賢吾の指示を待っていたように、障子にスッと人影が映る。いつの間にか廊下に控えていたようだが、賢吾との行為に夢中になっていた和彦はもちろん気づかなかった。 廊下に人がいたというのも意外だったが、姿を見せた人物は、さらに意外だった。 丁寧な動作で障子を開けたのは、中嶋だった。和彦と賢吾の姿に驚いた様子もなく、それどころか和彦に笑いかけてくる。おそらく、廊下にいる間、行為の声をすべて聞いていたのだろう。「ど、して……」 中嶋が障子を閉めたのを機に、ようやく和彦は声を洩らす。愛撫の手を止めないまま賢吾が答えた。「俺が呼んだ。いままで、総和会との連絡役は別の人間だったんだが、若い連中の中で抜きん出て見所があるし、先生と親しいということで、新たに中嶋を指名した。長嶺組長の本宅に出入りできる、総和会でも数少ない男というわけだ」 いつの間にそういう話が決まったのかと思ったが、これは組の細かな決定事項の一つだ。賢吾が和彦に知らせる必要はない。ただし賢吾は、和彦の反応を見たいがために、この瞬間まで隠していたのだろう。そういう男だ。「先生としても、俺の目を盗んで中嶋と会っているという罪悪感を抱かなくて済むだろ。本宅に出入りできるようになったぐらいだ。長嶺組長のオンナの部屋にも、中嶋は堂々と立ち寄れる」 賢吾の言葉で和彦は、中嶋と絡み合った日のことを思い出す。ベッドの上での甘い呻き声を、盗聴器を通して賢吾が聴いていたことは知っている。そのうえで中嶋に、本宅や和彦の部屋の出入りを認めたのだ。「……何を企んでるんだ、あんたは……」 思わず和彦が問いかけると、うなじに唇を押し当てながら賢吾は言った。「先生が生活のしやすい環境を整えただけだ。――俺が何を企んでるか、先生は気にしなくていい」 賢吾が腰を揺らし、内奥の感じやすい部分を擦り上げられる。和彦は咄嗟に声を堪えたが、表情は隠せなかった。正面に立つ中嶋に、すべて見られてしまう。それどころか、賢吾と繋がり、悦びに身を起こした欲望の存在も。 中嶋は薄い笑みを唇に湛え、目には興奮の色を浮かべる。そんな中嶋に
Read more