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All Chapters of 血と束縛と: Chapter 1521 - Chapter 1530

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第43話(16)

 和彦は、自分が長嶺の男二人の間を取り成せるなどと、大それたことは考えていない。しかし、守光の腹の内は知っておきたいし、自分にできることがあるなら、可能な限りのことはしておきたかった。 そう、考えたのだが――。「健気なことだな、先生」 和彦の葛藤を見透かしたように、皮肉っぽく南郷が洩らす。首の後ろを掴んでいた手は、今は和彦の頬を撫でてくる。 再び唇を塞がれそうになったが、和彦は必死に顔を背けた。南郷はくっくと声を洩らして笑ったあと、前を開いたマウンテンパーカーの内側に和彦を抱き込んだ。煙草とコロンが混じり合った匂いと、南郷自身の体臭を嗅ぎ、ゾッとして体を離そうとするが、頑として南郷の腕は外れない。「〈今〉は、もう何もしないから、そう体を硬くしないでくれ。さすがの俺でも傷つく」 言葉とは裏腹に、どこか楽しげな南郷から、和彦は不穏なものを感じ取る。 危険だとしても、やはり夜のうちに別荘を抜け出すべきなのだろうが、こちらが諦めるまで、南郷は体を離す気はないようだ。上目遣いにちらりと見た途端に、食い入るように自分を見つめている視線とぶつかる。やむなく和彦は、南郷との抱擁をおずおずと受け入れた。 今は、そうするしかなかった。**** 喉の痛みで目を覚ました和彦は、喉元に手をやって、自分が寝汗をかいていることに気づく。夢見が悪かったというのもあるが、何より暖房が効きすぎているのだ。 暖房をつけて眠った記憶はないので、和彦が寝入ってから、誰かが部屋に入ってつけたのだろう。眠りが浅いと思っていただけに、気配を感じさせなかった侵入者にゾッとする。 ベッドに入った時間は遅かったが、寝起きはいつもより早いぐらいで、もう一度寝直そうかとちらりと考えなくもなかったが、人が起こしに来る状況が嫌で、諦めた。 クローゼットにあったチノパンツとタートルネックのセーターを着て部屋を出ると、微かに人の気配が伝わってくる。 おそるおそる一階に下りると、朝食の準備が始まっているらしく、ダシのいい香りが漂っている。現金なもので、ここで自分が空腹なのを自覚した。神経をすり減らしても、食
last updateLast Updated : 2026-08-13
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第43話(17)

 外で何をしていたのか、南郷が履いたブーツは泥だらけのうえに、マウンテンパーカーも肩の辺りが濡れているように見える。和彦の視線に気づいて、南郷は軽く自分の肩を払った。「別荘の周りを散歩してたら、枝から落ちた雪を被った」 はあ、と気のない返事をして、和彦はさっさと立ち去ろうとしたが、南郷に呼び止められた。「先生、すぐに暖かい格好をしてきてくれ。手袋は……、俺のでいいか。これから出かける」「これからって――」 和彦の言葉を遮り、急かすように南郷が手を打つ。何事かと、吾川がダイニングから出てきたが、南郷の姿を認めるなり、すぐに引っ込んでしまう。 仕方なく二階の部屋に戻った和彦は、ダウンジャケットを掴んで引き返す。玄関には、新しい長靴が置いてあった。その傍らで南郷がニヤニヤと笑っている。「これを履いてくれ。通勤用の靴じゃ、滑って危ない」 一体なんなんだと怒鳴りたい気分だったが、南郷が先に外に出てしまったため、あとを追いかけるしかない。 履いた長靴は、防寒用で暖かくはあるのだが、爪先の部分が余っている。おかげで歩くたびに、間の抜けた音がする。用意してもらった手前、文句を言うつもりはないが。 南郷が、見たこともない4WDに乗り込み、手招きをしてくる。すかさず和彦は背を向け、建物の中に戻ろうとしたが、クラクションを鳴らされて諦めた。「……どこに行くんですか」 4WDの窓から見る風景は、車高が高いこともあって少しだけ新鮮だ。だからといって、ハンドルを握る南郷との間に和やかな空気が流れるはずもなく、和彦だけがピリピリとしている。「晩メシの材料を仕入れに」 つまり少なくとも夕方までは、あの別荘に滞在するということだ。あからさまに失望するわけにもいかず、かろうじて無表情は保ったが、そんな和彦を横目で見て、南郷は唇の端に笑みを刻む。「先生、ジビエは食ったことあるか?」「……ジビエ肉とか言われるものですよね」「夜、あんたに昔話をしていて、ふと思いついたんだ。今朝、知り合いに連絡を取ったら、肉を譲ってやる
last updateLast Updated : 2026-08-13
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第43話(18)

