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第20話(13)

 指では届かなかった部分すら、鷹津の欲望は容赦なく押し開いていく。和彦は上体を捩るようにして苦痛から逃れようとするが、一方で、鷹津に支配された腰は、突き上げられるたびに淫らに蠢く。その対比を鷹津は楽しんでいるようだった。「……初めての男は、お前をどこまで開発してくれたんだろうな」 そんなことを洩らしながら、いつの間にか身を起こした和彦のものを片手に握り、律動に合わせて上下に扱いてくる。「いっ……、あっ、触る、な」「こんなに嬉しそうに涎を垂らしておいて、何言ってやがる。――尻がいいのか? ビクビクと痙攣しまくってるぞ」 両足を抱えられ、内奥深くを抉るように突き上げられる。これ以上なくしっかりと、鷹津と繋がったのだ。 息を喘がせる和彦の顔を、鷹津が見下ろしてくる。嫌な笑いはその顔にはなく、欲望が滾る目だけが、率直な感情を表しているようだ。 顔を近づけてきた鷹津に唇を吸われ、思わず吐息をこぼす。体全体で鷹津の重みを、体の内で鷹津の欲望の熱さを感じながら和彦は、差し出した舌を絡め合っていた。貪り合うような口づけを交わしながら、両腕を鷹津の背に回す。「初めて男と寝たとき、こんなふうに甘えたのか?」 口づけの合間に鷹津にまた問いかけられる。「過去はともかく、少なくとも今は、あんたに甘えてなんて、いないだろ」「そうか?」 乱暴に腰を突き上げられ、悲鳴を上げた和彦は鷹津の背にしがみつく。「うあっ、うっ、うっ、んううっ――」 口ではどれだけ強がろうが、体は鷹津を受け入れ、媚びてさえいた。内奥を抉られ、掻き回されるたびに、逞しい欲望をきつく締め付けてしまう。 鷹津に唆されて体を引き起こされると、互いに座った姿勢で向き合う。もちろん、繋がったままだ。 内奥深くでふてぶてしい存在感を示す欲望が、和彦の官能を否応なく引きずり出す。ヒクリと背をしならせて反応すると、鷹津は露骨に腰を動かしてくる。鷹津の肩に掴まりながら和彦は、必死に自分を保とうとしたが、強引に唇を塞がれ、引き出された舌を吸われているうちに乱れていく。 鷹津の腕の中で掠
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第20話(14)

 こういうときはさっさと入浴を済ませ、熱いお茶を飲んでベッドに入るに限る。とにかく体を温めて休みたかった。 前触れもなく寒気を感じ、身震いしてエレベーターに向かおうとしたとき、携帯電話が鳴る。こんな時間に電話をかけてくる相手は決まっており、和彦はやや緊張しながら電話に出た。『――誕生日の夜は楽しめたか?』 耳に届くバリトンが、いつになく皮肉げな響きを帯びているように感じるのは、後ろめたさの表れかもしれない。ちらりとそんなことを考えた和彦は、小さくため息をついた。「鷹津は、今日がぼくの誕生日なんて知らなかった。危うく、あの男の食事代を奢らされるところだったんだ」『その口ぶりだと、さすがにメシは奢ってもらったか?』「あとであんたに笑われるのが癪だからと言って、渋々出してくれた」『先生というフルコースが食えるなら、安いものだ』 賢吾の物言いに、意識しないまま和彦の全身は熱くなる。鷹津と食事することは報告してあったが、その後どうなるか、当然のように賢吾は予測していたようだ。和彦としては、報告の手間が省けたと喜ぶ気にもなれない。「……予定外だった。ぼくは仕事を頼んだつもりはなかったけど、鷹津が勝手に……」『あの狂犬みたいな男を、上手く手懐けているみたいだな。ただ、手綱はしっかり締めておけよ。なんの拍子で暴走するかわからない。例えば、俺の可愛いオンナに執着するあまり――とかな』 賢吾の声はあくまで柔らかいが、和彦はそこに怖さを感じる。もしかして怒っているのだろうかと思いはするが、本人に尋ねる勇気は持っていない。『それで鷹津は、先生のためにどんな仕事をしたんだ』 咄嗟に頭の中が真っ白になった和彦は、ぎこちなくエレベーター前まで移動する。その間に呼吸を整えた。「南郷さんのことを調べた。……鷹津本人が気になっていたみたいだ。あちこちで話を聞いて、前科についても調べたと」『それだけか?』 口が裂けても、里見のことを調べるよう頼んだとは言えない。和彦は感情の揺れを読まれないよう、短く答えた。「ああ」
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第20話(15)

