LOGIN「秘密を抱えた先生の表情だ。俺にバレるのが怖くて、必死にそれを押し殺している。そのくせ、どんな〈いいこと〉をしてもらったのか知らねーが、目のやり場に困るような色気を振り撒いてやがる」
和彦は瞬きも忘れて、賢吾を見上げる。次の瞬間には握り潰されるのではないかと、切迫した危機感に息が止まりそうになるが、賢吾はくすぐるように優しく欲望を擦り上げてくる。和彦は顔を背けて唇を噛んだ。「たっぷり搾ってもらったようだな。俺が触ってやるとすぐに反応するのに、今朝は反応が鈍い」 あからさまな賢吾の物言いに、体が熱くなる。「性質の悪い男を片っ端から血迷わせて、まったく性質の悪いオンナだ……。そのくせ、こんなものをつけている、見た目だけは優しげな色男だからな」 和彦のものを緩く扱いてから、賢吾の指が秘裂をまさぐってくる。まだ熱をもって疼いている内奥の入り口を軽く擦られて、無意識に腰が揺れる。賢吾は唾液で指を濡らすと、躊躇なく内奥に挿入してきた。「ううっ」 丹念な愛撫を与えられた直後のように従「いいよ。ずっと先生に責任取ってもらうから」 それは困る、と思った和彦だが、千尋に性急に唇を塞がれ、言葉が口をついて出ることはなかった。 千尋の汗ばんだ両てのひらが脇腹から胸元へと這い上がり、すぐに指先に左右の突起を探り当てられ、押し潰すように刺激される。体を押し付けてくる千尋の情熱に圧倒されながら、和彦ものろのろと手を動かし、千尋の体をTシャツの上からまさぐる。いつの間にか逞しさを増した若い体だが、和彦が愛しているしなやかさは少しも損なわれていない。 Tシャツの下に手を潜り込ませ、熱く滑らかな肌を撫で回す。この肌に刺青が彫られるのかと考えると、正直惜しい。だが同時に、千尋の肌に彫られた刺青を撫で回す瞬間を想像すると、和彦はひどく高ぶるのだ。「先生、興奮してる」 和彦の両足の間を、パンツの上から押さえつけた千尋が嬉しそうに洩らす。思わず手を押し退けようとしたが、そのときにはすでに、ベルトを外されているところだった。「千尋、立ったままでっ……」「どうせ俺、若くして妙な性癖の持ち主だし」「そんなことで開き直るな。すぐそこにベッドがあるだろ」「見えない。――先生しか見えない」 真顔で千尋に囁かれ、感じた気恥ずかしさを誤魔化すように和彦は顔をしかめる。「……何言ってるんだ、お前は」「つまり、たっぷり俺と気持ちよくなろうってこと」 パンツの前を寛げられ、下着ごと引き下ろされる。ポロシャツすらも脱がされながら、無駄だと思いながら和彦は一応忠告しておく。「シャワーも浴びてないから、汗くさいぞ」「先生の汗の匂い、大好き」 半ば予測できた千尋の返答に、和彦はもう苦笑を洩らすしかない。身につけていたものをすべて脱がされてしまうと、羞恥に身じろぐ間もなく千尋に抱き締められた。 千尋のてのひらが、うなじから背、腰から尻へと移動する。たったそれだけで、鳥肌が立ちそうな疼きが背筋を駆け抜け、和彦は小さく声を洩らしていた。顔を覗き込んできた千尋と唇を啄ばみ合っていると、もう片方のてのひらが胸元をくすぐってくる。 期待で硬く
「もしかして、レッスンのせい?」「ああ。普段ジムでやっている運動とは、まったく違う筋肉を使った気がする。初めてで緊張していたから、体のあちこちに無駄な力が入ってたんだろうな」 だから、昼間からゆっくりと風呂に浸かり、しっかりと体を解そうと考えたのだ。 ちなみに、日曜日の午前中から千尋に連れて行かれた先は、ゴルフスクールだ。 本気で和彦をゴルフコースに連れ出すつもりらしく、そのためにはまず基礎を、ということで、勝手に体験レッスンを申し込んでいたのだ。しかも、レッスンプロによるマンツーマンの指導が受けられるという特別コースを。ゴルフ道具一式も一通り揃えてもらったため、いまさら嫌だとも言えず、和彦はやむなく人生で初のゴルフを経験したというわけだ。 和彦が慣れないクラブの握り方に四苦八苦している頃、千尋は別のレッスンプロから指導を受けていたそうだ。