和彦は重苦しいため息を一つつくと、懐中電灯を手に部屋を出て、一階へと下りる。すでに廊下の電気は消されており、懐中電灯で辺りを照らす。さすがにシャワーを浴びる気分ではなく、ひとまず、南郷が言っていた〈給食室〉を探し当て、中に入ってみた。 予想はついていたが、ようは炊事場で、ここで子供たちの食事を作っていたらしい。電気をつけると、広い作業台がまっさきに視界に入る。二階の部屋とは違い、こちらは片付いているようだった。小型冷蔵庫と電気ポットがあるぐらいで、調理器具や食器は見当たらない。 作業台の上にスーパーの袋が置いてあり、カップラーメンの他に、割り箸や使い捨て容器が入っている。そこで和彦は、自分が俊哉との食事で、料理にほとんど箸をつけられなかったことを思い出す。もっとも、空腹感はなかった。 足元から這い上がってくる寒さに、大きく体を震わせる。水を取ってくるだけのつもりだったが、気が変わった。ペットボトルの水を電気ポットに注ぐと、湯が沸くまでの間に、シャワー室で顔を洗ってくる。 本当はカップがあればよかったのだが、いくら探しても見つけることはできず、仕方なく紙コップに白湯を注いで二階に戻る。子供用の小さなイスをベッドの傍らに置き、それをテーブル代わりにした。 ベッドに腰掛けた途端、まるで鉛でも背負わされたように体が重くなる。同時に、部屋の明かりが急に眩しく感じられ、忘れかけていた頭痛がぶり返す。せめて頭上の明かりだけでも消そうと思ったが、立ち上がれなかった。 肉体的にも精神的にも、とうに限界を迎えていたことを、ようやく和彦は悟る。そうなると、何もかもどうでもよくなってきた。自分を取り巻く環境への、尽きることのない憂慮も、男たちへの配慮も。何も、考えたくなかった。 今は――、と声に出すことなく呟き、和彦は紙コップを取り上げる。息を吹きかけながら少しずつ白湯を口に含む。部屋は暖まってきたというのに、体の内側がひどく冷えているようだった。 紙コップを空にすると、もそもそと毛布を広げてベッドに横になる。強い眩暈に襲われて、きつく目を閉じる。 まったく眠気は感じていなかったが、現実から逃れるように意識が急速に遠退いた。**
Huling Na-update : 2026-07-28 Magbasa pa