客たちがざわめき始めた。誰もがロッシさんの名は以前から耳にしていたが、本人を見たことがある者はごくわずかだった。数人の大物たちの視線が、すでに聖也へと向けられていた。聖也が海城市に来た以上、当然まずその数家には挨拶に行っていた。しかし、あの家々は立場が立場だ、この場にわざわざ野次馬として来るはずもなく、そのため終始沈黙を保っていた。沸き立つざわめきには、議論も期待も入り混じっていた。さらに、結衣の取り巻きが興奮して喚く声も混じっていた。「結衣さん、もうすぐロッシジュニアが出てきますよ」「そうですよ、結衣さん。あの二発ぶん殴られた恨み、すぐ晴らせます!」「そうですよ、ロッシジュニアが味方してくれます!こいつら全員叩き出してやりますわ!」拓海と文男は聞いていて妙だと思った。ロッシジュニアと結衣に、どんな関係があるというのか?結衣は彼らの視線を避けるようにしながら、頬を押さえて黙り込んでいた。皆が待ちわびているのに、ロッシジュニアはいつまで経ってもステージに現れなかった。ロッシジュニアがわざと出てこないわけではない。今は目の前があれほど塞がっていて、とても通れず、だからこそ、連中が勝手に噂している時間ができただけだった。ボディガードが群衆の中に道を作ってようやく、聖也は前へ進めた。もちろん、知佳の手を引いたままだった。「ちょっと、どこ行くの?勝手に動かないで恥かくでしょ、ここはあなたたちの……」結衣の声が背後でまだ響いていたが、聖也はもう、ザクロレッドのドレスを着た知佳の手を引いて、孝則のほうへ向かっていた。「知佳!」拓海が知佳の手をつかもうとしたが、ドレスの裾にすら触れられなかった。「いや、あいつら一体何してんだよ?」聖也は知佳の歩幅に合わせ、足取りは速くなかった。背後では、結衣と取り巻きだけではない。拓海、文男、新吾だけでもない。玲奈と馨もまた驚き、目を見開いたまま、聖也が知佳を連れて孝則の傍まで行くのを見届けていた。この時点でも、彼らの中で聖也がロッシジュニアだと考える者はまだいなかった。もしかしたら薄々そう思った者はいたのかもしれないが、絶対に認めたくなかったのだ。だが、孝則は一歩退いて、最も中心の位置を聖也に譲り、先頭に立って拍手を始めた。拓海の顔色は青ざめ始め、数歩後ずさっ
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