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Lahat ng Kabanata ng 血と束縛と: Kabanata 1441 - Kabanata 1450

1602 Kabanata

第41話(13)

 和彦は重苦しいため息を一つつくと、懐中電灯を手に部屋を出て、一階へと下りる。すでに廊下の電気は消されており、懐中電灯で辺りを照らす。さすがにシャワーを浴びる気分ではなく、ひとまず、南郷が言っていた〈給食室〉を探し当て、中に入ってみた。 予想はついていたが、ようは炊事場で、ここで子供たちの食事を作っていたらしい。電気をつけると、広い作業台がまっさきに視界に入る。二階の部屋とは違い、こちらは片付いているようだった。小型冷蔵庫と電気ポットがあるぐらいで、調理器具や食器は見当たらない。 作業台の上にスーパーの袋が置いてあり、カップラーメンの他に、割り箸や使い捨て容器が入っている。そこで和彦は、自分が俊哉との食事で、料理にほとんど箸をつけられなかったことを思い出す。もっとも、空腹感はなかった。 足元から這い上がってくる寒さに、大きく体を震わせる。水を取ってくるだけのつもりだったが、気が変わった。ペットボトルの水を電気ポットに注ぐと、湯が沸くまでの間に、シャワー室で顔を洗ってくる。 本当はカップがあればよかったのだが、いくら探しても見つけることはできず、仕方なく紙コップに白湯を注いで二階に戻る。子供用の小さなイスをベッドの傍らに置き、それをテーブル代わりにした。 ベッドに腰掛けた途端、まるで鉛でも背負わされたように体が重くなる。同時に、部屋の明かりが急に眩しく感じられ、忘れかけていた頭痛がぶり返す。せめて頭上の明かりだけでも消そうと思ったが、立ち上がれなかった。 肉体的にも精神的にも、とうに限界を迎えていたことを、ようやく和彦は悟る。そうなると、何もかもどうでもよくなってきた。自分を取り巻く環境への、尽きることのない憂慮も、男たちへの配慮も。何も、考えたくなかった。 今は――、と声に出すことなく呟き、和彦は紙コップを取り上げる。息を吹きかけながら少しずつ白湯を口に含む。部屋は暖まってきたというのに、体の内側がひどく冷えているようだった。 紙コップを空にすると、もそもそと毛布を広げてベッドに横になる。強い眩暈に襲われて、きつく目を閉じる。 まったく眠気は感じていなかったが、現実から逃れるように意識が急速に遠退いた。**
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第41話(14)

 かつて自分が受けていた里見からの優しい囁きと、情熱的な愛撫を、今は英俊が受けている。それがどんな光景であるか、思い描くのは容易だった。 大事なものを奪われた。 そう、和彦自身が認めたとき、胸を切り裂かれ、血が噴き出したような痛みと喪失感を覚えた。その感触があまりにリアルなのは、意識が夢の中を漂っているからだ。悪い夢の中を。 急に息苦しさに襲われて無我夢中でもがくが、もどかしいほどに手足は動かず、声すら上げられない。その間にも、和彦の中で競り上がってくる感情の塊があった。 それは、憎悪や嫉妬という名を持つかもしれない。噴き出した血の代わりに体を満たし、開いた胸を塞いでいくそれらに、自分が支配されてしまいそうな予感があった。「い、やだっ」 叫びが、声となって口を突いて出る。それがきっかけとなって目が覚めていた。 和彦は思い切り息を吸い込み、瞬きもせずに明るい天井を見上げる。じわじわと手足に感覚が戻っていき、全身から汗が噴き出す。初めての場所で、慣れない硬いベッドで横になっていたせいか、体が強張り、節々が痛い。眠りながらも、緊張が解けていなかったのかもしれない。 明かりの眩しさに目を瞬かせながら、ぎこちなく息を吐き出す。今日起こった出来事の何もかもが夢であればよかったのにと、子供じみたことを願った次の瞬間、嗚咽が漏れた。夢の中で号泣した余韻を引きずっており、高ぶった感情を制御できなかった。「ふっ……」 ぐっと喉を締め付けられたようになり、行き場を失ったものが、一気に両目から溢れ出してきた。こめかみを伝い落ちる熱い液体の感触に、和彦はそっと指先を這わせる。泣いているという自覚はなかったが、確かに涙は出ていた。 涙の理由は、いくつもあるだろう。悲しさと悔しさ、もどかしさと切なさ。怒りも含まれているかもしれない。感情の区別はつくが、それが誰に向けられているものか、考えたくはなかった。 和彦は震えを帯びた息を吐き出し、その拍子に小さくしゃくり上げる。それがひどく子供っぽく感じられ、一人恥じ入る。 そう、部屋には自分一人しかいないと思っていたのだ。「――あんたは、泣かない人間なのか
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第41話(15)

