Home / 恋愛 / 黒と白の重音 / 29.一斤染め - 1

Share

29.一斤染め - 1

last update Last Updated: 2025-10-13 11:00:00

 駅からバスに数十分乗り、ようやく港町に到着出来る。

 少し先のバス停で降りれば砂浜に行きやすいが、霧香はその前に降り、ダブンダブン揺れる船を眺めながら歩道を歩く。

 潮鳴りを聴きながら頭を空にする。

 歩道から海まで距離こそあるものの、魔力で水の気配を辿れば流れや動きも手に取るように感じ取れる。

 十分程歩くと、やがて歩道が最も岩礁に近付く区間に差し掛かる。眼下に飛び込んでくる岩礁と三角波。そして地平線から上には紫色と赤色のグラデーションが続く。

 ガードレールに手を付き、大きく深呼吸する。

「スゥ〜……ハァ〜……」

 だがすぐにその静寂が破られる。

 喧しいバイクのエンジン音。

 波の音を掻き消しながら近付いて来る。霧香はムッとしてバイクの来る方向を睨みつけた。

「はぁっほー !! 」

「ギャハハハ」

 霧香より少し上の歳程で、時代遅れな風貌の若者が三人、近付いてきた挙句に霧香の前で止まる。

「一人っすか ? 遊ぼ 」

「飯とかどう ? 」

 霧香は無関心を貫き歩き出すが、少年達は離れようとしない。爆音のバイクをノロノロと走らせながら霧香にまとわりつく。

「その服可愛いっすねー」

「高校どこっすか ? 」

 やはり自分は高校生くらいに見えるのかと、今はそれがコンプレックスに感じてたまらなかった。

「ねぇ、ちょっとだけだからさ ! お願ぁ〜い」

 突然肩に置かれた手にゾッとし、反射的に威嚇してしまう。

「触んな !! 」

 思い切り手首を取り、関節の有り得ぬ方向へ捻りあげる。

 恵也と初めて会った時もそうだった。

 霧香は普段、自己主張も強くなく、流れに身を任せるタイプではあるが──時々どうしようもなく激昂すると言う本性があるのだ。

「あぎゃ !! 

 何すんだこの女ァ !! 」

「弱くて反吐が出るっ ! 」

 逆上する男たちに更に油を注ぐ

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 黒と白の重音   9.消炭色 - 5

     ダークブラウンと薄紫色で統一された部屋のソファに、本を読むディー · ニグラムの姿があった。 ディーは霧香に気付いてはいるが、さも興味無さげに、脚を組み本から目を離さず忠告する。「不敬だぞリヴァイエル。ここは俺の自室だ」 霧香は真っ向から喧嘩を売りに来た。 そう、喧嘩っ早いのは元からだ。 何とかモノクロのイメージの為にと、港の不良の一件以来、温厚な態度を取って来たが、猫に戻されたシャドウを見た時、抑えきれなくなってしまった怒り。「うちの契約者に随分な仕打ちをされましたね」「教育の範囲内だが ? 」 ディーはそういうと、ようやく本を閉じ霧香を見る。「どうした ? 護衛も連れず。俺と戦争でもしに来たのか ? それとも他の悪魔に泣き付きにでも行くのか ? 」「あはは。戦争なんか ! まさか ! 」「……」「素敵なテラス。外の景色を観ても ? 」「構わんが」 美しい石造りの街。 しかし文明としては、やはり水が無いせいか土も壁も渇き、緑が無い。唯一農園だけはあるようだが、水は他の領土に住む水系の悪魔から輸入し真水にする大掛かりな魔法をかけている。「俺の首を捕りにでも来たか ? 」「あ、それもいいですね ! 」 霧香は笑い手をポンッと合わせる。「でも……わたしなら音楽魔法で暗示をかけます魔力を最大限まで使って歌えば……ヴァンパイア領土を手にすることなんて……」「簡単だと ? 馬鹿げている。王族や民衆を暗示にかけたところで、それはただの砂の城だ」「ですよね。わたしもそう思います」「何が望みだリヴァイエル。第三者機関に言われ、契約者の記憶を戻す魔術の確認をしていたところだ。 今回は俺の方が手を引けと糾弾された。 だが、消して忘れるな。皆、お前が恐ろしいから言っている。 お前には情の

