Share

第二章:二つの刻印が導く答え

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-11-30 18:49:28
---

外は土砂降りの雨、海は大荒れ。

それによってガレージ船の出航は困難だと言われ、私たちは仕方なく嵐が止むのを待つしかなかった。

アーチ窓から荒れ狂う海を見ながら、私は部屋に待機しているルイスやアメリアたちに告げる。

「もしかするとこれも、リーアが何か関わっているのかもしれないわね。」

「もし彼女が神だというのなら、あり得なくはないな。」

窓のそばに立つ私をを見ながら、ルイスが深刻そうな顔で頷く。

「俺もリーア様に関してはずっと、健気な女性だとばかり思っていました。

でも、知れば知るほど恐ろしい女性ですね。」

「私は、実は以前から少し違和感を抱いていました。

確かにリーア様はルイス様に優しかったですが、上辺だけの優しさというか……」

マルコに引き続き、アメリアが話を続ける。

さすがはアメリア、リーアの違和感に気づいていたなんて。

そうやって私たちが今後のことを話し合っていると、部屋の扉がノックされてーー

「ルイス殿下、ロジータ妃殿下。

エルミニオ王太子殿下が、生誕祭にぜひ参加なさるようにと申しています。

嫌だと断れば、強制的にお連れせよとのこと。」

「何ですか!私たちの部屋に断りもなく入ってきて!」

姿を現したのはユリとルドルフォだった。

しかも、私たちの意見を言う間もなくエルミニオの連れてきた私兵によって、会場に強引に連れ出されてしまった。

「俺の生誕祭に参加してくれた皆に感謝する!

今回は料理も飾り付けも急いで用意させたので、いつもより質は劣るだろうが、孤島でしか獲れない魚料理などがふんだんに使われている!

皆、存分に食事を楽しんでくれ!」

確かに急いで準備された生誕祭は、これまで私が見てきた中で一番質素だった。

積み上げられたプレゼントさえも、何とか間に合わせで準備されたような。

だが、しかしそれでも宮殿の使用人たちの手によって完璧に飾り付けられた料理、様々なお酒、珍しい果実のデザートなどがずらっと並べられていた。

荒れ果てた天候、逃げ場のない孤島。

シャンデリアの蝋燭の炎が、ゆらゆらと揺れていた。

私とルイスは席を離されて無理やりテーブルに座らされ、中央の特等席にはエルミニオが偉そうに座っていた。

隣のリーアと目が合うと、彼女はニコッと笑い私は思わず彼女を睨みつけた。

どうせこれも全部あなたの仕業なのでしょう!?

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    ヴィスコンティの王宮は巨大で、一つの都市くらいの敷地面積を誇る。ゴシック調の重厚な中央宮殿の他に、各王族が住む宮殿、政治を行う行政庁、裁判所や大聖堂など、どれを取っても広大で立派な建物ばかり。「はあっ、はあっ、はあっ……。」今私が懸命に登っている塔もその一つだ。最近、マルツィオの命令で使用人になったばかりだという女性に案内され、私は王宮のやや外れにある塔の長い階段を登っていた。「ねえ、本当にこんな所にルイスがいるの?」遠くからは、国民の歓声や祭りを楽しむ声が聞こえてくる。流星群は時間おきに、空からシャワーのように降り注いだ。「はい、ロジータ様。もうすぐです。」前を歩く使用人は淡々と言い、ランタンを掲げる。もちろん普段は何の用もない塔だから、入り口に見張りが二人しかいなかったのも分かる。けれど、内部があまりに静かすぎる。妙ね……「ロジータ様、何か様子が変です。お気をつけください。」「あなたもそう思う?実は私も……」マルコとは別にルイスがつけてくれた、もう一人の護衛騎士が、背後からこそっと囁く。ふと足を止め、私は前を歩く使用人に問いかけた。「ねえ、あなた、ルイスが本当にここにいると言ったの?私を呼んでいると?」「はい、そうです。間違いありません。」「あなた、名前は?」「わ、私ですか?私は……」明らかに目が泳いでる。名前を答えられないということは、どうやら普通の使用人ではないようだ。「悪いけれど、名前を答えられない人にこのまま着いていくことはできないわ。引き返します。」「駄目です———!!このまま着いてこないと私が……!!」「ロジータ様!下がって!」同じく危険を察知し、私を庇うように護衛騎士が前に進み出た瞬間。使用人の背後からブワッと黒いモヤが飛び出し、それが騎士に襲いかかる。「く……!」「何これ!……っ、彼から離れなさい!」「ロジータ様、私はいいのでお逃げください!」「そんなのだめよ、置いていけないわ!」必死にモヤを振り払おうとするが、私も一気にモヤに取り囲まれてしまう。あっという間に騎士も、あの使用人の姿も見えなくなってしまった。「嘘でしょう?一体何なの?これ……」前に進もうにも、全体に不気味なモヤがあるだけ。手で振り払おうとしても、まるで雲のようにふわっとすり抜けてしまう。こんなの当然、

