ほんの数日、出張で家を空けただけだ。その間に、妻の一族が総崩れになるなど、誰が想像できただろうか。美穂はただ泣き叫び、「助けて」と壊れたおもちゃのように繰り返すばかりだ。解決策など皆無に等しい状況に、長昭が頭を抱えかけたその時――ピンポーン。無機質なチャイムの音が、修羅場と化したリビングに響き渡った。家政婦が小走りで応対に出る。だが、戻ってきた彼女の顔からは血の気が失せていた。その背後には、制服に身を包んだ四人の警察官が、無言の威圧感を放ちながら立っていた。「柏木佳乃さんは、ご在宅でしょうか」……詩織がその事実を知ったのは、翌日、官庁街での用事を終えた直後のことだった。賢の話によれば、柏木長昭はすでに停職処分を受けており、現在は監査委員会への弁明書の作成に追われているという。栄華を極めた一族がここまで脆く崩れ去るとは、なんとも哀れみを誘う話である。金融界隈もこの話題で持ちきりだった。誰もが固唾を飲んで見守っているのは、賀来柊也の出方だ。彼はこの期に及んで、没落寸前の柏木家をどう切り捨てるつもりなのか。遠方のロケ地にいるミキもまた、この「祭り」に夢中になっているらしく、エイジア・キャピタルの公式サイトを何度もリロードしているようだ。だが、昼を過ぎてもエイジア側からも、柊也個人からも、声明ひとつ出なかった。絶縁宣言もなければ、婚約破棄の発表もない。その沈黙の代償としてエイジアの株価は暴落し、底値に張り付いたままだ。ミキは電話越しに「柏木家は全員ムショ行き確定ね」と嘲笑しつつ、呆れたように詩織に問いかけた。「ねえ、あのクズ也、どこまで強情なわけ?まさかゲス帆の一家が命の恩人とでも言うの?会社を道連れにしてまで、あの泥船と心中する気かしら」詩織にも、その真意は測りかねた。不可解な沈黙に首をかしげていると、アシスタントの密が来客を告げた。太一だった。亡き父である宇田川厳への義理もあり、詩織は面会を承諾した。だが、会議室に入ってきた太一の姿を見て、詩織は微かに眉を寄せた。半月ほど会わなかっただけなのに、彼はひと回りも小さくなったように見える。瞳は光を失って淀み、詩織と目が合うとビクリと肩を震わせる。かつての傲慢で鼻持ちならない態度は、見る影もなかった。詩織は努めてビジネスライクに
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