寝室に入ると、ぼんやりと照明が灯っていた。星型のランタンは柔かな光を放ち、キャンドルの炎はゆらゆら揺れ、部屋いっぱいに甘い薔薇の香りが漂っていた。「ルイス……?」ベッドに座っていたルイスが、驚いたように肩を揺らした。ルイスは少し薄めのガウン姿で、どこか緊張したような面持ちをしていた。お風呂上がりなのか、髪もまだ湿っているようだ。おろされた前髪が、何だか色っぽい。「ロジータ、きたのか?」「ええ。というか、こんなに照明を暗くして、どうしたの?」なぜか私もぎこちなくベッドに座った。これまでルイスとは何度も同じ寝室で過ごしたはずなのに。今夜はやけに緊張するわね。しかもルイス、色気が反則級よ。「あら?」手にふと触れたのは、赤い薔薇の花びらだった。ロマンスファンタジーでよく見かける、ベッドに散らばる花びら。両サイドにはキャンドルが置かれ、近くにお香まで焚かれていた。「コホン。ア、アメリアが準備したみたいで。」「そうなのね。か、完璧に周囲を欺くにはこのくらい徹底した方がいいものね。」気まずそうに咳払いするルイスを見て、こちらまで気まずくなってしまう。変な気分だ。お風呂に入る前までルイスに治療されて、普通に手まで繋いだのに。今は何だか手さえ触れられない気がする。「ルイスこそ、体調に変わりはない?」話題を変えなきゃと、凛々しく顔を上げる。「あ、ああ。だから、俺は大丈夫だと言っているだろう。」「そうだけど、やはりあなたにずっと治癒力を使わせるのは、気が引けるわ。陛下は力について話してはくれないみたいだし、このままルイスに力を使わせるにも不安で……だから明日、王室の図書室へ行こうと思ってるの。」「禁忌の力について調べるのか?それは俺も昔調べたことがあるが、力について書かれた本は見つからなかったぞ。」ヴィスコンティで『禁忌の治癒力』の名残ーーと言われるほどの力なのに、なぜ隠されているのだろう。普通なら禁忌を犯さないために、大々的に語り継がれていそうなものだけれど。「となると、やはり禁書庫よね。確か、陛下や一部の臣下たち以外は、立ち入り禁止なのよね。陛下は一体、何を隠しているのかしら?」「さあ。それは俺にも分からないな。だが、禁書庫に入れないか、俺が直接父上に尋ねてみよう。」「お願いね。ルイスの安全のためだから。」
Last Updated : 2025-10-12 Read more