 白いワイシャツは、南郷の体つきを生々しいほど浮かび上がらせており、肩から腕にかけての逞しさや、背の筋肉の盛り上がりを目の当たりにする。この体を使って平気で暴力を振るうのだとしたら、この男は災厄そのものだ。もちろん、和彦にとって。 次の瞬間、頭で考えるより先に体が動いていた。転がるようにしてベッドと壁の隙間に落ちると、慌てて立ち上がる。走り出そうとしたが、一緒に床に落ちた毛布に足を取られ、転んでしまった。「大丈夫か、先生」 和彦は床に倒れ込んだまま、ベッドを回り込んでこちらに近づいてくる南郷の足元を見ていた。こんなことが、確か前にもあったはずだと思ったとき、その答えを南郷が口にした。「落ち着いているようで、妙なところで間が抜けてるな。前にも……、暑くなり始めの頃だったか。あんたが自分の兄貴と会ったあと、総和会の隠れ家に身を潜めていたときにも、こんなことがあった。散歩に連れ出した俺から逃げ出して、やっぱりそうやって転んで、動けなくなっていた。あのときはひどかったな、泥だらけで。だが、あの姿は正直、ゾクゾクするほどそそられた」 目の前に手を差し出され、仕方なく和彦は顔を上げる。逃げ道を塞がれて、どうしようもなかった。おずおずと片手を伸ばそうとすると、強い力で手首を掴まれ、引っ張られる。 なんとか立ち上がりはしたものの、南郷との距離が近い。和彦は視線を逸らしただけでは足りず、顔を背けようとしたが、すかさずあごを掴み上げられた。南郷の顔が近づいてきて、獣じみた荒い息遣いが頬に触れる。 喰われる、という本能的な恐怖から、呻き声を洩らしていた。 南郷は、和彦に喰らいついたりはしなかった。代わりに、涙の滲んだ目元を、ベロリと舐めてきた。「なあ、先生、泣いている姿を、誰に見せたことがある? これまで寝てきた男全員に見せてきたのか? それとも、特別な男だけ――、長嶺組長は? 可愛らしい跡目もいるな。あんたがご執心の三田村さんに……、クソ忌々しい刑事とか。気になるといえば、さっきあんたが泣いていた理由だ。実家が恋しくなって泣いていたんだとしたら、今後はあんたが逃げ出さないよう、いろいろ策を講じないといけないしな」
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第41話(16)