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    --- 父、ジャコモ・スカルラッティの裁判が始まった。 王族専用の席には私とルイス、国王マルツィオと例の、ビアンカ王妃。 傍聴席側には、私の継母と異母弟もいる。 エルミニオは島でのあの一件以来、久しぶりに顔を見せたが、謝罪する素振りすら見せなかった。 危うくルイスが殺気全開でエルミニオを剣で貫きそうな勢いだったけれど…… 何とか私が宥めて、その場は収まった。 この場には当然、リーアも出廷している。 島で見せた悪女のような顔は一切なかった。 やはりいくらリーアでも、物語の脇役たちの前では何もできないのかも。 それに今のエルミニオも、操られているようには見えなかった。 ただ、時々私を妙な目線で見つめてくるのを除いては。「罪状。ジャコモ・スカルラッティは、娘を王太子妃にすべく、最もそれに近いリーア・カリヴァリオス伯爵令嬢を消すべく、偽の王命書を偽造し、あまつさえ王の偽の御璽までも作って、巧妙に周囲を騙し……」久しぶりに見たジャコモは頬がやつれ、髪や髭もほどよく伸びていた。 悪党らしくもなく、返って潔く、ジャコモはその場で自身の犯した罪の数々が読み上げられるのを黙って聞いていた。 あの後、マルツィオがかなり徹底的に調べたのだろう。 ジャコモの犯した罪が次々と明らかになっていった。 しかし、ジャコモが犯したとされる『星の刻印』の偽装工作については結局何も分からなかった。 だが、ジャコモは最後に悪党らしい顔つきをして、私の方を見上げて言った。「だから私は言ったのですよ。 もし、本当に私がロジータの『刻印』を偽装したのなら、わざわざ彼女が8歳になるまで待つ必要はなかったはずだと。 その証拠に……結局、エルミニオ殿下の刻印は変化したのですよね? それこそ刻印を偽装など、牢にいた私にはできない行為だ。 つまり元々、殿下とロジータは本物の相手だったということですよ。 まあ、今となってはどうでもいいことですが。」ジャコモは恨めしそうな目をして、私を見つめる。 対する私も、決して彼から目を逸らしたりもしな

