ホーム / 恋愛 / 黒と白の重音 / チャプター 31 - チャプター 40

黒と白の重音 のすべてのチャプター: チャプター 31 - チャプター 40

69 チャプター

14.紅梅 - 1

 引越しは一日がかりだった為、撮影は次の日に持ち込まれた。 四人分を一日でとなれば当たり前のことだが、意外と持ち込む荷量が多かったのはハランだった。ハランはこれからも今までいたマンションは契約し続ける事を告げていたが、それでも段ボールで部屋の半分が埋まった。 彩は今まで作り溜めた音源をいくつかピックアップし、全員に夕食後に渡した。 コンセプトやチェロの件は蓮と打ち合わせ済みで、ハランも文句無し。そのまま事はスムーズに動き出し、全員楽譜を受け取った。「それで、二人にお願いがあるんだけど」「俺とハランに ? 」「俺たちは……ネット配信をメインで活動する。ステージに立つことは少ないと思う。 ネットで気軽に配信出来るメリットってのがある。 例えば生配信。生配信のコメントなら、コメントしたファンは直接俺たちに言いたいことが伝わってるっていう独特の空間の楽しみ。ファンとの距離感が強いんだ。会ってもいないのに同じテーブルで喋っていると錯覚するくらいに」「うん。俺も蓮も分かってるよ。今まで俺たちがミュージシャンとして活動してきた事とは、根本的に変わるって事だよね ? 」 彩は頷き、別に用意していた用紙を二人に見せる。これは恵也や彩のDMに来ていた『霧香と蓮、もしくは霧香とハランに交際していて欲しい』という、多くの支持を得ている、ファンからきたメッセージのプリントアウトである。 蓮は頬杖を付き溜息をつく。ひと目で不機嫌になるのが分かったが、ハランはメッセージを見てクスクスと笑い足を組み直す。「皆んな、意外な事考えるなぁ〜」「……で ? これがなにか関係あるの ? 」 ここで切り出せる彩もなかなかメンタルが強い。「撮影中、なるべくキリに絡んで欲しい。隙あればキリを奪っていくスタイルで。 最初はこう言う、キリに向かってくる下衆の勘繰りをさせない様にと考えたんだけど……もう、このファンの期待に答えようと思う。 好きなだけ勘繰らせて、なんなら『どっちと付き合っ
last update最終更新日 : 2025-09-23
続きを読む

15.紅梅 - 2

 動画撮影、当日。 朝食の皿が下がった所で、彩が切り出す。「これから撮影に入るから。カットはなるべく入れたくない。実写の編集めんどくさいんだ。余計な失言はなるべくしないでくれ。 大まかな流れはここに書いて来た」 そう言ってコピー用紙を全員に配る。 恵也が受け取ってブツブツ読み上げる。「食堂で俺とサイがキリと撮って、メンバー紹介して……俺の部屋紹介で猫 ?  なにこれ、猫ってだけ書かれても分かんねぇよ 」「あの黒猫写真の一件を一度鎮火させたい。 シャドウ、申し訳ないがこの時だけ猫に戻ってくれないか ? 」 シャドウはキッチンで牛乳を飲んでいたが怪訝な顔で彩を見る。「俺をペット扱いしないでくれ」「そんな気ない。 家中映して、飼ってると公言してる猫がどこにもいなかったら『外飼してるんじゃないか』とか変な噂が出るかもしれない。ペットのマナーは叩かれやすいんだ。悪徳な人間はお前がよく理解していると思う」「そういう事か。 異論ない。うむ。霧香がそんな言われ方をするのは望まん。協力しよう」「それに人型のシャドウも撮りたい。これだけの食事や屋敷の清掃をやってくれる事に、俺たち全員は感謝すべきだ」「そうだね。賛成」「朝、こんなちゃんと食う生活久しぶり」「すげぇバランスも取れてるもんな」 これには全員一致で頷く。「じゃあ、シャドウ君。ケイの部屋で待機して、無理やりケイが抱っこしようとするのを、シャー !! バリバリって引っ掻いていいよ」「ほう」「ほう……じゃねぇよ !  だったら、一緒に猫カフェに引取りに行ったレンレンに懐くって絵面の方が普通じゃないの !? 」「ケイなら多少引っ掻かれても絆創膏が似合いそうだし、撮れ高的にケイで行こう」「これだから動画配信者はぁぁぁ」 シャドウは牛乳を飲んだグラスを洗い、猫型に戻
last update最終更新日 : 2025-09-24
続きを読む

