亮介が母親の性格を理解していないはずがなかった。この態度は、明らかに反対している。この数年、彼は自分なりに親孝行をしてきたつもりだった。大学では突然学部を変えてまで家業を継ぎ、趣味らしい趣味も持たずにきた。ただ、両親が安心できるように。亡くなった兄を想って落ち込む二人を、少しでも慰めたくて。けれど、彩乃を好きになったことだけは、彼の唯一の希望であり願いだった。「反対か?」と亮介は静かに尋ねた。「彩乃は、あなたを利用して過去の厄介ごとから逃げようとしてるんじゃないの?」由紀子もまた、強い口調だった。「彩乃のことを悪く言うつもりはないの。ただね、あの子はあなたにも、この家にも合わない気
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