐山はテーブルの端に置かれていた冷たい水のグラスに指を添
last updateLast Updated : 2025-11-08
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終わりの告知

「もう、復讐は終わりましたよ」佐山はそう告げた。声は淡々としていた。軽く笑うような口調で、何でもない雑談の続きのように。けれど、その言葉を口にした瞬間、喉の奥がひりついた。唇の端が、わずかに引きつったのが自分でもわかった。気づかれたくなくて、すぐにカップに手を伸ばし、珈琲を一口だけ含む。苦味が舌に広がったが、味はしなかった。佐伯は黙っていた。ただ、じっと佐山の顔を見ている。その目の奥にあるものを、佐山は読み取ろうとした。けれど、自分の視線が先に揺れた。ほんの一瞬だけ目を逸らした。(終わった……のか)自分の心に問いかけたが、答えは返ってこなかった。復讐は完遂したはずだった。姉の死の理由を突きつけ、加害者の家庭を壊し、二人の心を壊した。計画はすべて、完璧に実行された。だが——「終わった」と言いながら、胸の奥には空洞が残っていた。何も変わらなかった。姉は戻らない。あの夜、自分が見送った棺と一緒に、確かに時間は止まったはずだった。でも、身体だけが生き延びてしまった。「……俺は」心の中で呟いた。何をしても、あのときの自分に戻れない。失ったものは、永遠に戻らない。けれど、生きている限り、どこかに繋がってしまう。(まだ、何かを続けなければ、俺は壊れる)それが、今日ここに来た理由だった。復讐を終えたあと、何もない世界に一人取り残されるのが、怖かった。だから、佐伯の前にいる。この男に、もう一度手を伸ばすしか、自分が存在する場所はなかった。「……そうか」佐伯が小さく呟いた。声は低かったが、震えているのが分かった。その唇は硬く結ばれ、喉仏が一度だけ動いた。「俺は、許され
last updateLast Updated : 2025-11-09
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最後の選択

佐山は、カップの底をじっと見つめていた。そこにはもう、ほとんど珈琲は残っていなかった。飲み干すつもりもなかった。けれど、目を逸らす理由が欲しかった。佐伯の視線を真正面から受け止めると、胸の奥がきしむ。(これが最後のカードだ)心のなかで、佐山は呟いた。もう何も残っていない。姉は戻らない。復讐は、終わった。終わらせたはずだった。けれど、それでも生きてしまった。自分の中に残ったのは、空洞だけだった。その空洞を埋めるために、また誰かを壊すわけにはいかなかった。もう、あれ以上の復讐はできない。けれど——。(壊れたまま生きるなら、隣に誰かがいるほうがいい)それが、佐山の出した答えだった。それは「赦し」ではない。許す気なんて、最初からなかった。今もない。佐伯を許すつもりは、これからもきっとない。けれど、もう「壊し続ける」こともできなかった。誰かを壊すたびに、自分が少しずつ死んでいくことを、佐山は知っていた。だから選んだ。佐伯となら、「壊れたまま、生きることができる」と。(これが俺の終わり方だ)その言葉を、心の奥で呟いた。終わり方を選ぶ、という感覚。何かを始めるためではなく、「どう終わるか」を決めること。それだけが、今の自分にできることだった。佐山は、コートの袖をぎゅっと握った。指先に爪が食い込む。痛みはなかった。それでも、その感触だけが、唯一の実感だった。「……ねえ、佐伯さん」佐山は顔を上げた。口角を上げたまま、微笑みを崩さなかった。その笑みの下で、何かが落ちていく感覚があった。心の奥にあった冷たい石が、底に沈んでいくような感覚だった。「許したわけじゃないんですよ」ゆっくりと、柔らかく
last updateLast Updated : 2025-11-10
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触れた手のひら