16.紅梅 - 3

「元々一緒に住んでたんだよね ? 」「うん。音楽関係者に間貸ししていいよって言われてたし、一応誰を呼ぶかはママに言うしね」 既に蓮と同居していた事実をぶち込む。「なんかさ〜。イケメンじゃん ? 前も言ったけどさぁ。好きになっちゃうとか、無いのっ !? 」「無いよ〜。 っていうか、お手伝いさんもいるし、全くの一人暮らしでは無いじゃん。 蓮は会話とかなくて割と部屋に引きこもってるから。だって普段はAngel blessのメンバーといて、他は黒ノ森楽器店で働いてるじゃん ?  一緒に住んでても、廊下ですら会わないんだよねぇ」「会わねぇんかい !  えぇぇ ? じゃあほんと、居るなぁってだけぇ ? 」「そんなもんだよ。わたしも配信部屋でひたすら投稿と生配信だし。 あ、でも。さすがに猫飼う時は相談したけどね。ほら、アレルギーとかあったら飼えないしさ」「そうなんだ〜。 ところで、蓮とハランはAngel blessは続けるの ? 」「うん。もちろん。楽器店と三足の草鞋を履くよ。 ここの加入の話は、京介から経由で聞いたのね ? 「行ってくれば」って話貰って。そして俺も即OKだった ! あはは」 ハランが左隣の霧香を見て微笑む。「だってさ。霧ちゃんと生活して、音楽もやれるって最高じゃん ? 」『最高』を断言である。 これにはヤラセと分かっていても、あまりの恥ずかしさに霧香は手でパタパタと顔を仰ぐ。「いやいや、でも……。 わたしたち、ゴシックをメインにやって行こうと思ってるんです。 そしてこの配信がアップロードされる頃には、五曲あげる予定なんだけど。 ひとつはゴシック・ロック、ゴシック・パンク、和ロック風ビジュアル・ロックって感じで。わたしはチェロとベースどちらもやるし、サイはバイオリンにも行くんで、是非聴いてみて下さいね。 激しいのも静かなのもやるんで、ご期待下さい」 全くハランへの返
last update最終更新日 : 2025-09-25
続きを読む

17.紅梅 - 4

「部屋、狭くない ? 」「全然。快適」 恵也がドアを開けるとシャドウが部屋の中からぴょーんと霧香の胸へ飛び込んできた。「シャドウ君〜ここに居たの〜 ? 」 ふわふわの毛に頬を寄せる。 動物と美少女が撮れた所で、恵也……渾身の演劇 ! 「俺の部屋にいるの珍しい !   なぁ、俺にも撫でさせてぇ」「いいよ。はい」 ハゥーーーーーーッ !!!!「よっこいしょ……イデーーー  !!!!! 」 シャーーーッ !! バリバリ !! 「「ぎゃははは」」 ヤラセとはいえ、シャドウも派手にやったものである。  鼻のてっぺんとTシャツに三本線を付けた恵也が悶絶。「痛〜」「はぁ〜ウケる。  あ、んでこれが炎上の写真ね ? 」「ん痛ぇ〜そうそう。俺ここに猫の写真あるの知らなかったんだよ」「サイもケイも加入して、その日のうちに同居だもんね。  ってか、え、大丈夫 ? 流血やばいんだけど」 実はカメラはだいぶ前から下を向いている。「ちょっと映せないかな。YouTube 血液NGなんだよ」「まじで !? ティッシュティッシュ」 焦る恵也だが、指で血を拭ってから気付く。通常より止血が早い。契約者ならではの身体の変化だった。特に護衛役の第五契約者は余計に頑丈に変態する。「大丈夫 ? プププ」「大丈夫……ではねぇよ。全然懐かねぇのアイツ」「触り過ぎるんじゃないの ? 」「もう〜痛ェなぁ。  じゃあ、俺の案、箱に入れるな。それ !   よし ! 気を取り直して次はスタジオかな」 恵也の部屋の向かい側がスタジオ。 スタジオを映し、設備や機材の話を終え二階に上がる。 霧香が途端緊張してきたのが彩には分かった。  この急激な感情の変化に気付くのが第一契約者の特色
last update最終更新日 : 2025-10-01
続きを読む