  • 黒と白の重音   8.消炭色 - 4

     霧香はタンスからハランのタオルを漁りながら風呂の準備を進める。「そう言えば、皆んな、恵也をケイって呼ぶようになったね。レンもわたしをキリって呼んだよね ? あれ ? でもいつからだろ ? サイにはいつも呼ばれてるから、すぐに気付かなかったな〜」「キラに川遊びの時言われたろ ? 呼び名がメンバー内で違うのは見てる方は混乱するって。一理あるなと思っただけだよ」「そうだね。わたしもキリに統一しようかな ? 今はインスタは『キリカ』、XとYoutubeはは『KIRI』なんだよな。 サイはSAIだから表記以外はいいとして、ケイもXは『恵也』のままだったはず」「あいつは……。 ほら、お兄さんの関係で、今でもファンとか関係者から連絡来ることあるみたいだから」 そう言われて思い出す。恵也の兄の死。「あれ……一年前……。人間って、ブッキョーの人はなにか集まるんじゃないの ? 」「一周忌な。命日だよ。 確かもう終わってるよ。あれ初夏だったもん。七月頭あたり」「嘘……。ケイ、なんで言ってくれなかったんだろ」「身内の事件だし。お兄さんは俺も会ったことあるけど、お客さんだしな。知り合いって訳じゃないし。 呼ばないし誘わないって事は、家族でだけやったんだろ。今、そういうの小規模じゃん。まして実家が本職だし」「そんなもんかなぁ ? 」 霧香がソッと蓮の膝に乗る。「呼ばなくても、行ってくるって一言も無いなんて……」「……どうかな。事件が事件だったし、あまりお前に恐怖感を与える事はしたくなかったのかも。 モノクロだってVEVOの話も来てたし、動画も好調だったし、波に乗ってきたから暗い話題を避けたのかもな。 ……あいつ馬鹿っぽいけど、意外と男らしいんだよ…&hell

  • 黒と白の重音   7.消炭色 - 3

     そこで樹里が咲に声をかける。「あんたの部屋ダメなの ? 」「うえ !? え、えーと……今は……その。どど同居人が……」「へ ? 」 突然の恋の気配。「嘘 !? いつの間に !? あんたあたしに紹介も無し !? 」「そ、それは置いといて ! お、お姉さんだってそんな事もあるもん ! 」 咲は何故かモノクロにバツの悪そうに取り繕う。「俺たちは何も言ってないですよ。咲さん、お幸せに。 ケイとサイは ? こういう状況だし、仕方ないさ。お前らも俺の実家に住むか ? 」「ロイさんに悪いしなぁ」 遠慮する恵也に希星が畳み掛ける。「ケイ、うちに来るの !? やった !! 」「ま、まだ決まった訳じゃねぇし……」「いつまでもそんな生活してられないだろ ? サイもだぞ」 ハランにいわれた彩は首を横に振る。「俺はしばらく今の生活しようかな。 あそこにいると観光地が近いからカップルが多いんだ。遠出のカップル。 気が済むまで、いてもいい ? 」「お前な……」 生活の心配で皆動いているのに、彩はかたくなに創作に全振りの生活である。 咲が状況を整理する。「ゲソ組のお金は……キラ君がスマホ返して、リーダーは解決ね。 あとは……車かな ? リーダー、流石に寝る時は場所を変えてどっかに泊まるのよ ? なんて言うか、モノクロの印象や評判ってものがあるし、常識の範囲内で行動してね ? 」「ええ」「今回のVEVOの生放送の出演で少し入ってるはずだし……。 あとは……霧香さんのお財布か……。どうする ? スマホも無いのか。えっと&helli

