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21. 登校≪TOBARI/HighSchool≫

Author: Mr.Z
last update Last Updated: 2025-09-04 22:17:20
 まさかこんな事が出来る日が来るなんて⋯⋯

 リムジンに乗って登校なんて、2次元でしか見た事が無い。

 ってか、このリムジンってエンナ先輩のものなのかよ⋯⋯。俺はてっきり親のだと思ってたんだけど。

 高校卒業祝いで新車になったこれを貰ったそうで、親はまた別の車を使っているらしい。

 このリムジンはあまり使わないようにしているようで、やっぱり自分で何でも出来るようにしたいそうだ。

 高校の時、エンナ先輩はいつも電車通学だったっけ。電車が止まったりした時だけリムジンで来てたんだっけか。

 もちろん無人自動運転の最新型で、タッチパネルから選んで食べ物や飲み物までサービスしてくれる。これの面白いところは、ちょっと時間は掛かってしまうが、AIが目の前でライブキッチンのパフォーマンスなんてものまであるところだ。

 もちろん、天王寺駅前から大阪都波裏学園なんて、車移動で20分もかからないため、使いたいなんて我儘は言わない。

「朝食は何でも遠慮せず選んでいいからね」

 黒鮭定食を頼みながら、先輩は俺とスアに囁く。

「俺も黒鮭定食にしていいですか?」

「私も!」

「どうぞ~。美味しいわよ、黒鮭。私のおすすめ!」

 数分で用意された黒鮭は焼きたてで、香ばしい匂いが漂ってくる。こんな良い鮭、食べた事ないぞ⋯⋯。

 それに並ぶように置かれた白米と味噌汁と納豆は、どれも輝いている。

「ん~! 良い匂い! ずっと嗅いでられる~!」

 スアは幸せそうな顔。

 これは味わって食べたい⋯⋯けど、時間が無いからなぁ。

「「⋯⋯いただきます!」」

 俺とスアはシンクロするように、黒鮭を一口。

 ⋯⋯なんじゃこりゃぁ⋯⋯!

 表面は炭火で焼いたようなカリっと深い味わい、そこから中に行くほど濃い旨味がぎっしり詰まっている。すぐに甘味もドンと口全体を覆ってきた。

 ⋯⋯ダメだ、白米が止まらない! ⋯⋯美味すぎる!

「ふふ、気に入ったみたいね」

「先輩、この黒鮭とサーモンマグロが毎日欲しいです」

「え~、じゃぁ私と結婚しないとだね」

「ごほっごほっごほっ」

「き、喜志可くん!? 大丈夫!?」

「変な事、急に言わないでくださいよ⋯⋯!」

「(⋯⋯あながち、変な事でもないんだな~)」

 こっそり言った先輩の言葉はあまり聞き取れなかった。

 スアはという
Mr.Z

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