 通訳を介しながら外国人患者相手に治療手順を説明してから、レントゲンを撮り、局所麻酔のあとに傷を洗い、皮膚を縫い合わせるという一通りのことをこなしたが、大変なのは、むしろそのあとだった。患者が貧血を起こし、大きな体で卒倒したのだ。さんざんアルコール臭い息を吐いていたが、どうやらようやく酔いが醒め、現状を認識したらしい。 患者をベッドで休ませている間に、和彦やスタッフはクリニックを片付け、組員は慌しくスケジュールの変更を電話で告げていた。 幸いにも、患者は三十分ほどで目を覚まし、自分の足でしっかりと立ち上がった。 まるで儀式のように、組員たちは律儀に和彦に頭を下げ、礼を言う。力ない声でそれに応じた和彦は、非常口から来訪者とスタッフを見送った。 ここで、ずっと和彦の傍らに控えていた護衛の組員が口を開く。「先生も疲れたでしょう。すぐにお送りします」「そうだな……」 和彦は緩慢な動作で腕時計に視線を落とす。疲れ果ててはいても、簡単な計算ぐらいはできる。今からマンションに戻ったところで、横になれるのはわずかな時間だろう。 とにかくすぐにでも横になりたかったため、和彦が結論を出すのは早かった。「――……今日はもう、このままクリニックに泊まる。そのための仮眠室だし。だからもう、君は引き上げていいよ」「しかし、夜のクリニックに先生一人を残すわけには……」「平気だ。ここはセキュリティーシステムも入れてあるし、仮眠室のドアはしっかり中から鍵をかける。組長には、ぼくからあとで説明しておく――」 ここで和彦は、たまらずあくびを洩らす。話すのもつらくなってきたと察してくれたのか、組員は一礼したあと、気をつけるよう何度も和彦に念を押して帰っていった。 一人となった和彦は、給湯室でお湯を沸かす間に玄関の施錠を確認し、防犯システムを作動させる。 熱いお茶の入ったカップを手に仮眠室に入ったとき、すでに和彦はふらふらの状態だった。ベッドの傍らの小さなテーブルにカップを置くと、スウェットの上下に着替える。仮眠室はひどく寒いが、スタッフの休憩室からヒー
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第20話(16)

**** 三田村が言うところの『世俗的なイベント』を、和彦は無視できなくなっていた。誕生日を祝ってくれた男たちに対して、ささやかなお返しをしようと考えたとき、これ以上ない口実として利用できるからだ。 仕事を終え、いつもより早めにクリニックを閉めた和彦は、組員に頼んでデパートへと寄ってもらう。 そこで、自分の考えがチョコレートよりも甘いことを痛感させられた。 バレンタインデー前日のデパートのチョコレート売り場は、目を瞠る混雑ぶりだ。 こんなときだからこそ、豊富な種類が揃ったチョコレートをじっくり見て回ろうと思っていたが、ショーケースに近づくのも苦労しそうだ。とにかく女性客でごった返しており、心なしか殺気立っているようにも感じる。 すでに他のフロアで買い物を済ませた和彦だが、さすがにこのフロアでの自分の場違いぶりを肌で感じ、怯んでしまう。辺りに漂う甘い香りが、その感覚に拍車をかける。 当然といえば当然だろう。バレンタインデーのために買い物をするのは、やはり女性だ。もしくは、勇気あるチョコレート好きの男性か。実際、女性客に交じって、ちらほらと男性客の姿もある。 同性の恋人のために――と勘繰るほど悪趣味ではない和彦は、自分もチョコレート好きなのだと思い込むことで、大勢の女性客の中を進んでいく。 誰に対する言い訳なのか、自分も食べるから、と心の中で繰り返しつつ、少し値の張るチョコレートをいくつも買い込む。長嶺の本宅に置いておけば、組員の誰かが摘まんでくれるだろう。もちろん、買い込んだチョコレートの中には、〈本命〉に渡すものもある。 いくつかの袋を手に、和彦はやっと売り場から抜け出す。 自意識過剰だと思いつつも、途中までは他の客の視線が気になっていたが、買い物好きの気質は、こういうとき便利だ。チョコレート選びに夢中になってしまうと、他人どころではなくなった。どうせ一年に一回のことだと、開き直るのも容易だ。 肩の荷が下りた気分で歩いていた和彦だが、すぐに歩調を緩め、手にした袋を見下ろす。チョコレートを買って気分が浮ついている一方で、自分のズルさがチクチクと胸に突き刺さる。いつもなら
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第20話(17)

