もしあそこで一つでも対応を間違えていれば、確実に命を奪う手合いだった。しかし結果として、紬は擦り傷一つ負っていなかった。承一は、信じられないという顔で思わず聞いた。「……長谷川の奴が、一人で片付けたのか?」紬は静かに頷いた。「昨夜、彼が間一髪で助けてくれたの。状況が少し複雑でね。でも私は擦り傷一つないから、もう心配しないで」二人を安心させるために、寧音と直接対面した場面も含めて、かいつまんで話して聞かせた。笑美は口をぽかんと開けたまま、しばらく石のように固まっていた。それから、ようやく震える声を絞り出した。「えっ……長谷川、いくらなんでも冷た過ぎないか?ずっと一緒にいた女に対して、一欠片の情も容赦もなくあそこまで徹底的に切り捨てるって……」寧音が紬にしてきた数々の悪行に対する怒りとは別に、長谷川慎という男の常軌を逸した冷酷さには、背筋がぞっとするような恐ろしさを感じた。笑美は紬の腕をがっしりと掴んで、ひどく複雑な顔で言った。「あなた、あの人と円満に離婚できて、未練たらたら縋りつかなくて本当によかったね。あんな恐ろしい手腕と底知れぬ深慮を持つ男に、もしあなたが素直に離婚を求めなかったら、今頃裏でどれだけひどい目に遭わされていたか……」考えるだけで、身の毛がよだつ。その言葉を受けて、紬も少し考え込んだ。果たして、本当にそうなのだろうか。確かに、彼の本心は最後まで分からなかったが。承一は「そんな無意味な仮定に何の意味がある」とでも言いたそうな顔をしたが、口には出さなかった。「あいつとはもう、完全に終わった話だ。今更タラレバを語っても意味がない。互いに不干渉を貫き、それぞれの道を歩めばいいだけだ」そして、紬の肩をぽんと軽く叩いて励ますように言い添えた。「もう何も怖がることはない。今のお前の立場は、そこらの一般人とは違う。国家の上層部が直接目をかけている重要人物だ。園部たちがあんな命に関わる手を出したことは、自ら破滅の道を選んだようなものだ。今回は罪状がさらに跳ね上がって重くなった。これでお前の長年の恨みも晴れる。これからは、自分の輝かしい未来の前だけを見て歩け」紬がこれまで一人で歩んできた年月は、あまりにも辛く、理不尽なものだった。息の詰まるような須藤家にいた日々も、慎と結婚してからの孤独な三年間も
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