結婚七周年のパーティーで、立花拓海(たちばなたくみ)は幼なじみと三々九度を行う。私は顔色を変える。拓海は皆の前で私を罵る。「友達同士のじゃれ合いだろ?そんなに堅苦しくするな。もし本当に若菜と何かあったら、お前に番が回ってくるわけないだろ」彼は怒って席を立ち、その夜、幼なじみのインスタのプロフィール背景は、拓海と手を繋いだ親しげな写真に変わっている。以前の私なら、必死で幼なじみの家に駆けつけ、拓海を引っ張り出して「私のことを愛しているのか」と問い詰めただろう。でも今回は、もうどうでもよかった。拓海が戻ってくるのは、翌日のことだ。 その時、私は裏庭で七周年パーティーの後片づけをしている。 彼はかつてこう言ったものだ。「世間は七年目の浮気騒ぎを言うが、俺はそんなの信じない。 七周年には親戚も友人も呼んで、俺たちがいかに幸せか見せつけてやる」 その一言のために、私は三ヶ月前から準備を始めた。 毎日、仕事のあと疲れた体を引きずり、パン作りやカクテル、知らない料理を学んだ。 だが、心を込めて用意した七周年パーティーは、彼と幼なじみの早瀬若菜(はやせわかな)がいちゃつく場になった。彼は若菜のために、一晩中帰ってこなかった。 「手、どうした?」 拓海が私の人差し指の傷に気づき、尋ねる。 「昨日、料理してて切った」 彼は鼻で笑う。「そんな簡単なこともできないなんて、お前は何ができるんだ?」 以前の私なら、彼の目に少しでも欠点を見せまいとした。 ひとつの非難に三十分も言い返し、病的に完璧を求めたものだ。 だが今は、一言余計に話すのも面倒だ。 拓海は私の不機嫌に気づいたらしく、腰をかがめて私の手を取ろうとする。「俺がやる」 私は触れられるのを避け、彼は意地でもとばかりにまた手を伸ばす。 もみ合ううちに、私は椅子につまずいて倒れる。「本当に不器用だな」彼が笑う。私は何も言わず、苦しそうに眉をひそめる。ようやく彼は、私の腿の間から血が流れていることに気づく。 「病院に行く」 拓海が私を引き上げる。下腹部の激痛に、私は拒まない。 病院に着くと、ロビーで若菜に出くわす。 彼女は顔色が悪く、弱々しく拓海の胸に倒れ込む。「拓海、胃が痛いの」
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