志帆の言葉は力強い。自信に満ちあふれている。けれど太一の心に巣食う不安は、どうしても拭い去れなかった。それは度重なる失敗が植え付けた、深いトラウマのようなものだ。かつてのAIプロジェクト『飛鳥』、港湾再開発事業、そして『ドリーム・クラウド』。志帆に乗っかるたびに、手痛いしっぺ返しを食らってきた。もう以前のような無邪気な自信など、どこにも残っていない。ゴホッ、ゴホッ……!病室から漏れる激しい咳き込みが、太一を現実へと引き戻した。結局、彼は一文字も打つことなくスマホをポケットにしまい、重い足取りで病室のドアを開けた。「親父、お湯持ってきたよ。少し飲んで」差し出したカップを、厳は頑として受け取ろうとしない。発作のような咳が収まると、彼はぜいぜいと肩で息をしながら息子を睨みつけた。「……どう、だ。あの女、金は……返すと、言ったか?」太一は目を伏せ、唇を噛む。その沈黙がすべてを物語っていた。「終わった……もう、おしまいだ!」厳は絶望に顔を歪め、痩せ衰えた拳でベッド柵をガンガンと叩く。「すべて……何もかも、終わりだあッ!」「親父、落ち着いてくれ!」叫び声はすぐに激しい咳に飲み込まれた。呼吸困難に陥り、厳の顔からみるみる血の気が引いていく。「親父ッ!?」慌てて太一はナースコールを連打した。……詩織がG市空港に降り立つと、到着ゲートにはすでに響太朗の手配した運転手が待機していた。「わざわざお迎えなんて結構です」事前にそう伝えておいたはずなのに、響太朗はやはり律儀だ。なんだか、かえって気を遣わせてしまったようで申し訳ない気持ちになる。詩織はアシスタントの湊と密を伴って、迎えの車に乗り込んだ。滑り出した黒塗りの重厚な車体が、偶然にも空港を出ようとしていた志帆たちの一行の前を、音もなく横切っていく。志帆は表情こそ崩さなかったが、その瞳の奥には冷ややかな光が宿っていた。一方、美穂は、詩織のために差し向けられたのがただの出迎えではなく、誰もが振り返るような高級車であることに気づき、嫉妬の色を隠そうともしなかった。「ねえ、なんなのよ。あの子、どうしてこのG市にまで有力なツテがあるわけ?」美穂の甲高い声が響く。志帆は伏し目がちに視線を逸らし、すぐには答えなかった。心中では、彼女もまた煮え繰り返るような苛立ちを
Read more