 そんなことを漫然と考えているうちに、車はある雑居ビルの前に停まる。夜に差しかかろうとしている時間帯の繁華街はにぎわっており、人通りも多い。そんな中、行き交う人たちとは明らかに異質な空気を放つスーツ姿の男が、素早く車に歩み寄ってきた。それが総和会の出迎えの人間だとわかり、和彦はシートベルトを外す。 降りる準備をしながら、ここで今日は別れることになる運転手の組員に、さきほどデパートで買い込んだものをマンションの部屋に運ぶよう頼んでおく。 車を降りると、一礼した男に周囲から庇うようにしてビルの中へと案内される。やけに入り組んだビル内を歩き、狭い通路の奥まった場所に、年齢もばらばらの数人の男が立っていた。特別服装が崩れているというわけでもないのに、一目で筋者とわかる。持っている空気が、とにかく鋭い。 賢吾と出かけたときに、さんざんこういった光景を目にしているが、やはり総和会会長ともなると、警護の厳重さが違う。 会釈した男たちの向こうに重々しい扉があり、総和会会長がいることを物語っていた。 扉が開けられ、促されるまま中に足を踏み入れた和彦は、妙齢の着物姿の女性に出迎えられた。わけがわからないままコートを預け、席へと案内される。 当然だが、クラブは貸切となっていた。テーブルのいくつかは埋まっているが、それはすべて総和会の人間だろう。落ち着いた雰囲気の中、会話を楽しんでいる様子はあるが、やはり何かが違う。 緊張するあまり、息苦しさすら覚えた和彦が喉元に手をやったとき、ある男と目が合った。南郷だ。 テーブルの一角に二人の男たちと陣取り、何事か話し込んでいる様子だったが、和彦を見るなりのっそりと立ち上がり、頭を下げた。無視するわけにはいかず、テーブルの側を通るとき和彦も会釈をする。 そしてやっと、和彦を招いた本人と対面が叶う。「――よく来てくれた、先生」 ソファに腰掛けたノーネクタイで寛いだ姿の守光が、笑いかけてくる。和彦もぎこちないながらも笑みを浮かべて挨拶をする。すると、守光と同じテーブルについていた男が立ち上がり、和彦に着席を促した。恭しい手つきで示されたのは、守光の隣の席だ。 何も考えられず、求められるままに行動する。この状況
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第20話(18)

「人間の価値を決めるのは本人ではなく、関わりを持つ人間たちだ。あんたにとっては、世間から嫌われ、恐れられている我々ということだ。わしらに価値を認めてもらったところで、嬉しくはないだろうがね」 和彦は、静かに視線を周囲に向ける。守光を絶対の存在として仕えている総和会の男たちは、鉄の壁だ。総和会という組織と、総和会会長を守るための。そんな男たちが和彦という存在にどれだけの価値を見出しているのか、推し量る術はない。ただ、守光が言うのなら、それが男たちにとっては絶対となるのだろう。「あなた方が、佐伯家についてどれだけ調べているのか知りませんが、佐伯家にとってぼくは、そう価値がある存在ではありませんでした。佐伯の姓を持つから、存在を認めてもらっているんです。正直、こんなに大勢の人たちに、ここまで大事にしてもらったことはありません」 ここでボーイがスマートな動作で歩み寄ってきて、空になった和彦のグラスを取り替えてくれる。さきほどからこの繰り返しで、意識しないまま和彦の酒量は増えていた。「――近いうちに、春の行事の打ち合わせも兼ねて、泊まりでちょっと遠出することになっている。医者であるあんたに同行してもらえるとありがたいんだが」 グラスに口をつけた和彦に、守光が思いがけない提案をしてくる。唐突な話題に戸惑うと、守光は物腰の柔らかさには似合わない、ゾクリとするほど冷徹な眼差しを向けてきた。いや、本当は眼差しすらも柔らかいのかもしれないが、少なくとも和彦にとっては怖かった。「泊まった先で、おもしろい話をしてやろう。千尋はもちろん、賢吾すら知らない話だ。わしとあんたの秘密……というには大げさだが、あんたにとっても興味深い話のはずだ」 守光の眼差しは、怖くある反面、強烈に和彦を惹きつける。太く艶のある声で語られる言葉には、好奇心を刺激される。「ぼくの、一存では……」「賢吾が許可すれば、来てくれると?」 ためらいつつも、和彦は頷く。守光ほどの人間が、子供騙しのようなウソをつくとは思えなかった。「わかっているとは思いますが、ぼくは内科は専門外です。同行しても、いざというときお役に立てるかは――」
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第20話(19)

