記者は違和感に気づくこともなく、旅行についていくつか質問を続け、「ご協力ありがとうございました」と笑顔で言って、別の人の取材へと向かっていった。風がまた吹き抜け、ほのかな花の香りを運んでくる。私は風に向かって深く息を吸い込んだ。すると、高司がこちらを見て、ふいにカメラを構えてシャッターを切った。フラッシュの光に一瞬目がくらむ。彼はくすっと笑い、カメラの画面に映る私を見ながら言った。「これもいい感じだね」そう言ってから、私を見つめる。そのまなざしは深くて、砕けた星の光を溶かし込んだ海のように、私をまっすぐ閉じ込める。彼の瞳の奥に映る自分の姿まで見える気がして、少しぼんやりしてしまい、頬がじんわり熱くなる。その視線は私の目からゆっくりと唇へと移り、喉がわずかに動いた。次の瞬間、彼は少し身をかがめ、温かな息がそっと額に触れそうになる。心臓が一気に喉元まで跳ね上がり、まつげが勝手に震えた。距離がどんどん近づいてくるのが、はっきりわかる。その気配がすぐそこまで迫り、触れそうになったとき、私は思わず両手で彼の肩を押した。高司も我に返ったようだったが、体は起こさず、そのまま私を自分と背後の手すりの間に閉じ込める形で、軽く覆いかぶさっている。私は口を開く。「高司さん、さっき言ってたよね。私たち、ただの友達だって。もう忘れたの?」彼は私の言葉の含みをすぐに察し、低く笑った。「怒ってる?」「怒ってないよ」私はまっすぐ彼を見て言った。「あなたの言う通りだと思う。だから、早く潮見市に戻って、全部きちんと片づけたいの。そのうえで、ちゃんとあなたと一緒にいたい」高司はようやく体を起こし、私の頬にかかった髪を耳にかけてくれる。とてもやさしい声で、「わかった」とだけ言った。そのとき、不意に聞き覚えのあるからかうような声が耳に入った。「いやあ、ついにか。珍しいもの見たな」私はびくっとして、高司の背後に目を向ける。そこには、晴臣が里桜の手を引いてこちらへ歩いてくる姿があった。里桜はサングラスをかけ、かなり地味な服装をしていたけれど、それでもすぐに彼女だとわかった。さっきの私たちの様子を全部見られていたかもしれないと思うと、一気に気まずくなる。けれど高司はまったく動じる様子もなく、さりげなく私の腰に手を回して、彼に声をか
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