次の瞬間、司野は支えていた腕を離し、体ごと素羽の上に圧し掛かった。素羽が手で押し返そうとすると、司野は彼女の首筋に顔を埋め、「これ以上動いたら、本気で容赦しないからな」と低く告げた。その言葉を聞いた瞬間、素羽は手を止めた。ぴったりと密着した体越しに、司野の異変がはっきりと伝わってくる。今度こそ、彼の言葉が脅しではなく本気なのだと、信じざるを得なかった。司野は深く何度か呼吸を繰り返すと、体の欲求を押し殺すように身を起こし、ベッドから降りて浴室へと向かった。シャワーを浴び、浴室から出てきた司野は、まだ部屋に残っている素羽を見て、わずかに眉を上げる。「俺がシャワーを浴びてる間に、逃げなかったのか」余計な質問だ。素羽はその皮肉を無視し、胸の奥に溜め込んでいた疑問を口にした。「父を、いつ解放してくれるつもり?」司野は問いには答えず、淡々と言った。「荷物を、ここへ運び戻せ」素羽は唇をきゅっと結び、何も応じない。司野は焦る様子もなく、ゆっくりと言葉を重ねた。「交換条件というものを、知っているか」「好きでもない女と夫婦ごっこをするなんて……いったい、何の意味があるの?」司野は彼女の純真さを嘲るように、ふっと笑った。「今の俺の結婚に、愛情は必要ない。お前は、うってつけだ」すでに未練を断ち切ろうとしているはずなのに、それでも素羽の胸は鋭く傷ついていた。素羽は感情を押し殺し、わざと軽口めいて言った。「そんなに必死に私を追いかけるなんて……私のこと、好きになったのかと勘違いしちゃうじゃない」司野は意に介さず答える。「そう思った方が、お前の気が楽になるなら、そう思っておけ」挑発はまるで通じず、むしろ自分だけが辱められているように感じて、素羽は言葉を失った。荷物は司野自ら車を運転し、素羽を連れて運びに行った。素羽はほとんど荷造りもしておらず、持ってきたのは数枚の服だけだった。司野はそれについて文句も言わず、気の利いたことを口にする。「お前の服はどれもダサすぎる。明日、誰かに頼んで今シーズンの新作を届けさせる」素羽は何も言わなかった。どうせ彼女の意見など、彼にとっては取るに足らないものなのだから。荷物を車に積み込むと、司野は家へは向かわず、そのまま素羽を乗せて大型スーパーマーケットへ向
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