「知ることで、どんどんこの世界の深みにハマる。そうやって、長嶺の男たちが大事にしている先生を、逃がさないようにしている」 本気とも冗談とも取れることを言って、守光は声を上げて笑った。さすがにその声に驚いたのか、店内の男たちが一斉にこちらに向き、和彦一人がうろたえてしまう。 視線を避けるようにグラスを取り上げ、水割りを飲もうとしたところで、膝の上に置かれたままの守光の手に気づいた。その手が意味ありげに動き、膝を撫でて離れる。たったそれだけのことだが、肌に直接触れられたような生々しさを感じ、和彦は体を硬直させる。「――賢吾も千尋も、あんたをこの世界から逃すまいと、必死だ。そしてわしも、同じ気持ちだ」 片手を出すよう守光に言われ、おずおずと従う。てのひらにそっとカードキーがのせられた。それが何を意味しているか瞬時に理解した和彦は、顔を強張らせつつも、体が熱くなっていくのを止められなかった。「あんたをもっと、この世界の奥深くに取り込みたい。わしの家で一泊したあとも、あんたは長嶺の庇護の下から逃げ出さなかった。つまり、こう解釈できる。あんたはどんな形であれ、長嶺の男〈たち〉を受け入れてくれる、と」「……よく、わかりません……。いろいろと考えることが多くて、ぼくはどうすればいいのか……」「だが、佐伯和彦という人間はここにいる。わしの隣に、こうして行儀よく座ってな。それはもう、流されているにせよ、一つの選択肢を選んだということだ」 守光が顔を寄せ、耳元にあることを囁いてくる。和彦は瞬きもせず守光の顔を凝視していた。 いつも賢吾に対してそうしているせいか、半ば習性のように目の奥にあるものを探る。息づいているのは大蛇ではなく、だが確かに物騒な気配を漂わせた〈何か〉だ。 怖いが、目を背けられず、触れてみたいとすら思ってしまう。 和彦は視線を伏せると、浅く頷いた。** バスローブ姿でベッドの隅に腰掛けた和彦は、閉じたカーテンをぼんやりと眺めていた。カーテンの向こうには、いくら眺めても飽きないほどの夜景が広がっているとわかっ
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第20話(20)

 体がじわりと熱くなってきたところで和彦は、相手の意図を知った。 三日前、和彦は鷹津と体を重ねた。そのとき鷹津から受けた愛撫の痕跡がまだいくつか肌に残っており、それを辿っているのだ。 急に羞恥と後ろめたさに襲われて身じろごうとしたが、すかさず敏感なものをてのひらに包み込まれて動けなくなる。 和彦のささやかな抵抗すら封じ込めると、相手の手つきは、冷静に体を検分するものから、官能を刺激するものへと変わる。そして和彦は、逆らえない。 相手がベッドを下りる気配がした。もちろん、行為がこれだけで終わるはずもなく、和彦の耳に衣擦れの音が届く。すぐにベッドが揺れ、再び相手の手が和彦の体に触れる。 愉悦を与えられる手順の何もかもが、あの夜と同じように思えた。 和彦のものは再びてのひらに包み込まれ、緩やかに上下に扱かれる。もう片方の手が腿から腰、胸元へと這わされ、撫で回してくる。相手の手つきはあくまで丁寧で、緊張で強張っている体を解そうとしているのだ。 和彦はゆっくりと呼吸を繰り返し、てのひらの感触が肌に馴染んでいくのを感じていた。目隠しの下で目を閉じながら、さきほどまで自分が身を置いていた状況を思い返し、目まぐるしく思考を働かせる。 あの場にいた男たちに、自分はどんな存在として認知されているのだろうか。ふとそれが気になったが、喉元にまでてのひらが這わされて我に返る。一瞬、首を絞められるのではないかと危惧したのだ。 当然だが、そんな物騒なことはされなかった。 あごの下をくすぐられ、頬を撫でられて、耳の形をなぞられる。唇には指先が擦りつけられた。考えてみれば、前回は顔全体に布をかけられていたため、このように触れられることはなかったのだ。 そしてまた、胸元から腰にかけててのひらを這わされる。「ふっ……」 腰の辺りに疼くような心地よさが広がり、和彦は小さく声を洩らす。絶えず愛撫を与えられている和彦のものは、すでに身を起こしていた。それを待っていたように相手の手が、今度は和彦の柔らかな膨らみにかかった。 爪先をベッドに突っ張らせて、和彦はビクビクと腰を震わせる。怖い、と咄嗟に思ったが、足を閉じ
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第20話(21)