千尋もゴルフを習い始めたばかりだということなので、コースに出ると案外同じようなレベル同士、楽しめるかもしれない。「……まあ、いつになるやらという話だが」 ぼそりと和彦が呟くと、何事かという顔で千尋が前に回り込んでくる。そんな千尋の頬を、やや手荒に撫でた。「お前も、朝から動き回って疲れただろ。早く本宅に戻れ」「全然。体力あり余ってるけど」「……ぼくとお前の年齢差と体力差を考えろ」 千尋を押し退けて寝室に入る。「ぼくはゆっくりと風呂に入ったら、昼寝する。疲れた」「先生、冷たい……」 芝居がかったように恨みがましい声が背後から聞こえてきたかと思うと、いきなり抱きつかれた。驚いた和彦は声を上げ、体を捻ろうとする。「千尋っ」「――連休の間、ずっと先生に会えなかった俺に、そんなに冷たいこと言うわけ?」 突然耳元で低く囁かれ、和彦はドキリとする。千尋に対しての、後ろめたさの表れとも言えた。追い討ちをかけるように、拗ねた子供のような口調で千尋が続ける。「連休の半分以上を総和会の別荘で、三田村と一緒に過ごして、帰ってきたらきたで、今度は組関係の仕事
リビングに足を踏み入れた千尋は、きょろきょろと辺りを見回してから、拍子抜けしたようにこう言った。「先生、部屋の改装工事したんじゃなかったの?」 千尋が何を疑問に感じたのか、和彦にはよくわかった。一見して、どこも変わってないように見えるのだ。実は和彦も、総和会の別荘から戻って部屋を見たときは、正直少しだけ拍子抜けした。賢吾から概要は聞いていたが、要塞のようになっているのではないかと、戦々恐々としていたのだ。 和彦がダイニングに移動すると、人懐こい犬っころのように千尋もあとをついてくる。そしてやはり、不思議そうに辺りに視線を向ける。「……ここも、変わってないように見える……」 そう呟いた千尋がふらふらとダイニングを出て行き、他の部屋へと向かう。部屋の改装について、賢吾から詳しいことは聞かされていないのだなと思いながら、ジャケットを脱いだ和彦は冷蔵庫からオレンジジュースの紙パックを取り出し、グラスに注ぐ。とにかく喉が渇いていた。 一息にグラスを空にして、ほっと息を吐き出す。酸味が強めのオレンジジュースがやけに甘く感じられる。 和彦はシンクにグラスを置くと、大きく腕を回してから、軽く腰を捻ってみる。普段使わない筋肉を使ったせいか、肩や背にかけて少し違和感がある。もしかすると明日には筋肉痛が出るかもしれない。「まったく、どうしてあの父子は、事前に人の予定を聞くということができないんだ……」 小さくぼやいた和彦は、千尋の姿を探してあちこちの部屋を覗く。どこにいるのかと思えば、バルコニーに出ていた。 千尋は、厚みのある窓ガラスを軽く叩いて、目を輝かせていた。「このガラス、本宅に入れてあるのと厚みが同じだよ、先生」「嬉しそうに言うな。本宅と同じぐらい、ここも物騒な場所になったのかと、気が滅入りそうになる」 そう応じて和彦は窓に歩み寄る。開けた窓から吹き込む風はいくらか涼しいが、これに陽射しの強さが加わると、すでにもう春とは呼べない季節だと痛感させられる。 すぐに蒸し暑くなり、湿気にまとわりつかれる梅雨がやってくるだろう。その鬱
汗で額に張り付いた髪を中嶋に掻き上げられ、ようやく我に返る。和彦は息を喘がせながら、なんとか言葉を紡ぐ。「……すまない。ぼくだけ――」「まだ、これからですよ。先生。俺も、三田村さんも」 どういうことかと、和彦が頭を持ち上げようとしたとき、背後で三田村の気配が動く。「うっ」 無意識にきつく締め付けていた和彦の内奥から、指が引き抜かれる。だがすぐに、今度は熱く硬いものが押し当てられ、余裕なく内奥の入り口をこじ開け――。「んあぁっ」 苦痛を覚えるほど逞しいものが内奥に押し入ってきて、和彦は思わず体を起こそうとしたが、中嶋にしっかりと抱き締められているため、動くことが叶わない。その間にも、容赦なく内奥は押し広げられ、熱いものを捻じ込まれていく。 もちろん、それがなんであるか、すぐに和彦は察する。