奏多side月曜日。 社長室へ入る前に大型会議室に顔を出すと、そこには子会社の五十嵐社長をはじめ、財務担当者たちが一様に顔を強張らせ、椅子に座っていた。息が詰まるほどの重苦しい空気に俺は顔をしかめた。今日から二週間にわたり、この会議室を終日貸し切って行われる月島銀行による社外監査。 事前準備は完璧に整えたつもりだが、メインバンクがこれほど大々的に抜き打ちに近い形で監査に乗り出すのは異常事態と言っていい。誰もが融資の引き揚げや経営権への介入など、最悪のシナリオを予想し、会議室の酸素が薄くなっているかのような錯覚さえ覚えた。「―――おはよう。お前たち、顔色が悪いぞ。もっと胸を張って毅然とした表情で挑むんだ。そんな態度では、銀行側から『何かやましいことがあって隠している』と誤解されるかもしれないぞ」俺はあえて声を張ったが、五十嵐たちの反応は鈍い。「……はい、申し訳ありません」五十嵐は力なく答え、再び視線を落とした。丸まった背中と小刻みに震える指先。五十嵐が監査に柔軟に対応できるとは到底思えなかった。「……月島が来るのは確か十時だったな。仕方がない、俺も同席する。それまでに気持ちを整えておけ。俺は一度荷物を置いてくる」五十嵐がほんの少しだけ安堵の色を見せたことを確認し、俺は会議室を後にした。
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