 粗野で暴力的な空気をまき散らす南郷の存在は、明らかに浮いている――はずなのだが、数人のグループと話している南郷を見て、和彦は困惑する。大柄で強面ではあるが、人のよさそうな笑みを浮かべた男が、そこにいたからだ。 見た目は南郷なのだが、中身は別人と入れ替わったかのように雰囲気が違っている。 誰よりも大きな笑い声を立てた南郷は、今度は別のグループに声をかける。自分が後ろ暗い存在であることをおくびにも出さない、朗らかな声と表情で。 擬態だ、と咄嗟にそんな単語が頭に浮かんだ。演じているという表現より、相応しい。 結局、イノシシの解体を最後まで見たうえに、振る舞われたイノシシ汁まで味わうことになり、和彦は倉庫の外に置かれたベンチに腰掛けて、椀に口をつける。「美味しい……」 ぽつりと一人感想を洩らしたところに、椀を手にした南郷がのっそりとやってくる。やはり、と言うべきか、他に空いているスペースはあるのに、和彦の隣に腰掛けた。「さすが医者だな、先生。イノシシが解体されるところなんて初めて見ただろ。それで、平気な顔して肉が食えるんだ。やっぱり連れてきてよかった」「……イノシシの肉って、もっとクセが強いのかと思ってました」「獲ったらすぐに血抜きする。それが臭みのない肉にする秘訣だ。猟について行ったことがあるが、ここの主人の手際は見事なものだった。――参考にしたくなるほど」 最後の言葉は、南郷なりの性質の悪い冗談だろうと判断して、和彦は無視した。すると南郷が短く笑って汁を啜った。「イノシシ肉は、体が温まる」 独り言のように南郷が洩らし、さすがにそれについては異論はなく、和彦は小さく頷く。 沈黙したまま、ただイノシシ汁を味わっていても間が持たず、なんとなく息苦しさを覚える。いまさら席を立つ度胸が和彦にあるはずもなく、とうとう南郷に話しかけていた。「――……南郷さんも、猟をするんですか?」「俺は、しないというより、できない。わかるだろ。ヤクザが猟銃を持てないって理屈が。何より俺には〈前〉がある。ただし、ここの主人たちには、目
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第43話(19)

 一方の南郷は、生まれは本人が語っている通りだとして、居場所を求めて這い上がり、今は総和会内で守光の隠し子ではないかと噂されるほどの側近となった。そして和彦は、英俊とは違う道を歩むよう言われ、医者としての人生を送ると同時に、佐伯家の異物として在り続けるはずだった。それがなぜか長嶺の男たちのオンナとなり、佐伯家の脅威となった。 南郷にどんな思惑があって、こんな話をしたのかは不明だが、和彦は警戒を強くする。 もし自分と南郷に重ねる部分があったとしても、親しみは感じない。そう心の中で誓って、椀を手に和彦は席を立った。南郷は、さすがにあとを追いかけてはこなかった。** 別荘に戻った和彦を出迎えた吾川が、おやっ、という顔する。「どうかされましたか、佐伯先生。顔が赤いですが」 長靴を脱いだ和彦は、反射的に自分の顔に触れる。実は車中でずっと、顔どころか体も熱くなって気になっていたのだ。暖房が効きすぎていたのだろうかとも思ったが、そうではない。和彦のあとから玄関に入ってきた南郷が、答えを口にした。「イノシシの肉を食ったせいだろうな。滋養が高いから、身が燃えてるんだろ」「……体が温まるって、そういう意味ですか」「たっぷり分けてもらってきたから、晩メシは肉パーティーだな。シカの肉もあるぞ、先生」 ちらりと笑みを浮かべた吾川がすぐに表情を隠し、こう切り出してきた。「少し早いですが、昼食を召し上がりませんか? そのあと、会長がお話があるそうですから」 いよいよかと、反射的に和彦は背筋を伸ばす。「いえ……、お腹は空いていないので。今からでも、会長のお部屋にうかがっても大丈夫ですか?」「では、少々お待ちください。お茶を淹れてきますから、一緒に参りましょう」 吾川がキッチンに向かい、和彦はその後ろ姿を見送ったあと、急に手持ち無沙汰となる。ダウンジャケットを部屋に持って行こうかと逡巡していると、南郷が片手を突き出してきた。「ジャケットを部屋に持って上がっておく」 ここは素直にお願いし、茶器とおしぼりの載った盆を手
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第43話(20)