頭は混乱し、戸惑ってはいるが、〈オトコ〉の感触をよく覚えている体は、瞬く間に馴染み、受け入れてしまう。「あっ、あっ、あっ……あぅっ」 大きな手に尻を掴まれ、一度だけ乱暴に突き上げられる。その拍子に和彦は、中嶋とまだ繋がっていることを強く認識させられる。精を放ったばかりの和彦のものを、中嶋の内奥が淫らに蠢きながら締め上げてきたのだ。 感じる疼きに、たまらず和彦は身震いする。そんな和彦を労わるように、中嶋は肩先を撫で、三田村は腰を撫でる。「――先生」 中嶋に呼ばれて顔を上げると、優しく唇を啄ばまれる。そのまま舌先を触れ合わせ、互いの唇と舌を吸い合う。タイミングを計っていたのか、三田村が内奥で律動を刻み始め、和彦の体は前後に揺さぶられ、同時に、中嶋の内奥を突き上げるようになる。 そんな和彦の姿をどう見ているのか、三田村は何も言わない。ただ、愛しげに和彦の体を撫で回し、繋がっている部分に指を這わせてくる。振り返って確認することもできず、和彦は中嶋とともに喘ぎながら、口づけを交わすしかない。「……気持ちいいんですね、先生。また、大きくなってきましたよ」 中嶋に囁かれ、羞恥で身を焼かれそうになる。それでも、やっとの思
和彦の行動を促すように、三田村が欲望を扱き始める。思いがけない三田村の行動にうろたえながらも、与えられる愛撫に和彦は即座に反応する。中嶋への愛撫どころではなくなり、ふらついた体を支えるため、咄嗟にラグに片手をついた。「三田村、待ってくれ――」 和彦が制止の声を上げると、三田村だけではなく、中嶋すら刺激したらしい。さきほどまで喘いでいたくせに、さっそく和彦の胸元にてのひらを這わせてくる。「先生、三田村さんに気を取られちゃダメですよ。まだ、俺と楽しんでない」 いつの間にか自分が翻弄されていることに気づいた和彦だが、もうどうしようもない。中嶋の片足を抱え上げ、三田村の手によって高められた欲望を、内奥の入り口に押し当てる。背後から三田村に抱き締められながら、和彦はゆっくりと腰を進めた。「うぅっ」 和彦と中嶋の口から、同時に呻き声が洩れる。収縮を繰り返す内奥に、自らの欲望を埋め込んでいるのか、それとも呑み込まれているのか、判断がつかないうち強烈な感覚に襲われる。欲望をきつく締め付けられながら、熱い粘膜に包み込まれるのだ。痺れるような快感が腰から這い上がってくる。一方の中嶋は、普段和彦が味わっているような感覚に襲われているのだろう。 緩やかに腰を揺らしながら、中嶋のものを再びてのひらに包み込み、律動に合わせて上下に扱く。そんな和彦の体に、三田村が両てのひらを這わせ、まさぐってくる。しなる背を丹念に撫でられて思わず身震いすると、その手が一気に下がり、尻にかかった。 予期するものがあって動きを止めると、三田村の指に内奥の入り口をくすぐられる。「ふっ……」 短く息を吐き出した瞬間、内奥に指が押し込まれる。反射的に身じろごうとしたが、さらに三田村の指が深く入り込み、動きを封じられる。指を出し入れされながら内奥をじっくりと撫で回される一方で、和彦の欲望は中嶋の内奥に締め付けられる。前後から押し寄せてくる快感に、次第に和彦の息遣いは乱れ、理性が危うくなってくる。 中嶋は、妖しい表情でそんな和彦を見つめていた。「先生、三田村さんに触れられた途端、反応がよくなりましたね。俺の中で、ビクビクと震えてますよ。可愛いなあ&
ジーンズの中に手を忍び込ませ、中嶋のものを柔らかく握り締める。強弱をつけて指で締め付けてやりながら和彦は、中嶋の胸元に顔を伏せ、唇と舌を這わせる。中嶋の肌が、じんわりと熱を帯び始めていた。それに、すでに息遣いにも余裕が失われつつある。 秦はしっかりと、中嶋の体に快感を教え込んでいるようだ。そんなことを感じ取ってしまうのは、和彦自身が、複数の男たちから快感を与えられている身だからだ。 そして今は自分が、中嶋の体に快感を与えようとしている――。 この瞬間和彦の中に、強烈な感覚が駆け抜けていた。普段は味わえない快感を味わえるという、期待と興奮が入り混じったものだ。