人混みを割って歩いてくる倫也を見つめながら、歩実は、彼もまた他の人と同じように自分の優秀さを認めざるを得ないはずだ。そう考えて挨拶をしようと近づいたが、倫也は彼女の脇を通り過ぎていった。まるでそこに誰もいないかのように。周囲のひそひそ話が耳に届き、歩実は屈辱に耐えるようにワイングラスを握りしめる。倫也が由奈のそばに足を止めた。皆に見られる中、彼は彼女の手からグラスを取り上げると、代わりにジュースを差し出した。「このような場で、女性がお酒を飲む必要はありません」呆気にとられた由奈は、促されるままにジュースを受け取ると、苦笑いを浮かべた。「……白石先生って、ここまで面倒見が良い人でしたっけ?」「別に、あなたが飲まなきゃ話し合いが進まないというわけでもないでしょう?」そう言うと、倫也は今取り上げたばかりの彼女のワインを、迷いなく煽った。由奈は目を見開き、慌てて手を伸ばす。「ちょっと、それは私の……グラス!」だが、もう遅かった。倫也は視線を落とし、驚愕に固まる彼女を見つめる。「どうかしましたか?」「……なんでもありません」倫也は極度の潔癖症だ。さっき自分が口をつけたなんて正直に言ったら、死ぬほど嫌がるに違いない。そんな二人のやり取りを、周囲は遠巻きに眺めていた。「白石先生とあの女性、一体どういう関係なの?」「知らないの?彼女は白石恭介先生の教え子で、今回のプロジェクトでも代表の一人だよ」「でも、長門さんと比べたら、大した実績も貢献もないんでしょう?」「まあ、コネがあるってことじゃない?」周囲の冷ややかな評価が耳に入ると、歩実の口角が吊り上がった。祐一を後ろ盾にしてこの世界に入ったような人が、自分と肩を並べられるはずがない。そう自分に言い聞かせた。……会議の中盤。由奈と倫也は、江川市の幹部二人と話をしていた。その一人が弘志だ。二人とも目立たない装いをしていたため、記者たちでさえその正体に気づいていない。二人がこの会議に出席したのは、ひとえに恭介の顔を立てるためだった。しばらくの歓談の後、弘志が由奈に向き直った。「池上先生、少し二人だけでお話ししてもよろしいですか?」由奈は頷いた。「はい、もちろんです」廊下へ移動すると、由奈は切り出した。「お話というのは?」弘志は少し言い淀むような仕草を
Leer más