18.紅梅 - 5

「え ? 今のコケたの、ワザと ? 」「有り得ねぇ。そんなピタゴLoveスイッチみたいな事あるの !? ハラン、顔色一つ変えねぇし !  ちょっと気まずくなって照れたりとか無いのアイツ !? 」「別にわたしも好きで転んだわけじゃ……」 ハランの部屋のドアが開く。「聞こえてるよ……お前ら……」「……うん。すまない」「これだからイケメンは……って、サイ……湿疹出来てんぜ ? 」「あ……蕁麻疹……。薬飲んでくるから待ってて」「お前、マジか」「サイ、耐性無さすぎ……今のはたまたまだし、ちょっとヨロけただけだよ ! 」「いや、もうガッシリ抱きつかれてた。突然、抱きつかれるなんて絶対無理。    俺なら避けてでも女の子触んない」「「なんか……それはそれで最低」」 □ エントランスにある階段を上がって東奥が彩の部屋だ。ハランと彩以外、東にある他の部屋は空き部屋である。 彩の部屋は特に変化は無い。 相変わらず家具のない部屋に、パソコンとベッドだけ。唯一、楽器用の防湿庫にあるバイオリンについては、彩自らオーケストラ時代の話題に触れた。あっさり書いてあったバンド名の候補を箱に入れて終了となる。 次は西にある霧香の部屋だ。その隣が蓮の部屋だ。 そして、霧香の部屋が開かれる。「わたしの部屋です」「…………」「うーん」 別にダメでは無い。 しかし霧香は紅一点。部屋紹介という点でも、一番の盛り上がりを見せなくてはならないはずだが。 …&h
last update最終更新日 : 2025-10-02
続きを読む

19.躑躅色 - 1

 彩は編集作業の為自室へこもった。 昼食を食べ追えてから、霧香と恵也は彩の部屋へ向かう。「レンレンとハランって、全然違うよなぁ」 恵也の『理解出来ない』という一言に、霧香は首を傾げる。「そりゃあ、違う人なんだし……」「そうだけど、こう……俺が言いてぇのは、二人ともスペックとかレベル的には同じくらいじゃん ? ファンの数もそう変わんねぇだろ ?  顔付きは違うけど、イケメンレベルが同じくらいって言うか」「ケイって凄い『イケメンイケメン』って言うよね」「だってイケメンじゃん」「整ってるとは思うけど……。ヴァンパイアとか天使なんてそう造られてるだけで人間みたいな親しみないよ。 だからサイとかケイのイケメンとは、味が違うじゃない ? 」「え !? 俺 !? 」 霧香の中で、自分もイケメン認定されている事に恵也は今、嬉しさの前に大きくどうようした。「お、俺は違くね !? 」「そうかな ?  わたしが思うに、悪魔や天使の綺麗な顔より、人間の美男美女の方が価値が高いと思うんだ。 サイは印象薄い感じだけど、儚げで鬱陶しくないし、ケイは身体とバランス取れてるじゃん。ハランみたいな顔でその筋肉だったら気味悪いよ」「その人に合った顔って事かぁ」「うん」 とは言え、悪魔や神が人に化けるにしても、見た目を選べない事が普通だ。人間を唆す事に特化した悪魔なら別だが、単純に『人に化ける』としか魔法をかけられない。「おーい、サイー」 中から「どうぞ」と声がする。「進んでる ? 」「そんなすぐ出来ない。こないだのシャドウの写真立て事件がかなりトラウマ。何か映り込んでないか、あちこち観ちゃう。撮る場所って統一するの大事だなって実感してる。 問題発言とかは無かったし……と思うんだけど」「問題かぁ&he
last update最終更新日 : 2025-10-03
続きを読む