  • 黒と白の重音   6.消炭色 - 2

     かなり離れた町の道の駅にいた三人は朝から出発となる。 霧香は熱心にサブスクでオペラ全般を聴いていた。「キリ、まだ決まったわけじゃないし。あの楽団はそういう曲やらないよ。お祭りの会場だし、一般受けするものしかやらないと思う。真理さんがふざけただけ」「あ〜、確かにな。普通、ダンススクールとかなぁ。お祭りのステージってそういう、明るい元気なのが上がるイメージ」「そう。ガチガチのオーケストラなんてやらないよ。まして屋外だし……カルテットくらいの編成だと思う」 霧香は彩にスマホを返すと、難しい顔をして溜め息を付く。「オペラかぁ〜。かっこいい〜。 そう考えると……ガラスのチェロはますます早く取り戻したいなぁ〜」「あれだって弓は毛だし。雨天で濡れたら弾けない」「うむ〜ん」 恵也がハンドルを握り、もそもそし始める。「……なんか俺のスマホぶるぶるしてる。サイ、見てくんね ? 」 彩がガチガチに固まった姿勢で運転している恵也のズボンからスマホを抜き取る。「誰ってなってる ? 」「……南川さんだ。 あ、俺に先に着信来てた。キリ、言えよ」「頼むぜ、そーゆーのちゃんと出てくれよ」「仕事用のスマホ、キラに貸しっぱなしなんだよな」「それこそちゃんとしてくれよ……」 着信の切れてしまったスマホからかけ直す。「おはようございます、モノクロの深浦です。着信に気付かず大変申し訳御座いませんでした」『いやいやいいんだよ。 あのさ、凛さんから広告の事で霧香さんをメインに使いたいから写真撮りたいとかって話が来ててさぁ。 凛さんに番号教えていい ? っていうか、スケジュールどう ? 忙しい ? 』 完全に暇である。「夏祭りに弦楽で地方のステージに立つかもしれなくて16日の午前に…

  • 黒と白の重音   2025年完走 ! 皆様ありがとうございました

    ま、まさか連載する事になるとは。それもこの子達もお引き取り頂いて、本当に感慨深いんです。何がと申しますと、この主人公キリを中心としたレン、ハラン、サイ、ケイヤ、さらに後日追加キャラになるキラという5人の関係性及びストーリーは高校生の時に執筆した大元の作品があり、それから何度も名を変えジャンルを変え挑戦してきました。まさに私にとって作家人生で初めて産んだ子供達でした。更にプロトタイプは公募にも出さず、ファンタジーやSFという概念を経て生きてきた彼らですから少し『バンドもの』や『恋愛もの』と言うより『日常系』という括りに収まったのかなと思います。これから、配信者活動をゲーム企業から公式配信となった彼らですが、どうぞ引き続きよろしくお願いいたしますm(_ _)m2025 !! 担当様、閲覧してくださった方、また私がGNにたどり着くまで支えてくださった読者様と同業の皆様。本当にお世話になりました ! 良いお年を !!

  • 黒と白の重音   5.消炭色 - 1

     全員が樹里の事務所で合流する日。 蓮はやっと儀式の準備を済ませた部屋で、王政区の者と連絡がついていた。『そうですか。ではこちらの審査次第またご連絡いたします。 こちらでもニグラム様に聴取をして、リヴァイエル様の生活環境の見直しを図りますので』「ありがとうございます。 あの……本当に……。音楽だけは彼女から取り上げないで下さい。 あいつは攻撃の為に魔法を使ったり、戦いに身を置く様な者ではありません」『それはレン様の感情的な物差しにしか過ぎません。 ……ですが、確かに人間の就職活動も大変だと言いますし、それで生活していけるのなら……第五契約者もいるようですし他の悪魔からみを守れるなら、人目に付く行動も……。人間界は法律もありますし、比較的治安のいい国にいるとは聞いていますので』「あとは、屋敷を護る動物契約者もいたんです。勝手に記憶を消されてしまって……どうにか……どうかお願いします」『その場合、動物の記憶は消した本人……つまりニグラム様自身に戻して貰わないといけません。こちらでも説諭してみます』 交信が途絶える。 正直、あの暴君な兄が説諭だけで「はい、分かりました」と言うわけが無い。 蓮は不安なまま、結局シャドウを元に戻せないまま霧香と合流する事になった。 気分が落ち込む。 シャドウの事を「また記憶戻せるかもしれないんだ」と希望を持たせる甘い言葉か、「同じ個体なら記憶が無くなってもシャドウだから」という夢を持たせるか。 蓮が一人掛けソファに垂れていると、突然ドアノブがガタガタ言い出した。「…… ?」 魔法が満足に使えない今、敵襲は困る。だが自分を襲うとしたら、それは自分の身内のヴァンパイアである。この銀製品の多い部屋で中まで侵入出来るとは思えないと決めつけた。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status