まず、自分自身をしっかり持つこと。その先にある地位や愛情は、すべてただの飾りにすぎない。深い霧の中で怯えて立ち尽くしていた過去の自分を、今更責める気にはなれなかった。人間は誰しも不完全なものだ。そこから抜け出し、変われたことを、今は心から喜んでいる。今の自分が、好きだった。寧音は、紬の眼差しに一欠片の慈悲も交渉の余地もないことを、絶望とともに肌で感じ取っていた。その残酷な言葉の意味も、自分には嫌というほど理解していた。なぜなら、自分もその血塗られた過去の栄光に、無自覚とはいえ加担し、甘い汁を吸っていたのだから。それでも——どうしても引き下がるわけにはいかない。「それは私へのただの八つ当たりじゃない!今の私の事件と、親同士の遺恨なんて、全く別の話でしょう!?」寧音は焦燥で息を早めながら、以前の恨みはもう過去の世代で終わった話なのだと、強引に紬を丸め込もうとした。紬は、ゴミでも見るような冷ややかな一瞥をくれた。「……別の話、ですって?今回の大会のことは、完全にあなたの自業自得よ。おめでとう、園部さん。静かな刑務所でゆっくり過ごしてちょうだい」それだけを言い終えると、寧音の顔が絶望で青ざめるのを気にも留めず、あっさりと踵を返した。本当にすべてが終わるのだと怖くなった寧音は、反射的に腕を掴もうと手を伸ばした。だが、今度の紬はそれすら許さなかった。掴まれるより先に、汚らわしいものに触れられたかのように、冷淡に振り払った。寧音はヒールで踏みとどまれず、無様に床へと転がり落ちた。紬は氷のような冷たい瞳で、這いつくばる寧音を見下ろした。「私に許しを乞う資格など、あなたには最初から持ち合わせていないわ」寧音の耳の奥で、ガンと鈍い音が鳴り響いた。エントランスにいた社員や来客たちの四方八方からの視線が、一斉に突き刺さってくる。冷笑、侮蔑、嫌悪——かつての自分には、こんな泥水をすするような屈辱など、ただの一度もなかった。この圧倒的な落差が、寧音の理性を狂わせそうにした。血走った目で、遠ざかる紬の背中を、呪い殺さんばかりの憎悪を込めて睨みつけた。エントランスを出たところで、紬はちょうど、運転手付きの車から降りてきた香凛と鉢合わせた。香凛はいつもと変わらぬ完璧な笑顔で、優雅に手を振った。「お出かけかしら?」紬は足をわずかに
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