20.躑躅色 - 2

 撮影も無事終了。 流石の面子である。 音源分と動画加工用に二回弾いて計十五曲。ストレートで撮り終わる。 全員、着替えてメイク落としたら夕食まで休憩だった。 そして遂に、箱を開ける時が来る。 夕食後、全員パジャマでスタジオに集合。 霧香に彩が作った白いガーゼワンピースは天使の様にふわりとした印象が可愛らしい。 彩はガッツリ霧香を自分色に染めているが、根がズボラな霧香は上げ膳据え膳の生活である。「いよいよかぁ」「これで決まらなかったら動画もオフレコになるけど」 キリとサイが顔を見合わせる。「早かったね」「確かに」 出会ってからまだ一週間程しか経ってないのに。 もう始動してる。「音楽の編集は半分頼んでいい ? 」「うん。出来るよ」 霧香は彩からデータを受け取る。 彩がカメラを回し、恵也に合図を送る。「で ? 皆んなはなんて書いたのかな ? 」「これ、筆跡でバレるよな ? 名乗って貰った方がいいな」「誰がどんなイメージでこのバンド名考えたかって楽しみではある」 箱を霧香が開封する。 出てきた五枚のメモ用紙。「じゃあ」 全員頷く。 霧香に連動して彩にも緊張が伝わる。つまみ上げた一枚をパッと開き、読み上げながらカメラに向ける。「まず一枚目 !! 『ゲテモノゲソ天むす』………アウト !! なにこれ !!? 」 蓮が挙手。「『ゲソ』は残した方がいいのかなと……」「にしても ! にしてもだよ ! 結局、イロモノ感が抜けてない ! 」「だってお前のベースがもうゲテモノマシンだし。このバンドの方向性がゴシックとか、今日聞いたしさ。ゴシックの世界観にあんなSFみたいな物体ある ? 」「ぐぅ !! にしても、適当に書きすぎ
last update最終更新日 : 2025-10-04
続きを読む

21.スターチスピンク - 1

 モノクロームスカイ  チャンネル登録者数 33000人弱。 元々いたSAIとKIRIのリスナーに加え、蓮とハランの加入によりAngel blessのファンもなだれ込んで来た。 特に X では千歳がモノクロームスカイのYoutubeチャンネル、X 、霧香のインスタもフォローした事でAngel blessの弟分のような扱いになり始めた。 更に紅一点、霧香の人気は凄まじい威力で、あの汚部屋事件ですら、庇護する女性ファンも出てきて物議を醸し出している有様である。 そんな人気に拍車を掛けているのがやはり蓮とハランの霧香へのちょっかい。 あれは彩に仕組まれた贋作の恋模様。 でも、誰もそうは気付かないし言い出さない。 それはそうなのだ。 事実、二人が霧香に好意があるのは事実なのだから。 そこで今度はメンタリスト系YouTuberからDMが来る。 つまり『行動や仕草から霧香がどう思ってるか本音を当てます』という動画を撮りたいとのコラボ要請である。 彩はこれに関し、コラボはしないがモノクロームの動画を切り抜きで使用することに関しては了解した。「おはよう〜」 全員がダイニングリビングで朝食を取り始めた頃、ようやく霧香が起きてきた。「……はよ……」 半分寝ぼけ眼のまま起きてきた霧香が椅子に座り、そのまま数分ボンヤリする。「キリは朝弱ぇよな」「……んー」「出来れば食事は全員揃って、いただきますしたい」 彩の無情な提案。 それに対しシャドウが、霧香の皿に目玉焼きを乗せながら、くすりと笑った。「これでも良くなった方だ。 以前は昼頃起きて、朝は食べなかったぞ」「想像つくな……」「ヴァンパイアだから朝弱いってあんの ? 」 恵也に聞かれ、蓮はそれを否定する。「人と同じで個体による。&hel
last update最終更新日 : 2025-10-05
続きを読む

