何分か前まで、畳の上に転がって雑誌を読みながら、思い出したように和彦に話しかけていた千尋だが、すっかり寝入っているようだ。 どうせ昼寝をするなら、自分の部屋に戻ればいいのにと、和彦は小さく苦笑を洩らす。千尋としては、和彦が退屈しないよう、つき合っているつもりなのだろう。 呉服屋から戻ってすぐに、賢吾が見ている前で熱を測らされ、微熱が出ていることがわかった。普段の和彦であれば気づきもせずに動き回っている程度の熱だが、さすがに今は無茶できないと、こうして休んでいるというわけだ。 和彦は姿勢を戻し、再び天井を見上げる。 千尋の寝息を聞きながら思うのは、長嶺の本宅で自分は大事にされているということだ。クリニック経営という役目を負い、物騒であったり、訳ありの男たちを結びつけてもいる和彦に何かあったら面倒なのだと、捻くれた考え方もあるだろうが、決してそれだけではない。 間違いなく、長嶺の男たちは和彦を大事にしてくれていた。そして、長嶺と関わりを持つ男たちも――。 甘い眩暈に襲われて、反射的にきつく目を閉じた瞬間、障子が開く音がした。ゆっくりと目を開くと、真上から賢吾に顔を覗き込まれる。 不思議でもなんでもなく、和彦が布団を敷いて横になっているのは賢吾の部屋なのだ。 傍らに胡坐をかいて座り込んだ賢吾は、何も言わず和彦の顔を見つめてくる。「……別に、側にいてもらわなくても大丈夫だ」 向けられる視線の圧力に耐えかねて、和彦は口を開く。賢吾は口元を緩めながら、千尋をちらりと見た。「千尋は側に置いて、俺だけ追い払うのか?」「甘ったれの子犬は、側でおとなしくしてくれているからな。大蛇に側にいられると、気が休まらない」 和彦の邪険な物言いに対して、もちろん賢吾は機嫌を損ねたりしない。「大蛇を怖がるような可愛いタマじゃねーだろ、先生は」 そう言って和彦の頬を手荒く撫でてくる。「――体はつらくないか?」「熱も大したことはないし、つらくもない。本当は、こうして布団に寝ているのも大げさなぐらいなんだ」「本当に?」 さりげなく賢吾に念を押され
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