慎吾はその男の方を見て、目を輝かせながら尋ねた。「誠さん、本当ですか?」田中誠(たなか まこと)はタバコに火をつけ、いやらしい目つきで明里を見つめながら言った。「本当に、あなたのお姉さんなのか?」慎吾の見た目はせいぜい爽やか系のイケメンといったところだが、明里の顔立ちは、彼が今まで見てきた女の中でも群を抜いて美しかった。明里は病院で付き添いをしていたため、服装はシンプルで、上にはショート丈のダウンジャケットを羽織っている。そして下には、ダークカラーのジーンズを履いていた。ごく普通のジーンズだが、それが彼女の真っ直ぐで長い脚を一層際立たせていた。言うまでもなく、その顔立ちは陶器のように白く整っており、特にその漆黒の瞳は、一目見ただけで男を虜にするほどの魅力があった。さらに、明里が纏うクールな雰囲気が、より一層誠の独占欲を掻き立てた。こういう女であればあるほど、誠は自分の腕の中で彼女がどんな風に乱れるのか、見てみたくてたまらないのだった。誠は隣にいた女を押し退け、ドアのところまで歩いて行った。間近で見てみると、明里は化粧をしていないにもかかわらず、その顔立ちはさらに美しく見えた。慎吾は、誠がどういう人間かを知っていた。金持ちではあるが、その評判は実によくないのだ。次から次へと女を乗り換え、以前には女子中学生に手を出して、その子は後に飛び降り自殺をしたという噂まであった。ただ、田中家が金でもみ消したおかげで、一人の人間の命が、そうやっていとも簡単に闇に葬り去られたのだ。慎吾は無意識のうちに、明里のそばに寄り、彼女を庇うように立った。彼は投資してもらいたいとは思っていたが、誠が明里と関わるのだけはごめんだった。彼は慌てて言った。「誠さん、こちらが姉です。さっきに言いましたよね、潤さんが俺の義理の兄です」慎吾は、潤の名前を出せば、誠も少しは大人しくなるだろうと考えたのだ。しかし、誠が彼の言葉を全く信じていなかった。明里は潤の名前を聞くと、さらに眉をひそめた。彼女は口を開いた。「慎吾、帰るわよ」誠のいやらしい視線に気づいた慎吾は、明里をここに呼んだことを少し後悔した。誠は格好つけてタバコの灰を弾き、明里をじっと見つめて言った。「おい、せっかく来たんだからさ、座って一杯どう?こういう出会いも何かの
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