「わしにとっては今でも、長嶺組は大事だ。代々引き継いできたとはいえ、わしが育てて大きくした組織でもある。できる限りのことをして、息子に残してやれた。それなのに、あいつは……」 子供の悪戯を窘めるような、柔らかな声音だった。だが和彦は、ゾクリとするような寒気を覚える。「長嶺組をそうしたように、今度は総和会を盤石な組織にするために、あれこれ策を講じている最中だ。そこに、和を乱すような身勝手は許せん。今の長嶺組が、総和会の力なくして、これまで通りの活動ができると思っているとすれば、思い上がりも甚だしい。わしがどれだけ手を尽くして、長嶺組を守るために、総和会での影響力を強めてきたか――」 守光の口調が熱を帯びたのは、ほんのわずかな間だった。我に返ったのか、平素の穏やかなものに戻る。 和彦は静かに息を呑んだあと、あることに思い至る。切り出していいものか逡巡したが、正面に座っている守光の目が見逃すはずもなく、水を向けられる。「何か言いたそうだな、先生」「――……賢吾さんの身勝手というなら、そもそもの原因はぼくです。ぼくがいなければ、あの人は……、大それたことを考えもしなかったはずです」「どうだろうな。あんたも知っての通り、賢吾は総和会と距離を置きたがっている。本心としては、長嶺組から総和会に人をやることすらしたくないだろうな」 守光の目に冷徹な光が宿る。「言い方を変えるなら、あんたがいるからこそ、賢吾は総和会と関わりを断てない。もしかすると、あんたが現れなければ、もっと早くに言い出したかもしれんのだ。長嶺組として、総和会で活動する気はないと。……わしが会長に就いたとき、長嶺組の影響力の大きさは約束されたものだったが、賢吾は戸惑っていた。そのときすでに、兆候は出ていたのかもしれん。そして今は、さらに大きな力を自分が得るかもしれないという可能性を、厭うている。わしにとっての危惧は、総和会が抱えたままの不穏分子より、自分の息子だ」 守光の口ぶりから、やはり、と思わざるをえなかった。 守光は、いずれは総和会会長の座に、賢吾を就かせるつもりな
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第43話(21)

 そうだ、と守光が大きく頷く。「賢吾の将来を見据えるとき、同時に千尋の将来も考えなければならない。あれにはもっと経験を積ませ、知恵をつけさせ、自分の力で人望も得なければならない。賢吾がやってきたように。権力の移譲とは驕った言い方かもしれんが、わしからうまく賢吾に引き継げられれば、あとは千尋へと続くはずだ。そうやってあれこれ考えると、どうしても突きつけられる現実がある。何かわかるかね?」 口に出すのははばかられ、和彦は控えめに守光を見つめ返す。守光は、笑みを深くした。「優しいな、先生。今、わしに気をつかってくれたんだろう」「優しいなんて……」「――時間が足りない。正確には、わしの時間が。息子や孫のことを思い、総和会会長の地位に恋々とした感情を抱くが、一方で、耄碌したわしは、かつてわしがそうしたように、誰かに追い落とされるだろうとも思う。そういう惨めな姿は、身内の者に見せたくはない。自分の引き際は自分で決める」 一度唇を引き結んだ守光は、思い出したようにお茶を啜る。「そういうことをずっと考えていたわしにとって、あんたとの出会いは僥倖としか言いようがない。あんたもまた、わしの〈運命〉となるんだと確信している」「……ぼくを、どうしたいのですか?」「ただ、長嶺の男の側にいて、よく尽くし、よく支え、よく愛してほしい。あんたは喜んで、わしらの血を受け入れてくれるだろう。そうやって互いに生かし合う」 この言葉を聞くのは二度目だった。最初に守光から言われたとき、和彦は惑乱の中にあって真意を問うことはできなかったが、ただその重みだけは感じることができた。「不安がらずともいい。あんたならできる。これまでわしらから逃れる機会は幾度もあった。きつい選択もさせた。それでもあんたはここにいる。ただ強い力に身を委ねてきただけだと言うかもしれんが、そうできるのもまた、あんたの強さだ」 底知れぬ力を持った化け物に、拒否権のない選択を迫られていると思った。守光が和彦に突き付けてくるのは常にそういったものであったが、今は、秘密を共有し合っているような後ろ暗さも伴っている。 守
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第43話(22)