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    そう考えると辻褄が合う気がする。「ロジータ、お前……分かってはいたが、やはり賢いな。さすが俺の妻だ。」———と言ってルイスは私をベッドに、自分と一緒に横倒しにした。「きゃっ。って、何?ルイス、突然。」「だって、せっかく二人きりになれたのに。 確かに考えなければならないことはたくさんあるけれど、俺たち夫婦の時間が、あまりにも少なすぎると思わないか?」横に寝転んだルイスは、さらっと私の髪を撫でた。 私の心臓がまたうるさく騒ぎ始める。 最近ますます、ルイスの色気は炸裂している気がする。「きれいだ、ロジータ。お前のその碧い瞳とか、ちょっと下がった眉とか、長いまつ毛とか…… 蕾みたいなその唇が可愛い。 だから、キスしてもいいか?」「だから?って……まあ、……ど、どうぞ?」ルイスが殺し文句みたいなことを言ってくるから、実際の私はほとんどやられている。 だってルイスが、かっこよすぎるんだもの! そっとルイスの手が私の頬を撫で、顔が近づいたと思ったらキスされて——— 熱い体で抱きしめられて。 ああ、もう……耐えきれないほどの幸せ!「ロジータ、愛してるよ。」 「わ、私も……っ、て、ルイス?」いよいよ私たち、次の段階に進むのかと期待していたらまさかのルイスがお疲れ状態。 寝落ちしそうな雰囲気を出しているし、まあ最近忙しかったから仕方ないかなと思っていたら。 横に寝転んだルイスが、寝言みたいに呟く。「俺、こんな風に優しい気持ちで誰かを愛して…… 結婚式……ごめ、ん……な。 ウェディングドレス、あんなに楽しみに……して、たの……に。 病院……血液検査……あんなことに、……なっ」「ルイス?」しん、とした後、ルイスの寝息が聞こえてきた。 今は違う意味で心臓が音を立ててる。 眠っているルイスの顔を真剣に見つめた。「血液検査って、それ絶対この世界で使わない言葉だわ。 ルイス……あなた一体それ、どこで覚えたの?」温かいルイスに私はぎゅっとしがみついた。 違うと分かっているのに、ルイスが私に希望を抱かせる。 同じ刻印になれただけでも嬉しいのに、これ以上欲張ったらバチが当たる。 懐かしい彼の面影を重ねる。涙が溢れてくる。 忘れてないわ。 この世界で本当に愛したのはルイスだけど、前世で愛したのは間違いなく彼だから。「理佐貴……」

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    ーーー「ねえ、ルイス。現王妃のヴィアンカ様について、どれだけ知っている?」「どうしたんだ?突然。ロジータ。」久しぶりに二人きりでゆっくりできる夜。先にお風呂に入った私の後で、ルイスもさっぱりしたガウン姿で、寝室へと入ってきた。ルイスはすぐに私に両腕を伸ばし、ごく自然に額にキスをする。照れながら私は「そうじゃなくて……」と言うのだけれど。少し拗ねたようにルイスはベッドに座り、私も横に並んだ。「継母上《ははうえ》か……そうだな。俺が幼い時に母上が亡くなって、すぐにヴィスコンティに嫁いできた、モンテルチ国の元王女。家族と積極的に接してこなかったから、あまり詳しくは知らないな。ただ、兄さんが彼女のことを毛嫌いしていた印象がある。」「エルミニオ様が?」「母上が亡くなって、すぐに父上が新しい王妃を迎えたことが、子供ながらに嫌だったんじゃないかな。確かに彼女はどことなく、俺たちには冷たいようだったし……」「そう。モンテルチ国の元王女様ね。原作にない内容だから、さっぱり分からないわ。」「何を悩んでいるんだ?」「あ、あのね。今日……って、ルイス怒らないでよ?絶対に。」「内容による。」まだ何も言ってないのに、ルイスは早くも唇を尖らせる。「今日、たまたまダンテ様に会って。」「……はあ。ロジータ。俺はこの間の島でのことも根に持ってるのに。兄さんーーエルミニオを殺さないよう必死に耐えてるのに。」って、ルイスあまりに腹が立って、エルミニオを呼び捨てにしてる?「あ、あれは不可抗力だわ!私だって嫌だったのよ?それに落ち着いて!ルイスがエルミニオ様を殺したら、色々問題が起きるでしょう?」何とかルイスの怒りを宥めようとする。「それで、ダンテは何と?」

