** 妙なことになったと、畳の上に座った和彦は軽く困惑しつつ、浴衣の衿を直す。そして改めて、室内を見回す。 まるで旅館の客室のような部屋で、必要なものは過不足なく揃っていた。しかも、和彦が入浴をしている間に、抜かりなく布団も敷かれてしまった。まさに、もてなす気満々といった感じだ。 それが悪いとは言わないが、素直に好意に甘えるには、少々抵抗があった。なんといってもこの部屋は――。 和彦はまだ半乾きの髪を指で軽く梳いてから、ため息をつく。同じ屋根の下に総和会会長がいるのかと思うと、やはりどうしても寛げない。 夕食をともにしたあと、コーヒーを飲みつつ世間話をしたまではよかったのだ。ただ、あまり遅くならないうちにお暇を、と和彦が切り出したとき、即座に守光から提案された。 ぜひ、泊まっていってくれと。 乗り気の千尋と二人がかりで説得されて、嫌と言えるはずもない。遠慮の言葉すら口にできず、和彦は頷いていた。その結果が、総和会会長宅の客間で一人、所在なく座り込んでいるこの状況だ。 自分の立場の微妙さもあり、和彦はいまだに、守光とどう接すればいいのかわからない。かけられる言葉に甘え、打ち解けて見せた途端、何か恐ろしい獣が牙を剥きそうな本能的な怯えが拭えないのだ。 この状態で眠れるのだろうかと、もう一度ため息をつこうとした瞬間、視界の隅に鮮やかな色彩を捉えて、和彦はドキリとする。何かと思えば、床の間に掛けられた掛け軸だ。 派手な装飾品のない客間の中、この掛け軸は鮮烈な存在感を放っていた。描かれているのは、鎧を身につけた若武者が、栗毛の馬に跨っている姿だ。武具や馬具には、赤や朱、金という華やかな色が惜しみなく施されているが、何より鮮やかなのは、若武者そのものだ。 見惚れるほど美しい顔立ちをしており、表情は凛々しい。どこかを見据える眼差しは涼しげでありながら憂いを含んでおり、それが妙に艶かしい。 描かれたのはそう昔ではないだろう。作風は現代のものに近いと、美術に疎い和彦でも判断できる。 もっと近くで見たくて、床の間に這い寄ろうとしたとき、突然背後から声をかけられた。「――賢吾が生まれたときに、端午
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