 声を上げようとして再び唇を塞がれた挙げ句、引き結んだ歯列を舌先でこじ開けられる。恐慌状態に陥った和彦は、本気で南郷の舌に歯を立てようとしたが、その気配を察したように後ろ髪を乱暴に掴まれ、さらに両目を覗き込まれる。 凄んではいない。それどころか、和彦の反応を楽しんでいるような、余裕すら湛えた南郷の眼差しに、心底震え上がる。「寒いなら、まずはキスで暖めてやるよ、先生。嫌いじゃないだろ。俺とのキスは」 強張った唇を柔らかく啄みながら、南郷が囁きかけてくる。顔を背けたい和彦だが、後ろ髪を掴まれたままのうえに、腰に回された鋼のような腕の感触に怖気づく。無意識のうちに南郷の肩に手をかけていたが、押し退けるどころか、小刻みに震えていた。「そう、怯えなくてもいいだろ、先生。俺はこれまで、手荒なことはしていないつもりだ。長嶺の男たちにとって宝物みたいな存在を、俺ごときが傷つけるはずがない。……少しばかり、意地の悪いことはしたが」 ここでまた、南郷にしっかりと唇を塞がれる。口腔に舌を押し込まれ、堪らず和彦は、南郷の顔を押し退けようとしたが、上唇に軽く噛みつかれる。頑丈そうな歯は、いつでも自分の唇を食い千切る凶器となりうる。和彦に一度も手荒なことはしていないという南郷の発言はウソではないが、今この瞬間もそうだとは限らない。そう思わせるものが、この男にはあるのだ。 ふいに唇を離した南郷が苦笑めいた表情を浮かべ、呟く。「……今思い出した。今晩、俺の前に、あんたにキスした男がいたんだったな」 和彦は激しく動揺し、そして強い怒りに支配される。自分でも意外な力を発揮して南郷に体当たりをすると、後ろ髪を掴んでいた手が離れる。しかし、腰に回された腕の力が緩むことはなく、南郷は、和彦の反撃をおもしろがるように目を細めた。「艶やかだな。あんたの怒りの表情は。どうして今怒ったのか理由はわからないが、聞いたところで教えてはくれないだろうな」 残念だ、と洩らした南郷がベッドに片手を伸ばし、枕代わりに使っていた毛布を掴む。一体何をするのかと思って見ていると、乱雑に床の上に広げた。 あっという間だった。前触れもなく足元を払
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第41話(17)

 もっとも、それで南郷が満足するはずもなく、脇腹を思わせぶりに撫でられながら、トレーナーを押し上げられる。素肌に触れるぬるい空気に、反射的に和彦は首を竦める。子供の機嫌をうかがうように、やけに甘い声で南郷が問いかけてきた。「寒いか、先生?」 暖房が効いて暑いというのは、大げさな表現ではなかったのだろう。いつの間にか南郷の額にはうっすら汗が浮いている。極度の緊張から、体が冷え切っている和彦とは対照的だ。そんな和彦を暖めようとするかのように、腹部に大きなてのひらが押し当てられる。 さきほどまで冷たかった南郷の手は、今はもう戦くほど熱くなり、和彦の肌すら温めていく。何かよからぬものに自分が侵食されていくような不気味さを感じ、和彦は身を捩ろうとしたが、その反応が南郷を刺激したらしい。いきなり胸元までトレーナーを捲り上げられた。「うっ……」 露わになった胸元に、両てのひらが這わされる。 覚えのある状況だった。明かりの下、南郷に押さえつけられて体をまさぐられ、和彦は震える。「いい加減、俺の感触にも慣れてきただろう。そうなってもらわないと、困るんだが。なんといっても、長いつき合いになる。慣れないと、あんたがつらいだけだ」 どういう意味かと、眼差しで問いかける。南郷は、今のは失言だというように、おどけた仕種で肩を竦める。和彦は食い下がろうとしたが、強引にトレーナーを脱がされ、それどころではなくなる。 覆い被さってきた南郷の体の重みに声を洩らしたときには、また唇を塞がれていた。「んっ、んんっ」 スウェットパンツのウェストに手がかかり、引き下ろされる。口腔に押し込まれた舌に粘膜を舐め回され、逞しい体の下でもがくが、南郷に下着ごとスウェットパンツを腿の半ばまで下ろされていた。 足をばたつかせた拍子に、誤って床に踵をぶつけてしまう。痛みに呻き声を洩らし、身を強張らせると、さすがに南郷が唇を離した。「今ので足を痛めたか?」「……なんでも、ないです」「気をつけてくれよ。風邪を引かせるのはもちろん、あんたの体に青痣を残すなんてしたくないからな。――あんたの体
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第41話(18)