 相手の手に、発情して熱くなった体をまさぐられていた。それどころか、繋がってひくつく部分を指先でなぞられる。おそらく、しっかり見つめられてもいるだろう。和彦が相手の姿を見られないというのに、相手は和彦の痴態のすべてを目に焼き付けているのだ。「あっ、あっ、んあっ――」 頭の芯が溶けていくような肉の愉悦に、声が抑えられない。和彦の恥知らずな声に刺激を受けたように、緩やかに内奥を突き上げられる。それだけで深い感覚が波のように広がっていた。 背後から貫かれ、しっかりと繋がった姿勢のまま、一度律動は止まる。和彦は大きく荒い呼吸を繰り返しながら、体の中心からじわじわと広がる肉の快感を、より明確なものとして実感していた。 内奥深くに埋め込まれた熱い欲望を、きつく締め付ける。あさましいとわかってはいるが、どうしようもできない。物欲しげな襞と粘膜が勝手に蠢き、欲望に奉仕する。その奉仕に対する褒美のように、さらに愛撫が与えられた。「はっ、あぁっ……」 腰から背にかけて撫で回され、胸元にも触れられる。敏感に凝った胸の突起を摘み上げられると、意識しないまま和彦は腰を揺らす。すかさず、内奥深くで息を潜めていた欲望が動き、強い疼きが背筋を這い上がっていた。「はあっ――、あっ、うくっ……ん」 内奥に受け入れたものと、一つに溶け合ったような感覚を覚えていた。ただ、違和感はあった。 他の男たちと体を重ねながら感じる、荒い息遣いも、貪るような口づけも、濃厚な汗の匂いもない。体を繋いではいるが、体を重ねているわけではないのだ。これは、対等なセックスではない。 相手の存在を体に刻みつけられ、相手好みの快感で調教されているようだ。 胸元を撫でていた手が、みぞおちから腹部を撫でて、両足の間に差し込まれる。和彦は喉を鳴らすと、枕の端を両手で掴んだ。再び反り返り、熱くなって震えるものを優しい手つきで扱かれ、身悶えるほどの快感が腰に広がる。 ここでふいに、繋がりを解かれた。肩を掴まれた和彦は促されるまま、素直に仰向けとなり、両足を抱え上げられる。淫らに喘ぐ内奥を、すぐにまたこじ開けられ、欲望を呑み込まされた。
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第20話(22)

 和彦に姿を見られたくないというより、和彦の中でまだ覚悟が決まっていないことを見抜いているのだろう。相手の老獪さと狡猾さを思えば、そうであっても不思議ではない。 結局相手は、一言も発することなく部屋を出て行った。ドアが閉まる音を聞いて数分ほど待ってから、和彦はやっと目隠しを取る。慎重に体を起こし、乱れたベッドの様子を目の当たりにして密かに恥じ入りながら、バスローブを拾い上げて着込む。 目隠しをしていた間に世界が一変するわけもなく、なのに和彦自身は、自分を取り巻く世界がなんらかの変化を起こしたように感じていた。〈長嶺の守り神〉と体を繋ぐということは、こういう感覚の積み重ねなのかもしれない。 明日も仕事なので、ここで寝入ってしまうわけにもいかず、バスルームに向かう。激しさとは無縁だが、時間をかけての交わりは、驚くほど和彦の体力を消耗する。しかし、歩けないほどではない。とにかく一刻も早く、休みたかった。 じっくりと体を温めたいのを我慢して、バスルームで簡単に体を洗うと、手早くスーツを身につける。髪は手櫛で整えただけで、鏡を覗く余裕すらなかった。 まるで追い立てられるように部屋のドアを開けた瞬間、和彦は声を上げた。目の前に南郷が立っていたからだ。落ち着いた態度からして、どうやら和彦が出てくるのを待っていたようだ。 南郷は無遠慮に和彦をじろじろと見たあと、指先を軽く動かした。「俺についてきてくれ、先生。オヤジさんから、あんたをしっかり送り届けるよう言われている」 ためらいは覚えたが、南郷を無視するわけにもいかない。先を歩く南郷のあとを、仕方なくついていく。 ホテル前にはすでに車が待機しており、和彦は南郷とともに後部座席に乗り込んだ。 車が走り出しても、シートに体を預けることなく、頑なに外の景色に視線を向け続ける。とてもではないが、ホテルの部屋での濃厚な行為のあとに、平然と正面を向くことはできなかった。南郷のほうを見るなど、論外だ。 しかし南郷は、そんな和彦に容赦なく視線を向けてくる。なぜわかるかというと、ウィンドーに南郷の姿が反射して映っているため、どれだけ嫌でも目に入るのだ。 まるで根競べのように顔を背けていたが、南郷が口元に
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