 守光は、浴衣に着替えてはいるものの、相変わらずの端然とした佇まいで待っていた。部屋に入った和彦を見るなり、頬を緩める。「髪がまだ濡れているな。慌てなくてもかまわないから、脱衣所で乾かしてくればいい」「……いえ」 入浴後すぐに部屋に来いと言われたわけではないのだが、ゆっくりと髪を乾かそうなどと思いつきもしなかった。 ふいに沈黙が訪れ、立ったままの和彦と、コタツに入ったままの守光との視線が交わる。柔らかな微笑を浮かべていた守光の表情が瞬きする間に変化した。 静かにコタツから出た守光が襖を開ける。奥は思ったとおり寝室となっており、すでに床が延べられていた。 振り返った守光に軽く手招きをされ、反射的に半歩だけ後退った和彦だが、自分がこの部屋に来た覚悟を思い出し、すぐに従う。 枕元には、見覚えのある文箱と折り畳まれたスカーフがあった。体を強張らせた和彦の背後で襖が閉まり、手を取られて布団の傍らに立つ。穏やかな声音で守光に言われた。「服を脱いで見せてくれないか。先生」 いまさら裸を見られたところで、という気持ちはある。しかし、脱がされるのと、自ら脱ぐのとでは心構えはまったく違う。和彦はすがるように守光を見たが、意に介した様子もなく守光は畳に正座する。 さあ、とでも言うように見上げられ、ぐっと喉が詰まる。できませんとは、口が裂けても言えなかった。 和彦は機械的にトレーナーを脱ぎ捨ててから、数秒のためらいのあと、パンツと下着を一気に下ろす。このときすでに、それでなくても熱くなっていた全身は、うっすらと汗ばんでいた。 脱いだものを畳もうとして、手首を掴まれる。引っ張られるまま膝をつくと、守光に顔を覗き込まれた。「そのままで」 そう言って守光がスカーフを取り上げる。薄い布をどう使うか、もちろん和彦は知っている。今の守光との関係では、もう必要としていない小道具であることも。 今晩は、いつもと何かが違う――。 本能的な怯えから、ざわりと肌が粟立った。頬にスカーフの滑らかな感触が触れ、和彦は顔を背けようとしたが、かまわず両目を覆われ、きつく後頭部で結ばれた。
last updateLast Updated : 2026-08-14
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第43話(23)

 賢吾によく似た太く艶のある声に囁かれ、和彦は返事ができなかった。それは、肯定したも同然だった。和彦自身に自覚はなかったが、そうなのかもしれないと、認めざるをえなかったのだ。 守光が一度布団を離れる気配がする。すぐに戻ってきたのは何かを取ってきただけらしく、物音が続いたあと、再び和彦に触れてきた。「あんたの〈ここ〉を苛めてみたくて、新しいおもちゃを前から準備しておいたんだ。なかなか使う機会がなかったが、ようやく――」 そんな言葉のあと、掴まれた和彦の欲望にひんやりとした液体が垂らされる。滑る感触から潤滑剤だとわかった。 先端をヌルヌルと撫でられ、異様な感覚にさすがに無反応ではいられない。和彦がわずかに腰を揺らしたとき、冷たい金属の感触が先端に触れた。「ひっ」 細く滑らかなものが、先端の小さな口を押し開くようにして、くっと押し込まれる。一気に腰が重くなったような感覚と鋭い痛みに襲われて、和彦は息を詰める。反射的に腰を動かしたくなったが、今の状況ではそれは危険だと理解できる程度には、まだ意識が保てていられた。 一度は賢吾に開かれた場所だ。どういう痛みがあるかは知っている。それでも、やはりつらかった。「うっ、うぅっ……」 おそらく金属製の細長い棒なのだろう。それがゆっくりと慎重に、欲望の先端から押し込まれてくる。痛みに喉が引き攣り、体が小刻みに震えてくる。「うあっ、あっ、い、や――」 自分でも驚くほど弱々しい声が出ていた。それでも挿入は少しずつだが続き、両目を覆われて不安なせいもあって和彦は片手を下肢に向けて伸ばす。すかさず優しく握り締められた。そこでゾッとするようなことを言われた。「思った通り、今のあんたの姿は大きな子供のようだ。とても嗜虐的なものを刺激される」 挿入された金属の棒を蠢かされ、むず痒いような感覚が生まれる。それはすぐに痛みを上回り、仰け反った和彦は布団の端を掴んでいた。 守光は時間をかけて、たった一度しか暴かれたことのない和彦の秘密の場所を犯していく。棒がどれほど深く挿入されたのか知る術はないが、強烈な感覚――快感にも似たものが腰から背筋へと何度も駆け抜け
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第43話(24)