そこに、三田村に見られているという羞恥も加わり、異常なほど和彦は高ぶっていた。もちろん、その三田村に、今の姿を拒絶されるかもしれないという、恐れもある。 凝っている胸の突起を唇で柔らかく挟むと、中嶋の息遣いが弾む。舌先で転がし、軽く歯を当てているうちに、和彦の手の中にある欲望が次第に形を変え始めていた。 そこでジーンズに手をかけると、腰を浮かせて中嶋が協力してくれる。和彦は遠慮なく下着ごと引き下ろし、中嶋を何も身につけていない姿にしてしまった。すると、当の中嶋が声を洩らして笑う。「……なんだ?」「いや、先生の手つきが男らしいなと思って。三田村さんが見ているから、張り切ってます?」「話して気を散らそうとしてるだろ。意外に、余裕がなくなっているか?」 澄まし顔で和彦が問い返すと、中嶋は苦笑を浮かべる。何か言い返される前に唇を塞ぐと、すぐに中嶋が応えてくる。緩やかに舌を絡め合いながら、再び中嶋の欲望をてのひらに包み込み、優しく上下に扱く。濡れてきた先端を指の腹で軽く擦ると、中嶋が喉の奥から声を洩らして身を震わせた。 和彦は、欲望を扱きながら中嶋を見下ろし、興味のおもむくままにもう片方の手で体に触れていく。首筋から肩、腿から腰をてのひらで撫でてから、胸元は焦らすように指先を這わせる。たったそれだけで、中嶋の息遣いは切迫したものへと変わり、すがるように和彦を見上げてくる。「――……医者の指の威力を、いまさらながら思い知っています。
**** 雪を見に行かないかと賢吾から言われたとき、和彦がまっさきに思ったのは、これは機嫌取りなのだろうか、ということだった。 朝食のパンを食べ終えたところだった和彦は、指先を軽く払ってから、カップを両手で包み込む。ホットミルクを一口飲んで、向かいのイスに座る賢吾をジロリと見ると、口元を緩めていた。「――……雪?」「これから新年の挨拶も兼ねて、人に会いに行くんだ。ちょっと距離があるんだが、今はたっぷり雪が積もって、静かでいいところだ。一泊旅行の行き先として、最適
そんなことを言いながら、賢吾の唇が首筋に這わされる。和彦は喘ぎながら、内奥を押し広げるように挿入されてくる千尋のものを受け入れるしかない。一度引き抜かれ、すぐにまた挿入されたときは、湯の感触にも呻かされていた。 浮力で軽くなっているせいか、深く繋がって突き上げられたとき、いつも以上に腰が弾む。その様子がたまらなく淫らで、和彦は顔を背けたが、千尋にあごを掴まれて強引に唇を塞がれる。 貪るような口づけを交わしていると、千尋に抱き寄せられる。和彦も、素直に千尋の背に両腕を回した。賢吾の腕から解放され、向き合った千尋の腰を跨ぐ形となっていた。 二人は息を弾ま
マフラーの端を軽く払ってから、和彦は落ち着きなく周囲を見回す。明らかに、周囲の人間たちから注目を浴びていた。好奇心と、それを上回る畏怖と嫌悪が込められた視線は、和彦を萎縮させるには十分だ。 例え、それらの視線が和彦自身に向けられているわけではなく、和彦がよく知る男たちに向けられているのだとしても、平然とはしていられない。「――先生、わたしから離れないでください」 和彦と並んで歩いている組員が、低い声で話しかけてくる。地味な色合いのスーツを着てはいるが、全身から放たれる鋭い空気が明らかに堅気のものではない。普段であればまだ、一般人の中にうまく溶け込める
** さきほどまで和彦を貪ってきた千尋は、今は身を休める時間だといわんばかりに和彦の胸にしがみつき、満足そうだ。和彦はそんな千尋の頭を撫でる。こうなると千尋は、人懐こい犬っころそのものだ。「先生とこんなふうに年越しできるなんて、すっげー嬉しい」 無邪気な口調で可愛いことを言う千尋だが、和彦は騙されない。なんとなく腹が立つものがあり、軽く髪を引っ張ってやったが、ふざけていると思ったのか、千尋は小さく笑い声を洩らすだけだ。 三人での淫らで濃密すぎる行為のあと、和彦は千尋と一緒に再び風呂に入ってから、一人で部屋で休もうと思った