雨が上がった夜の匂いが、安アパートの薄い壁を越えて室内に滲んでくる。窓の外、濡れたアスファルトが街灯の光をぼんやりと反射していた。秒針の音だけが、静まり返った部屋に規則正しく響く。佐伯は、ベッドの上で佐山の背中に腕を回していた。ぬるい体温が指先に伝わるたび、自分の心臓がまだ動いていることを知る。こんなふうに抱き寄せるのは、もう何度目になるのか分からない。けれど、今夜は違った。「ただ、欲しい」と思ってしまう。罪でも、罰でもなく、理由もない。ただこの身体に触れていたいと、指が勝手に動いた。佐山の髪にそっと指を滑らせる。夜の湿気で少しだけ重たくなった髪が、掌に絡んだ。柔らかい感触が、喉の奥を熱くする。過去も、罪も、全部を忘れたわけじゃない。それでも、触れたいと願ってしまう。佐山は目を閉じたまま、微かに肩を揺らした。嫌がっているのか、それともただ呼吸が浅いだけなのか分からない。けれど、佐伯は手を止めなかった。心の中で「これは間違っている」と叫ぶ声があった。だが、もう離せなかった。首筋に唇を落とす。佐山の肌は、まるで硝子細工のように冷たく、それでいて柔らかい。ひとつ息を吸うと、佐山の匂いが喉を滑った。夜の灯りの中で、佐伯は自分が何をしているのか分からなくなった。「これでいい」と思った。心が壊れる音を、どこか遠くで聞いた気がした。けれど、その音が心地よかった。佐山の肩越しに、濡れた窓ガラスが見えた。街灯の明かりがぼんやりと滲み、二人の影を映している。その影は、どちらがどちらなのか分からなくなるほど、重なり合っていた。佐伯は目を閉じた。そして、もう一度、佐山の髪に触れた。その柔らかさだけが、今の自分の現実だった。
last updateLast Updated : 2025-11-11
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呼吸の音だけ

佐伯の指先が、背中を這っていく。佐山は目を閉じたまま、その感触に全身の神経を預けた。冷たくもなく、熱くもなく、ただ静かに、呼吸と共に肌が揺れている。呼吸音だけが部屋に満ちていた。秒針の音も、外の雨音も、今はもう聞こえない。(これは、俺が与えているだけだ)そう思い込もうとした。昔からそうだった。与える側でいれば、傷つかなくて済む。相手の欲望を受け止める側なら、何も失わなくていい。それが、自分の生き延び方だった。だけど。背中に触れる佐伯の指先が、今夜は違った。撫でるでもなく、抱きしめるでもなく、まるで何かを確かめるように、佐山の肌をなぞっていく。そのたびに、心臓が跳ねる。理性が「これは計算だ」と囁く。だが、体は嘘をつかなかった。(…もう、俺も逃げられないな)心の中でそう呟いた。佐伯の手は、まるで自分の境界線を壊すかのように、深く入り込んでくる。「愛されたい」とは思わない。そんなものは、とうの昔に信じるのをやめた。でも——一緒に堕ちたいとは、思ってしまった。喉の奥で、ひとつ小さな音が鳴った。自分でも気づかないほどの微かな喘ぎ。それを聞かれたくなくて、唇を噛んだ。けれど、佐伯は気づいたらしい。背中を撫でる手が、少しだけ強くなる。佐山は目を閉じたまま、指先でシーツを握った。その感触も、もうどうでもよかった。部屋の空気が、ぬるい熱に満ちている。呼吸が、だんだん浅くなる。(こんなはずじゃなかったのに)そう思いながらも、佐山は自分の中に湧き上がる感覚を止められなかった。かつては「佐伯を堕とすため」に抱かせた体。今は、ただ「触れられること」に、心も体も沈んでいく。「……っ」息が漏れた。それだけで、佐伯の手が止まる。
last updateLast Updated : 2025-11-12
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堕ちる夜