 まるで絶頂に達したあとのように、一気に脱力する。とてつもない痴態を晒したのだが、頭の中が真っ白となり何も考えられない。両目を覆ったスカーフに無意識に手をかけようとして、守光に穏やかな口調で窘められた。「まだそのままで。……あんたは気にしなくていい。今から片付けをさせるから」 えっ、と思ったときには、守光が誰かに呼びかけるように声を上げ、数拍の間を置いて襖が開き、人が部屋に入ってきた気配がした。抑え気味の足音ではあるが、一人ではない。 あられもない自分の姿を見られると、半ば恐慌状態に陥りながら和彦は体を起こそうとして、肩に大きな手がかかる。「落ち着きなさい。あんたの体をきれいにして、布団を入れ替えるだけだ」 守光にそう声をかけられはしたものの、だからといってすぐに身構えを解けるはずもない。和彦は居たたまれなさに泣き出しそうになる。 濡れたタオルを腰に当てられ、体を捻って逃げようとしたが、抵抗はあっさり封じられる。「あの……、自分でやり、ます……」 震えを帯びた和彦の言葉に応じる声はない。 一体何人が部屋に入ってきたのか懸命に気配を探ろうとするが、下肢の汚れを他人に後始末してもらうという状況に意識はすぐに散漫となる。 そもそも、一階に人の気配はなかったはずなのに、いつの間にか部屋の外に待機されていたのだ。自分が鈍いのか、もしくは、息を潜めて身を隠していた男たちが手練れなのか。いまさらながら、守光の手回しのよさが和彦には不気味だ。 あらかた下肢を拭われると、前触れもなく背と両膝の裏に腕が回される。何事かと思ったときには、強い力で抱え上げられていた。 咄嗟にしがみついて感じたのは、相手の分厚く逞しい胸板の感触だ。その瞬間、強烈な雄の匂いを嗅ぎ取った。 ハッとして相手を見上げる。もちろん、両目は覆われたままなので顔を見ることはできない。それでも感じるものがあった。 抱え上げられていた時間はわずかで、すぐに和彦は布団の上に下ろされる。新しいシーツの感触を指先で確かめていると、入ってきたとき同様、抑え気味の足音が部屋を出て行
last updateLast Updated : 2026-08-15
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第43話(25)

 内奥から道具が引き抜かれ、代わって指が挿入される。解れ具合を確かめるように、すっかり発情した襞と粘膜を撫で回されたあと、守光が小声で何事か呟く。和彦に話しかけたようでもあり、独り言のようでもあったが、ふと感じた違和感は、砂糖菓子のように淡く溶けていた。 言われるまま和彦は仰向けとなり、両足を自ら広げて守光を迎え入れる。 内奥に押し入ってくる熱や、全身で感じる重みに、ようやく肉で繋がっているのだと実感する。明け透けではあるが、そうとしか表現できなかった。 一息に内奥深くまで刺し貫かれて、一度、二度と突き上げられる。和彦は体をくねらせながら、抱えられた両足を揺らす。反り返った欲望をてのひらに包み込まれ、穏やかな律動に合わせて扱かれると、悦びの声が溢れ出すのはあっという間だった。「気持ちいいかね、先生?」 耳元で守光に囁かれ、こくりと頷く。そのまま耳朶に唇が這わされ、舌で舐られたあと、じわりと歯が立てられる。甘い痛みに無反応ではいられず、道具によって広げられた内奥が淫らな蠕動を始めていた。 乱れる一方の和彦とは対照的に、守光はいつものように浴衣を脱いではいなかった。見なくとも、端然とした佇まいが容易に瞼の裏に浮かぶ。前を寛げただけの格好で思う様、和彦を犯しているのだ。「あんたは本当にいやらしい」 笑いを含んだ言葉に対して感じたのは羞恥ではなく、疼きだった。守光の欲望をきつく締め付けると、乱暴に内奥を突き上げられる。 守光が上体を起こし、片手が胸元に這わされる。今日に限って意図したように触れられなかった突起を、不意打ちのように抓り上げられた。一瞬走った痛みは、やはり甘さを伴っており、快感との区別がつかなくなる。 まるで何かを確認するように、守光の手が体中に這わされる。その最中、和彦はこの日初めて精を放ち、自らの下腹部を濡らしていた。「また漏らしたかね」 息を喘がせる和彦にそう声をかけた守光は、下腹部に触れたあと、和彦の唇に指先を這わせてくる。口腔に指が押し込まれて、独特の味と風味を舌の上に感じる。それが自分の精だとわかったとき、また体が反応していた。「……思った通りだ。よく締まっている
last updateLast Updated : 2026-08-15
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