夜、家に戻れば両親が待っていて、惜しみない愛情を注いでくれた。そんな日々の中で、彼女は好きなように振る舞えたのだ。だが蒼司と結婚してからは、もう朝霧市に行ってお茶を楽しむことも、海外のスイーツを食べに行くことも、ジュエリーのオークションを見に行くこともなくなった。彼女がよく足を運ぶのはせいぜいベビー用品のショップ。スマホに入っている数々の通販アプリから送られてくるのも、子どもや家庭に関するものばかりだった。気づけば、自分がかつてお嬢様であり、誰からも大切に育てられてきた存在だったことを、ほとんど忘れかけていた。ここ数日は、朝早く起きる必要もなく、八月末に控える子どもたちの新学期の準備を
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