ハランに手を握られ、霧香もそれとなく握り返す。 これが演技だと思うと、逆に緊張してしまう。俳優のようなクオリティは求められないにしても、モノクロームスカイのKIRIとしてこの場に存在する事。 今まではネットで演奏動画を上げるだけの生活だった。まだまだ人前に出るのは慣れてはいない。「凄い人だね。ライブって何時からなの ? 」「今日は十七時から。Eos≒エイオスって名前の男性四人のロックバンド。東海地方拠点で全員美男」「ふーん。……まだ十三時なのにもう待ってんの ? 」「物販が十五時から。並ぶには早いけど、かと言って絶対買い逃ししたくないって人はこのくらいの時間に来て……土地勘があれば周囲に散らばる。向かいのカラオケとか混んでると思うよ」「物販かぁ〜。確かサイもVtuberの時のタコグッズ売ってた気がする」「彩はデザインとか、そう言う学校出身なの ? 音大に行かなかったのが意外過ぎて、他の経歴知らないな」「ううん。独学って言ってた。 でも、わたしサイの作る服……好きなんだ……。服だけじゃなくて、音楽もギターもヴァイオリンも全部」「センスが同じってことかな ? 」「わたしはセンスないから……どうだろう。同じってより……」 その時、背後から「すみません」と声をかけられる。 来た。 二人が振り向くと、そこには三人の女性が立っていた。「もしかして、モノクロのKIRIさんですか ? 」 モノクロ……とは ? モノクロームスカイは既にモノクロ呼びが定着しているのか。 しかし確かにKIRIであることは間違いない。「あ、あの。そ……そうです」 霧香がはにかみ答えると、「きゃー」と声が上がる。「ハランもいる ! 」「一緒に歩いてる
Terakhir Diperbarui : 2025-10-08 Baca selengkapnya