「ああ、良かった……。これでお祖父様も自宅で安心して治療に専念出来るな」 「ええ、お父様!本当に良かったです」 「明日は私がお祖父様を迎えに行って、自宅まで帰って来るよ。茉莉花は明日、苓くんと店舗の視察だろう?」 お父様の言葉に、私と苓さんは顔を見合わせて頷いた。 「ええ、どうしても明日しか空いていないそうで……」 「こちらの事は気にするな。仕事が終わって、明日お祖父様が戻って来たら皆で夕食にしよう。苓くんも良ければ明日、我が家に夕食を食べに来ないか?」 お父様にそう誘われた苓さんは、嬉しそうに笑みを浮かべて頷いた。 「お誘いありがとうございます。是非ご一緒させてください」 「ああ、そうしよう。そうだ、苓くん。今日は茉莉花を連れて来てくれてありがとう。助かったよ。帰りは茉莉花は私の車に乗せて行くから、君も自宅に帰りなさい。疲れただろう?」 「お気遣いありがとうございます。では、私はここで……。茉莉花さん、また明日」 笑顔の苓さんにそう言われ、私も笑みを浮かべて頷き返した。 「ええ、苓さんまた明日。よろしくお願いしますね」 苓さんに軽く手を振って、私たちはそこで別れた。 お祖父様が明日、戻ってこられるかもしれない──。 いや、きっと問題なく戻ってこれるだろう。 その知らせがとても嬉しくて嬉しくて。 私はお父様とその話をしながら空港を出て、車に乗り込んだ。 ──浮かれすぎていたのかもしれない。 だから、私は空港に来る前に御影さんから聞いていた言葉をすっかり忘れてしまっていた。 涼子が行方をくらませている、なんて事。 頭の中からすっかりと抜け落ちてしまっていた──。 ◇ 翌日。 私は会社に出社し、午前中は社内で仕事をして、午後は苓さんと待ち合わせをして和風庭園カフェの視察に向かう予定だ。 今日、向かうカフェは本格的な庭園カフェ。 ただ、お店のオーナーがカフェ事業にあまり力を入れておらず、開店は気まぐれだった。 お話を伺いたい、と何度か連絡をしていて。 そして、今回やっと実際にお会い出来る事になったのだ。 建築に詳しい苓さんと一緒にお店にお邪魔し、店舗内装やカフェのメニューなどのお話を聞かせてもらえる。 それがとても楽しみで──。 私は、午前中の仕事を速やかに終わらせ、苓さんとの待ち合わせ場所に向かった。 ◇
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