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    あれからもルイスの多忙は続き、私たちは見事にすれ違ったままだった。 たまたまアメリアとルイスの庭園を散歩していると、ダンテに出会った。 今日の護衛はマルコではなく、新人。 ただし、ダンテのことは知っているようで敬意を払うだけ。 アメリアも無言でそばに控える。「ロジータ様、お久しぶりです。」「お久しぶり……というか、ダンテ様、ここで何を?」ダンテは物語の都合上なのか、中立派である侯爵を父に持つ立場でありながら、王国のあらゆる庭園に出没できる。 エルミニオの親友という信頼もあるんだろうけれど……自由すぎない?「もしかして、私を警戒しています? ひどいですね。 あれだけ取引し合った仲なのに。」「取引し合った仲って……それより、何か用事ですか?」ダンテは被っていた帽子を取り、金色の髪を靡かせた。「つれないですね。 これでも、あなたの顔を見に来たんですよ。 ルイス殿下が王太子になり、色々なことがあったので、どうされているのか気になって。 しかもあなたの刻印が、変わったそうですね。 ……あれから、リーアとはどうです?」親友であるエルミニオが廃位したと言うのに、ダンテはどこか、淡々としている。「私に聞く前に、あなたこそどうなんですか? リーアへの気持ちに何か変化はありましたか?」ここへどうぞ、とダンテは庭園にあるベンチの上にハンカチを敷いた。 遠慮がちに座ると、彼はわずかに微笑する。「リーアは相変わらずです。 ですが以前と比べると、どことなく苛立っているようです。 本当なら今頃、エルミニオが彼女を王太子妃にすると宣言していたはずですから。 エルミニオもすっかり変わってしまったし、リーアも……」どこか寂しそうにダンテは俯く。「ダンテ様は、なぜそんなにお金が必要なんです?」思わず、ずっと気になっていた質問をぶつけた。 ダンテは面食らったような表情を浮かべて……「気になりますか?」原作で、ダンテの切ない恋心を書いたシーンはあったけれど、その人物像までは見ていない。 生誕祭が終わり、ルイスが処刑されると、今度はジャコモの悪事が次々と暴かれていく。 そのほとんどの過程が原作とは大きく変わってしまったから。 そろそろ私の原作の知識もこの辺りまでになる。 あの後小説が更新されていたら、ダンテのことも何か分かっていたのかも

  • 悪役令嬢は星に誓う〜婚約破棄と契約結婚で愛と運命を逆転させる〜   第三章:ヴィスコンティを覆う闇

    その男は、一番に愛する妻を目の前で失ってしまうという事実を受け入れられなかった。「キアーラ!なぜ私に黙って禁忌の治癒力を使ったんだ……! こうなると、分かっていたはず!」暗い寝室には、彼と死にかけた彼の妻、神官と医者が佇んでいるだけ。「ごめんなさい、あなた…… でも私、どうしてもルイスを助けたかったの…… あの子には呪いがかけられていた…… だから、私……ゴホッ、!」「ああ、頼む。死なないでくれ、キアーラ。 君を愛しているんだ。君がいなくなるなんて、耐えられない。」「あなた……お願いします。 どうかルイスを、恨まないであげてください。 悪いのは彼ではないから…… どうか、エルミニオもルイスも、分け隔てなく愛してあげて…… それから、モンテルチには気をつけ……て……」「キアーラ!!駄目だ、キアーラ!!逝くな……逝くな……。 君の命と引き換えに助かったルイスに、これからどう接すればいいか、分からないじゃないか。」マルツィオは悲しみを消化できないまま、この場にいる全員に緘口令を敷いた。「この事実は、口が裂けても誰かに漏らしてはならない!エルミニオにも、ルイス本人にもだ!」冷たくなった妻、キアーラの遺体を抱きしめてマルツィオは喪失感に打ちひしがれた。 幼いルイスに対して、どう接していいか分からず、冷たく当たった。 ルイスが誰かに呪いをかけられ、そのためにキアーラが治癒力を使い、死に至ってしまったという事実が彼を深く傷つけた。「誰がこんな呪いを? モンテルチ。あの王女がいる国か。」彼は妻を亡くした悲しみに暮れる間もなく、真相を探るためにモンテルチの王女、ビアンカ・モンテルチを後妻に迎えた。 以前からビアンカは、マルツィオの第二の妻に迎え入れろとうるさかったのだ。 しかし誰も知らない事実がある。 実はマルツィオは彼女との婚姻後、言い訳して夜伽どころか初夜さえ避けていた。 理由はただ一つ。「必ず真相を暴いてみせよう。……無念の死を迎えた、私の最愛の妻のために!」マルツィオは強く心に誓っていたのだ。 最愛の妻を意図的に殺した犯人を、必ず突き止めると。 ーーー ルイスが王太子になってから、早1か月が過ぎた。 元々彼を推していた第二王子派の侯爵は嬉しそうにルイスの側で、必要な教育を施して回った。 だが、肝心のルイスは

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status