 胸の突起を吸われ、舌先で弄られながら、不意打ちで軽く歯を立てられる。そのたびに和彦は声を上げ、身を震わせる。怯えと、背筋を駆け抜けるゾクゾクするような感覚のせいだ。 執拗に胸元への愛撫を続けながら、南郷の片手が当然のように和彦の欲望を握り締めてくる。腰を跳ねさせて暴れようとしたが、先端を爪の先で弄られて、機先を制された。「暴れるなよ、先生。いつもみたいに、よくしてやるから」 感じやすい敏感な部分を、爪の先でくすぐるようにして苛められ、我知らず和彦は間欠的に声を上げていた。 賢吾によってささやかに〈開かれて〉から、感じ方が変わってきていると自覚はあった。疼痛とも快感ともいえる感覚の波はあまりに強烈で、もう一度味わってみたいと心のどこかで思っている。 だがそれは、相手が賢吾であるからだ。「――濡れてきたな」 和彦の動揺を誘うようなことを南郷が口にする。先端に少し強めに爪が立てられて、ジンと腰が痺れた。和彦は無意識に、南郷の手を押し退けようともがく。「あっ、嫌……。そこ、怖い、です」「心外だな。こんなに優しく、苛めてやっているのに」 南郷らしくない、こちらの機嫌を取るような真摯な声音で囁きかけてきながら、爪の先で掻くように刺激される。声を詰まらせて和彦は腰を引こうとするが、南郷にしっかりと片足を抱え込まれていた。 ひどいことをされるのではないかと、咄嗟に顔を強張らせる。そんな和彦を一瞥して、南郷は楽しげに喉を鳴らした。「よほど俺は信用されてないんだな。――まあ、まだ先生は、こっちを弄られるほうが好きということか」 南郷の指が柔らかな膨らみへと伸び、ゾッとするほど丁寧な手つきで撫でられる。新たな刺激に和彦は、爪先を毛布の上で滑らせた。「うあっ、あっ、あっ、ああぁっ――」 弱みを指先で探り当てられ、まさぐられる。いくら嫌だと思っても、触れられた時点で体は言うことを聞かなくなる。 南郷に見つめられながら体を波打たせ、無防備に両足を開いて腰を揺らす。じっくりと嬲るように柔らかな膨らみを揉みしだかれているうちに、いつ痛みを与えられるのかという恐れだけではなく
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第41話(19)

 南郷が思わせぶりな手つきで、着ているワイシャツのボタンを上から外し始める。浅黒い肌が露わになっていくにしたがい、強い匂いが和彦の鼻先を掠めた。南郷自身の体臭に、汗だけではなくコロンや煙草の匂いも混じっている。 不快なほど強烈な雄の匂いだと思い、反射的に顔を背けようとしたが、南郷がワイシャツを一気に脱ぎ捨てる。 そこで姿を現したものを目にして、和彦は動けなくなった。 まさに筋骨隆々という言葉がふさわしい体つきに圧倒されたからではない。そんな南郷の引き締まった右脇腹から下腹部にかけて、不気味な影が這っていたからだ。 影の正体を知った途端、総毛立つ。本能的な忌避感と嫌悪感が、全身を駆け巡っていた。 瞬きもしない和彦に見せつけるように、南郷がわずかに体の向きを変える。「――こいつが俺のとっておきだ。立派なもんだろう?」 南郷が身じろぐたびに、浅黒い肌に彫られた刺青が、まるで生きているように蠢く。和彦はおぞましさに顔を強張らせながら、詰めていた息をわずかに吐き出す。 南郷の肌に棲んでいるのは、大きな百足だった。 艶々とした黒く長い体にはいくつもの節があり、そこから左右対となる無数の足が生えている。触覚を伸ばす頭と足は毒々しい赤色が使われ、それが気味の悪さに拍車をかけている。 ただ、彫った人間の腕は確かなものだろう。精緻に彫られた百足はあまりに生々しく、身をくねらせている姿に卑猥さすら感じる。「見惚れてくれてるのか、先生?」 南郷がのしかかってきて、己の高ぶりを和彦の下腹部に擦りつけてくる。いや、刺青を擦りつけているのだ。意図を察した和彦は全身を使って南郷を押し退けようとするが、びくともしない。 覆い被さってきた南郷と、汗で濡れた素肌同士が重なり合う。南郷から立ち昇る雄の匂いがますます強くなり、和彦は眩暈にも似た感覚に襲われる。そこに、まるで甘い毒でも注ぎ込むように、南郷が囁きかけてきた。「あんたなら、俺の刺青とも仲良くなれると思っていた。長嶺の男たちですら甘やかしているあんただ。俺の百足も、同じように甘やかしてくれ」「な、に、言って……」
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第41話(20)

