ホテルにチェックインすると、清人は部屋で母・真紀の到着を待っていた。本来なら空港まで迎えに行くはずだったのだが、途中で真紀から「ホテルで待っていて」と連絡が入り、清人は深く考えることもなく、そのままホテルへ向かった。部屋に入ってしばらくしてから、清人は口を開いた。「母さん、どうして急に北町に?」真紀は昔から北方の気候が苦手で、普段はほとんど北の土地に足を運ぶことがなかった。真紀は彼を咎めるようにちらりと見やり、言った。「あなたに会いたかったのよ。でも、あなたは全然家に帰ってこないでしょう?それじゃ、どうしようもないじゃない」清人は母の肩を支えてソファに座らせると、そのまま背後に回り、肩を揉みながら言い訳めかして答えた。「仕事が忙しいんだ。時間ができたら、必ず父さんと母さんに会いに行くから」「口ばっかりね」清人は苦笑し、ふと思い出したように続けた。「そうだ、伯父さんは出張中?電話したら電源が切れてたんだけど」真紀はすぐに首を振った。「伯父さんに迷惑をかけるのはやめなさい。あなたに頼まれたこと、彼には解決できないわ」その言葉に、清人の表情が一瞬で強張った。何かを察したように、ソファの背後から回り込み、真紀の正面に立つ。「母さんが北町に来たのって……本当に、僕に会うためだけ?」真紀は答えず、意味深な微笑を浮かべたまま、じっと清人を見つめていた。清人はさらに踏み込む。「司野の奴……父さんに会ったんでしょ?」「あなた、思ったより馬鹿じゃないのね」確信に変わった瞬間、清人の眉間に深いしわが刻まれた。「母さん……」言いかけた彼の言葉を、真紀が遮る。「素羽さんは須藤家の嫁よ。夫婦の間にどんな問題があろうと、部外者のあなたが口を出すことじゃないわ」「あの二人、もうすぐ離婚するんだ」真紀は静かに彼を見据え、ゆっくりと言った。「清人。あなたが今していることが、どういう立場かわかっている?夫婦関係を壊す不倫相手よ」「僕は、何もしてない」「でも、素羽さんのことが好きでしょう?」清人は即座に言葉を失った。「はっきり言うわ。素羽さんが離婚しようとしまいと、あなたと彼女が結ばれることはありえない。私も父さんも、あなたたちが一緒になることを絶対に許さない」「素羽は……本当にいい
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