私が幼稚園の門の前に着いたとき、そこにはすでにたくさんの保護者が集まっていた。沙耶香のクラスの前では、時生も心菜を迎えに来て立っていた。私に気づくと、彼はゆっくりこちらへ歩いてきて言った。「もし俺を怒らせるためとか、心菜に当てつけるためにやってるなら、そんなことする必要ない。昭乃、俺たち本当にここまでこじらせないといけないのか?」私は静かに彼を見て言った。「考えすぎだよ」ちょうどそのとき、子どもたちが次々と教室から出てきた。「沙耶」私は沙耶香に手を振った。女の子はおとなしくこちらへ歩いてきて、にこっと笑ってくれた。その少し離れたところで、心菜は小さなリュックを背負ったまま、ひどく不機嫌そうな顔をして、元気のない様子で立っていた。そのとき、一人の子どもが私に気づき、不思議そうに聞いてきた。「おばさんって、心菜ちゃんのママじゃなかった? この前、病院で見たことあるよ! なのに……どうして急に沙耶香ちゃんのママになったの?」すると心菜が突然こちらに歩いてきて、つんとした顔で言った。「この人、私のママじゃないもん! 私のママはもっときれいだし、すごいんだから! この人は前にうちの家で働いていた家政婦だけだもん」時生が低い声でたしなめた。「心菜」心菜は納得いかない様子で口をとがらせ、私と沙耶香をにらみつけた。そのとき、別の子が沙耶香の前に寄ってきて聞いた。「沙耶香ちゃん、明日もクッキー持ってきてくれる?」沙耶香は一瞬きょとんとしてから顔を上げ、私を見た。黒くてつやつやした目には、少し迷いが浮かんでいる。すると心菜が鼻で笑い、口を開いた。「昨日ね、パパがイタリアのチョコいっぱい買ってきてくれたの! 明日みんなに持ってきてあげる。あんなショボいクッキーより、ずっとおいしいんだから!」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、隣にいた小さなスーツ姿の男の子が眉をひそめて言い返した。「イタリアのチョコなんて、別にすごくないよ。食べたければ、うちだっていつでも買ってもらえる。でも沙耶香ちゃんのクッキーは、外では同じ味のものは買えないんだ。あれは沙耶香ちゃんのママしか作れないんだから!」「沙耶香のママじゃない、あの人は私の……」心菜の言葉は途中でぴたりと止まった。小さな顔が一瞬で真っ赤になる。結局、私との関係を認めるこ
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