 和彦は最後の抵抗とばかりに、抱えられた両足を振り上げ、なんとか南郷の顔か肩を蹴りつけようとする。南郷は煩わしそうに顔をしかめると、柔らかな膨らみに手を伸ばした。「暴れると痛い目をみるぞ、先生」 手荒く揉みしだかれて甲高い声を上げる。的確に弱みを弄られて、ささやかな抵抗は完全に封じられてしまった。 南郷が、指にたっぷり垂らした唾液を内奥の入り口に施してから、再び欲望を押し当ててくる。濡れた肉をわずかにこじ開けられたところで、堪らず和彦は細い声を上げる。無意識に片手を伸ばしてさまよわせると、その手を掴まれ、南郷の脇腹へと導かれていた。 ごつごつとして硬い腹筋を指先でまさぐると、逞しい体がブルッと震える。 気味の悪い百足の刺青になんとか触れまいとしたが、それを南郷は許さなかった。しっかりとてのひらを押し当てることを求められ、今にも内奥を犯されそうになりながら和彦は、百足を撫でた。 ああ、と南郷が吐息を洩らす。この瞬間、和彦の中で湧き起こる感情があった。 ある意味、馴染み深い感情ではあるが、南郷に対して持つべきものではない。和彦は必死に自分の中で否定しようとするが、その間にも南郷の行動は淫らさを増していく。「んんっ――」 欲望の先端で内奥のごく浅い部分をこじ開けられはするものの、深く押し入ってくることはなく、ただ擦られ、突かれ、浅ましい肉が自ら蕩けていくのを待つように刺激される。「美味そうな肉だ。真っ赤に充血して、濡れて、蠢いて……。先生は、百足が肉食だってことぐらいは知ってるだろ。昆虫だけじゃなく、小さな動物にだって喰らいつく。そんな百足だが、喰われることもある。天敵ってやつだな。例えば――蛇だ」 再び反り返った和彦の欲望の先端から、透明なしずくが垂れ落ちる。内奥に先端を浅く含ませたまま、南郷が片手で欲望を扱き始める。堪え切れず和彦は喘ぎ声を上げながら、腰を揺らしていた。「が、一方的に喰われるだけじゃない。蛇だろうが油断すれば、百足は容赦なく餌にする。獰猛でふてぶてしいんだよ。地面を這いずり回るどころか、湿った暗い場所に身を潜めているような嫌われ者の生き物だが、だからこそ俺にぴったりだ。極道の世
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第41話(21)