佐伯は佐山の体を抱きしめたまま、喉の奥で微かな吐息を漏らした。肩越しに見える佐山の横顔は、安アパートの灯りにぼんやりと照らされていた。睫毛が微かに震えている。目は閉じたままだが、瞼の奥で何かを堪えているようだった。その震えを見た瞬間、佐伯ははっきりと理解してしまった。これは、快楽に震える顔だと。これまで佐山が見せてきた、計算された誘いの表情でも、冷めた笑いでもない。本当に感じている時の顔だ。佐伯は、腕の力を少しだけ強めた。佐山悠人という一人の男を、自分の手の中で確かに抱いている。「……佐山」喉の奥で名前を呼んだ。けれど、それは呼びかけというより、吐息だった。佐山は何も答えなかった。ただ、肩の奥で小さく身をよじった。佐伯の手は、佐山の背骨に沿って滑った。指先で骨の形をなぞると、そのたびに佐山の身体が微かに反応する。小さな痙攣のような動きが、肌の下に走った。佐伯は、その震えを逃さなかった。もっと欲しいと思った。もっと深く、もっと強く、佐山を抱きしめたいと願った。「……嫌なら言えよ」そう囁いたが、返事はなかった。睫毛はまだ震えていた。佐伯は、唇で佐山の耳朶をなぞった。ぬるい吐息が、佐山の肌に触れた瞬間、肩がほんの少しだけ震えた。(ああ、もう俺は駄目だ)心の中でそう呟いた。これが罰だとも、贖罪だとも思えなかった。ただ「欲しい」と思ってしまった。佐山の肌が、佐山の呼吸が、佐山の温度が、どうしようもなく欲しい。佐伯は腰を沈め、指先を絡ませる。湿った音が、二人の間に生まれた。佐山の唇から、小さく息が漏れた。「っ……」その声に、佐伯の心臓が跳ねる。理性は止めろと言ったが、体は止まらなかった。佐山の首筋に唇を押し当てる。
last updateLast Updated : 2025-11-13
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沈黙の中で

佐山は、乱れた呼吸のまま、シーツを握りしめていた。背中を濡らす汗が、まだ冷めない熱を伝えている。全身が微かな痙攣を繰り返し、呼吸と呼吸の隙間に、心臓の鼓動が入り込んでくる。佐伯の手が、髪に触れた。優しくもなく、乱暴でもなく、ただ確かめるような動きだった。その手のひらが、頭の後ろを撫でるたびに、佐山の喉奥からかすかな音が漏れる。快楽はとっくに終わっているはずなのに、体はまだ震えていた。(……ああ、これが、最後だったな)心の中で、佐山は呟いた。復讐も、支配も、すべて終わった。これ以上のカードは、もう何も残っていない。目を閉じたまま、佐山は自分の胸の奥を探った。確かに、体は満たされている。絶頂の瞬間、佐伯と同時に達したとき、体の奥まで溶けていくような感覚があった。けれど——(それでも、空洞は残る)胸の真ん中にぽっかりと開いた穴は、何をしても埋まらなかった。姉を失ったその日から、ずっとそこにある。復讐を終えても、誰かを愛しても、抱かれても——その穴は埋まらない。でも、と佐山は思った。この空洞ごと、抱かれるなら、それでいいのかもしれない。佐伯の腕の中にいれば、少なくとも「何もない」よりはマシだ。この胸の空洞を、佐伯が抱えてくれるなら、それで生きていける気がした。「……ふ」薄く笑いが漏れた。自嘲だったのか、安堵だったのか、自分でも分からない。ただ、佐伯の手が髪に触れ続けるのが心地よくて、目を開けたくなかった。でも、そっと瞼を持ち上げると、視界の端に佐伯の横顔が見えた。天井の薄明かりに照らされたその顔は、どこか無防備で、静かだった。(もう、逃げない)佐山は知っていた。あのとき、ホテルの部屋で「終わり」を告げたときとは違う。今、佐伯の横顔
last updateLast Updated : 2025-11-14
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