22.スターチスピンク - 2

 昼食後、彩は霧香の部屋に来ていた。「今日は……これかな」 彩が持ってきたのはパステルグリーンのレースで仕上げられた姫ロリ系の服だった。統計的に、姫ロリは甘ロリ系統ではあるが、更にドレスアップされた雰囲気が特徴的だ。まさに正反対。楽器を弾いている時や配信中はスタイリッシュ×セクシーではあるが、私生活は跡形もなく華奢な美少女。「このタグ……前に行ったDream rabbitって言う店のやつ ? 」「そう。Dream rabbit のアパレルビルの近くに、黒ノ森でやってるライブハウスがあるの分かる ? 一番デカいとこ」 霧香は未だ黒岩 樹里と面識は無いが、彼女の運営する音ビルは他にもある。そのうち、一番の敷地面積のあるビル。それがライブハウス ∞ 〜インフィニティ〜だった。楽器店の最上階にもライブハウスはあるが、最大定員数が全く違う。このライブハウスの大きさを刻んで変化していくのも、ミュージシャンの醍醐味とも言える。 ∞ は二階建てではあるが、連日その通りは賑やかで、歩行者の半分は客か、関係者で溢れかえっている。「知ってる。そこがどうかしたの ? 」 その時、ノックがした。「ただいま。霧ちゃんー。用意出来てる ? 」 ハランだ。 キリは脱衣所に行き着替え、彩が部屋へ招き入れる。「丁度いい。中に」「彩いたのか」「申し訳ない」「ふふ、まさか」 ハランが部屋をぐるりと見回す。 ハランが霧香の部屋に入るのだけは初めてだった。「動画の時より片付いてるじゃん。あれ、ワザとだったの ? 」「……午前中、シャドウと俺で掃除しまくった」「えぇ…… ? 仮眠しろって言われてたろ 」「なんか知らんけど、ここの汚い部屋みたらアドレナリン出まくって……昨日はカーテン縫ってたんだ」「カ
last update最終更新日 : 2025-10-06
続きを読む

23.スターチスピンク - 3

 タクシーを呼び、家で待つことは出来ない。招いたら屋敷が視認できる様にはなるが、用心のため配達物もポストも、タクシーを待つのも屋敷の下の道路沿いだ。「なんだかドタバタしてるね俺たち。ただの買い物なのに」「どこかでハランと待ち合わせした方が良かったね」「大丈夫だよ。その分早めに蓮に押し付けて出て来たし。 飲む ? 」 ハランが開けたばかりとはいえ、飲みかけの水を差し出すが、霧香はそれを当然の様に手に取り飲み出す。「はぁー。喉乾いてたんだー。 なんかこの服、後ろのリボンとか慣れてないから、凄いモタついちゃってさ」「彩は、独特だよね。人との距離感も、演出も。受け入れてから付き合わないと……彼の友人はやっていけなそう」「こだわり強いもんね ! 個性的で好きだなぁ」「……」 タクシーが到着し、乗り込む。「それで、ゲリラがどうのって何の話し ? 」「あぁ、それね」 ハランは彩に言われたことをやはりそのまま伝えなかった。 □「……へぇ〜。そりゃあ、ファンの子だって、色んなアーティスト好きだろうし、一番の推しが誰かは自由でしょうに……って思うけど……」「そうだね。でも一人でも多く興味を持たれないと意味が無いよ」「……でも、手を繋ぐのは……違くない ? それで推しってなってもらえるとは思えないんだけど……」 ハラン。 手繋ぎデートを所望。「だってサイとしては、蓮とハランのやり取りを観せたいんでしょ ?  ……じゃあ、次は蓮と手を繋いで歩いてこいって言われるのかな ? 」 ハランは爽やかに「どうだろうね ? 」とだけ返す。「よく分からないけど、彩のおかげでモノク
last update最終更新日 : 2025-10-07
続きを読む
前へ
1234567
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status