「頭脳だけじゃなく、肉体の疲労にも糖分は効きますから。俺も大学時代に部活でよく甘味を食べました。今もトレーニング後は食べますよ」「一条君は、ラグビー部だったと聞いている」 蒼也が言うと、陽斗は笑った。どこか獰猛(どうもう)な笑みだった。「よくご存知で。如月社長は何でもよく調べていらっしゃいますね。やっぱり男たるもの、体は鍛えておかないと。いざという時に大事な人を守れませんから」 大柄で体格の良い陽斗が言うと、迫力がある。 一方で細身の蒼也は、わずかに眉をしかめた。「心外だな。僕だってジムには通っている。何かあれば、女性の一人くらい抱えられるさ」 二人の間に火花が散って、美桜は頭を抱えた。彩花はニヤニヤしている。「えー、何? 二人とも、騎士のつもりですかぁ? いいなー、乙女心がくすぐられちゃう」「彩花。お前は黙っていろ」 蒼也が呆れたように言ったので、その場が少し和んだ。猫のミオが「にゃあ~」と鳴いて、みんな笑った。 それを機に蒼也がキッチンに立ち、コーヒーとケーキを運んできたので、4人はソファに座る。 陽斗が言う。「如月社長は、美桜先輩の高校の同級生と聞きました。思い出があるのはいいことですね。でも、公私混同はどうかと思いますよ」「公私混同をした覚えはない。一条君、君こそどうなんだ? 先輩のプライベートにまでついてくるなど、後輩として逸脱しているのでは?」「いやー。猫のミオちゃんに会ってみたくて。社長の憧れの人の名前をつけた猫だから、きっと可愛いんだろうなと」 陽斗と蒼也の間に再び火花が散る。 美桜はいたたまれない気持ちでコーヒーを飲んで、彩花はそんな彼女の肩をぽんぽんと叩いていた。「陽斗君、彩花ちゃんは三ツ星商事に入社希望なの。2年後には優秀な後輩ができるかもしれないわ」 美桜が話題を逸らすと、陽斗は頷いた。「それは嬉しいな。彩花さん、我が社のどんなところが気に入ったの?」「こら、陽斗君。『我が社』だなんて大げさよ。社長や重役じゃないんだか
Last Updated : 2025-11-03 Read more