 敷き直した毛布の上に仰臥した南郷は、傍らに座り込んでいる和彦に向けて手招きをしてくる。鷹揚な動作に反発する余裕もなく、毛布に包まった体を小刻みに震わせる。 逃げ道を探すように、どうしても視線を扉に向けてしまいそうになるが、それだけで南郷の機嫌を損ね兼ねないと思い直し、渋々――嫌々、横たわる逞しい体に目を向ける。隠す必要はないとばかりに南郷は、脇腹から下腹部にかけて這う百足の刺青だけではなく、興奮が鎮まる気配のない欲望を見せつけてくる。 そうやって、和彦の反応を楽しんでいるのだ。その証拠に、揶揄するように声をかけられた。「いつまで、そうやっているつもりだ。俺の体が冷えちまう」 南郷の肌を汗が伝い落ちている。それがひどく生々しく感じられ、和彦は咄嗟に顔を背けた。「やっぱり――」「嫌だというなら、さっき言ったが、あんたをこの場で犯すだけだ。暴れられて、思わず手を上げるなんて事態にはしたくないから、申し訳ないが縛らせてもらうが。尻さえ突き出してもらえば、用は済む」 卑猥で下劣な言葉に、煽られているとわかっていながらも反応せざるをえない。屈辱感に唇を噛み、怯えを押し殺しながら南郷を睨みつける。どこまでも和彦を甘く見ているのだ。だからこそ無防備に、こうやって体を曝け出せるのだ。 いくら非力とはいっても、爪で肌すら傷つけることができなくても、目を狙うことぐらいはできるというのに。「――怖いことを考えている顔だな、先生。普段は優しげなんだが、あんたはときどき、ゾッとするほど冷たい顔をする。感情が一気に欠落して、人間から人形になったような感じに……」 我に返った和彦が身構えようとしたときには、腕を掴まれ引っ張られる。抵抗する間もなく、分厚い胸元へと倒れ込み、間近から南郷と目が合っていた。さきほどまで皮肉げな色を湛えていたはずの両目に情欲の気配を感じ取り、和彦は息を呑む。 身じろごうとして、自分が南郷の右脇腹に手を置いていることに気づいた。そこから毒に侵入されたように、なぜか体が動かなくなった。 後頭部に南郷の手がかかり、ぐいっと引き寄せられる。「んっ……うぅ」
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第41話(22)

「違い、ます……。ただ、あなたが何を考えているのか、気になって」「頭のいい先生が考えるほどのもんじゃない。俺は、ただの欲深い男だ」 会話はここまでだと言うように、腰から這い上がってきた手がとうとう肩にかかる。力を込められたわけではないが、手を振り払えない圧力のようなものを感じ、それに和彦は屈した。 背を丸めて身を屈めると、南郷の脇腹におずおずと顔を寄せる。顔を背けるなという軽い脅しのつもりか、髪を梳かれた。 独特の艶まで描かれた百足の体に、和彦はぎこちなく唇を押し当てる。二度、三度と唇を押し当て、そこで顔を上げる。途端に南郷から言われた。「おいおい、あんたは長嶺組長に、いつもそんなおざなりなことをしてるのか?」 怒りと屈辱と羞恥から、カッと全身が熱くなる。何より、賢吾に対するものと同じ行為を要求する南郷の驕りが、ひどく癇に障った。 こんな不気味なものを、愛してやれるはずがないのだ――。 百足を見下ろし、心の中で呟いた和彦だが、南郷の求めに応じないわけにはいかない。天井を見上げたまま、口元に笑みを湛えている南郷の様子を上目遣いにうかがってから、和彦は再び行為に及ぶ。 震える舌先を、百足の長い体に這わせる。賢吾の大蛇の鱗を丹念に一枚一枚、愛撫したように。そうしていると賢吾は焦れたように背を震わせ、それを合図として、和彦は舌全体で大蛇の巨体を浅ましく舐め回し、高まった情欲のままに吸いつくのだ。行為の最中、導かれて触れる賢吾の欲望はいつも熱く高ぶっており、その反応に和彦は歓喜し、安堵していた。 賢吾だけではない。三田村と千尋の背にある刺青を愛撫するのは好きだった。何より、素直な反応を示されると、愛しいのだ。 微かに濡れた音を立てて、南郷の肌を吸い上げる。腹筋がぐっと硬くなり、傲岸でふてぶてしい男が決して無反応ではないのだと知らせてくる。 実際、南郷の欲望は、萎えることなく勃ち上がったままだ。 和彦の目には、下腹部に彫られた百足の赤い頭とともに、南郷の〈分身〉はなんともおぞましく映り、心の内で悪趣味ぶりを罵る。追い打ちをかけるように、こんな言葉がかけられた。「気に入ったんなら、
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